地域戦略部には戦略が無い(131) | cb650r-eのブログ

cb650r-eのブログ

ブログの説明を入力します。

どちらにしようかな…。

 

「さあ、どちらにしましょうか」
宮沢さんが笑顔で尋ねる。

 



「大杉さん、決めてよ」
天野次長がパスを出す。

「ネーミングだけで選ぶなら『魚市食堂』一択なんですけど……ここはあえて逆張りで、『大漁レストラン旬(とき)』にしましょう!どうです、宮沢さん!」

「大丈夫ですよ、どちらも間違いなくおいしいですから」

軽く肩をすくめた宮沢さんに、大杉主任がズコッとずっこける仕草をしてみせる。
そのまま4人は、「レストラン旬(とき)」へと入っていった。

席につくと、大杉さんがメニューもよく見ずに注文する。

「旬(とき)アジフライ定食、4つください!」

運ばれてきた定食には、ふわふわのアジフライが美しく盛られている。箸をつけた瞬間、伊達木社長が思わず声をあげた。

 



「おいしい……!」

舌の肥えた彼女の口から出たその一言は、まぎれもない本音だった。

「宮沢さん、“旬”の時期って、いつ頃なんですか?」

「『旬あじ』は4月から8月、『旬さば』は10月から2月ですね」

「なるほど。そりゃあ、うまいはずだわ……。このアジフライ、絶品。ふわふわでサクサク、ほんの少しだけレア感を残した感じが絶妙だわ」

伊達木社長の言葉に、他のメンバーもうなずいている。

「ネットか何かで、松浦市が“アジフライの聖地”って呼ばれてるって記事を見たことがありますよ」
と、大杉主任がふと思い出したように言う。

「そうなんですよ」
宮沢さんが嬉しそうに頷く。

「2019年に、松浦市が“アジフライの聖地”を公式に宣言したんです。それが話題になって、今では観光にも地域振興にも、しっかりとつながっています」

 



昼のひとときは、旨いものと、ちょっとした地元の誇りとともに、穏やかに流れていった。
 

このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。