理事長登場
その理事長――永富氏が、名刺を差し出しながら口を開いた。

「今朝、福岡の本部から連絡がありまして。伊達木社長がオブザーバー参加されるとお聞きしましたので、急きょ、副理事長や福祉部門の経営戦略室長らと共に、本会に参加させていただきました。初めまして、理事長の永富と申します」
「伊達木です。突然お邪魔してごめんなさい。ちょっと、ビジネスとして興味がありまして」
伊達木社長は、やわらかく、けれど芯のある声で応じた。
その一言に、会議室の空気が少しだけ引き締まったように感じられた。
定刻の10時になると、会議室の照明が少し落とされ、プロジェクターに最初のスライドが映し出された。プレゼンテーションが静かに始まる。
第一部の担当は天野次長。テーマは「CCRCの成功事例」。その中でも、特に注目されたのが石川県の「share金沢」視察の報告だった。
写真とともに紹介される現地の様子に、会場の誰もが引き込まれていく。参加者の表情は真剣そのもので、うなずきながらメモを取る姿もちらほら見られた。

だが、本当の見せ場はここからだった。
続く第二部では、天野と大杉のコンビが、今後の佐世保におけるCCRCの可能性について、ぐっと踏み込んだ提案を行った。
これは、日本版CCRCの第一人者、四菱総合研究所の主任調査役・松川智氏のレクチャーをもとに、二人が独自に構築したプランである。
「これからのCCRCは、より健康な時期から入居していただき、可能であれば“介護される側”ではなく、“支える側”として地域に関わってもらうべきです」
天野次長の言葉に、会場が静まり返る。
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