間に合う世界線と間に合わない世界線、どちらでもOK
文化の日、世界最高峰の弦楽四重奏団の一つ、「ターリヒ弦楽四重奏団」の演奏会を鑑賞して来ました。3ヶ月近く前からチケットを購入し、弦楽四重奏含めヴァイオリン演奏を仕事にしている長女と共に楽しみにしていました。当日は演奏会前にちょっと寄らないといけない場所があったのですが、そこで思いの外時間を取ってしまい、あまり余裕がなくなってしまいました。すぐに長女が最短最速の行き方を検索してくれました。コンサートホール前までバス1本で行く行き方でした。電車という選択もある中、バス🚌いつもの私なら電車を選択すると思うのに、その日はなぜかそれで行こう!と賛成。利用したことがないバス経路、しかも祝日にもかかわらず…乗って5分程で渋滞にはまりました。こんなに幹線道路を行くバスだったとは。長女は焦り始めました。なんでバスを選んじゃったんだろう間に合わなかったらどうしよう楽しみにしていたのになんでこんなに渋滞してるんだろうもうとっくに着いてるはずだったのにあと○分で着かないと無理だ落ち着いていられなくて、喋り続ける。もちろん気持ちはよくわかる。私以上に楽しみにしていただろうし。逆に不思議なのは私の感覚。この状況であれば、長女ほどではないにしても、私もバスを選択したことを後悔し、気が急いていたはず。それが不思議なことに、心が波立つことなく、ずーっと穏やか。1曲目に間に合うのであれば、もちろん嬉しいし、間に合わなかったとしても、それはそれできっと何か意味があってのこと。どちらであっても受け入れようという心持ちでした。無理に落ち着こうとか、納得させようとかいうのではなく、とても自然体だったことに自分でも驚きました。25分遅れでようやくバス停に着いた時には、すでに開演時間を5分過ぎていました。長女が望みを捨てずに、走る!と言うので私も走りました。ドア付近で、お急ぎ下さーい!と呼ぶスタッフさんの声。え?!間に合う?!手に持っていたチケットを差し出し、通り抜けると、その先でも、お急ぎくださーい!の声。ドアが開かれ、会場の中へ。なんと間に合った!いや本当は間に合っていなかったんだけど、開演が10分近く遅れていたようで、結果的に私たちは間に合った。席に座って息が整ってきた頃合いで、弦楽四重奏団が大きな拍手と共に舞台に現れた。1stヴァイオリンの最初の一音を聴いた途端、そのあまりに美しく麗しい音色に感極まり、私はすーっと一筋涙を流していました。その後もしばらく涙が止まらなかった。世界最高峰の音とはこういう音。これまで何度も聴いて来たけれど、心震わす特有の音がある。隣の長女も泣いていました。超ギリギリに息を切らしてやって来て、のっけから涙している様子のおかしい母娘です。1曲目の一音目から、この類稀なる美音を聴くことができて本当に良かった間に合わなかった世界線でもたぶん私は静かに受け入れることができたと思う。でも、心のどこかで間に合うような気もしていたから、こちらの世界線に進めたことに感謝です。アンコールはまさかの2曲。サイン会にも参加。海外のユースオーケストラ参加などで外国人との交流が多い長女は度胸が座っていて、ぐいぐいお喋りしていました。ホールを出たら、そろそろ季節外れのクロアゲハ蝶が私のすぐ近くに舞って来てくれました。蝶々は私にとって、確信をもたらす存在の一つです。