ブランディング…。
レストラン「旬(とき)」のテーブルには、食べ終えたばかりの旬あじ定食の器が並んでいた。
どの皿もほとんど空っぽになっていて、満足感とともに少しの名残惜しさが漂っている。
そんな中、話題は自然と“アジ”そのものへと移っていった。
「実は、大分県では『関さば』『関あじ』という名称で、2006年に商標登録してるんですよ」
と、宮沢さんが言う。
「知ってます。大阪でもその名前は有名ですよ」
天野次長がうなずく。
「現在の卸売市場では、東京が全体の約5割。次いで福岡が2割、大分県内の消費も2割程度ですかね」
と、宮沢さんがさらりと続けた。
「ただ、『関さば』や『関あじ』にも課題はあります。まずは、魚の絶対数の減少。これはもう、業界全体の大きな問題です。地球温暖化の影響で海水温が変化し、魚の動きや“旬”の時期までもがズレてきているんですよ」
大杉主任が、なるほどと頷きながら、スマホで検索した日本各地のおいしい“アジ”について口を開いた。
「アジって、競合も多いですよね。ノーブランドを含めれば、愛媛の宇和島の大アジ、島根の『どんちっちアジ』、佐伯のアジに、淡路島のアジ……。どれもそれぞれ特徴がありますし」
「その通りです」
と宮沢さんが頷く。
「正直なところ、大阪では『関あじ』『関さば』の知名度はあっても、『旬(とき)アジ』『旬(とき)サバ』を知っている方は、あまりいらっしゃらないかもしれませんね」
天野次長がそう言うと、宮沢さんは軽く笑った。
このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。
