千﨑部長のお仕事は…。
「じゃあ、千﨑部長は何してんの?」
突然の問いに、大杉さんがニヤリと笑う。
「うーん。我々が出張のたびに、全国各地の“飲み友達”へ連絡と調整をしてくれてますね」
それが本気なのか冗談なのか、聞いているこちらにはわからない。けれど、言った本人はいたって真顔だ。
「まあ、千﨑さんらしいわね。今回も彼のおかげで、あなたたちと会えたわけですし」
「そうそう、あの人、こういうときはホントに役に立つんです」
大杉さんがふざけた口調でそう言うと、車内に笑いが広がった。伊達木社長も、天野次長も、自然と笑みをこぼしていた。
そんな和やかな時間の中、アルファードは松浦市へと入っていく。
佐世保から西九州自動車道に乗り、佐々インターで下りたあと、福井洞窟――旧石器時代から縄文時代の遺跡として知られる場所――を横目に、山道を抜けるルートを選んだ。時間をぐっと短縮できる、ちょっとした裏道だ。
「ここ、『調川(しらべがわ)』って読むの?」と伊達木社長。
「いえ、『つきのかわ』と読みます」
運転手がすかさず答える。
大杉主任がスマホを片手に、後部座席から指示を出した。
「運転手さん、調川の西日本魚市の敷地内に入ってください。『エンヨウ』という会社の建物の近くに車を停めていただけますか」
そう言いながら、すでに電話をかけていた。
「お世話になります。大阪ビジネスコンサルタンツの大杉です。……あ、宮沢さんですか。ちょっと早めなんですが、御社の前に到着しました」

電話の向こうから、明るい声が返ってくる。
「そうですか。私が玄関まで降りてきますね。そのまま、昼食に行きましょう」
このブログの内容はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。