地域戦略部には戦略が無い(155)なぜ神山町に…。 | cb650r-eのブログ

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なぜ神山町に…。

「では、赤木さん──なぜ“神山町”に高等専門学校ができたんでしょうか?」

俺の問いに、赤木氏は少し姿勢を正し、言葉を選びながら答え始めた。

「はい。神山町は、これまで過疎化の進行を防ぐために、さまざまな施策を実施してきました。たとえば、アーティストを一定期間受け入れる“アート・イン・レジデンス”や、企業のサテライトオフィスの誘致などです」

「聞いたことがありますね。外から“人”を呼び込む取り組みですね」

「そうです。ただ、どれも基本的には“大人”を対象としたものでした。もちろん効果はありましたが、長期的な視点で見れば、それだけでは地域の未来を支えきれない。結局、子どもが育ち、定着する仕組みがなければ、持続可能な地域にはならないんです。だからこそ、“教育”が次の課題として浮かび上がったわけです」

なるほど──「過疎の本質は教育にある」と言っているようだった。

俺は続けて尋ねた。

「では、神山町における“新たな教育の理想”とは、何だったのでしょうか」

「そこが非常にユニークな点です。神山町の人口は、およそ5,000人。新しく小中一貫校をつくれば、既存の公立校とバッティングしてしまいます。高校やフリースクールも同様の理由で現実的ではありません。かといって、大学は規模も資金も重すぎて、とても無理だった」

赤木氏は、資料の一枚をめくりながら続けた。

 



「そこで注目されたのが“高専”です。本校の理事長でもある寺田親弘さん──Sansanの代表ですね──は、かねてから神山町と関わりがありました。彼が“高専”という存在に可能性を見出し、以前から連携のあった地元のNPO法人『グリーンバレー』の理事、大南信也さんと協議を重ねたのです」

「高専だったら、神山でも実現できると?」

「はい。既存の教育機関と競合せず、むしろ“地域にない価値”を提供できる。しかも、テクノロジーと起業家精神を育てるカリキュラムは、これからの社会にフィットする。神山の理想にぴったり合ったわけです」

「なるほど……」

俺は、妙に納得していた。

“教育”という言葉の奥に、これほどまでに戦略と覚悟が詰まっているとは。
これは単なる学校じゃない。町全体の未来を賭けた──再設計なのだ。

 

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