作詞家の三浦徳子(よしこ)さんが亡くなった。謹んでご冥福をお祈りしたい。80年代に最も売れた女性作詞家だという三浦さん、代表作を挙げればキリがない。特に私の印象に残っている作品だけでも「CAT’S EYE」(杏里)、「お嫁サンバ」(郷ひろみ)、「おまえがパラダイス」(沢田研二)、「君に薔薇薔薇…という感じ」(田原俊彦)、「夏色のナンシー」(早見優)、「裸足の季節」(松田聖子)、「みずいろの雨」(八神純子)等々、すごいラインナップだ。

 

 

 私が三浦さんのお名前を認識したのは、私が初めて買った宏美さんのシングル「万華鏡」(1979)によってであった。この曲は三浦作品のシングル売り上げでも14位にランクインしている(オリコン調べ)。そして続くシングル「スローな愛がいいわ」(1980)の時、私は熱烈な宏美ファンになった。この2枚のシングル両面の4曲とも三浦さんの作品であったのであるから、忘れようもない。

 

 宏美さんのアルバムを集めるようになると、再び三浦さんのお名前を目にすることになった。『10カラット・ダイヤモンド』(1979)では、「水曜の朝、海辺で…」など収録曲半数の5曲を提供しているのだ。また、『EXCEL ONE 岩崎宏美のすべて』(1981)に収められた「ブルー・エンジェル」も三浦さんの手になる。

 

 ずっと時代は下って、「始まりの詩、あなたへ」(2008)のカップリング曲「桜色 -桜咲く日々に-」では、四半世紀以上ぶりに宏美さんに詩を書いているのも注目に値する。そしてこの曲が、宏美さんへの最後の提供楽曲になってしまった。また宏美さんは『Dear Friends Ⅴ』(2010)で、三浦さんの作詞である「真夜中のドア〜Stay With Me〜」を八神純子さん、花田千草さんとのコラボでカバーしている。

 

 Wikipediaによると、三浦さんは「メロディーが望む言葉をそのとき思いつくかどうかを重視し」たと語っている。だが、宏美さんに提供した11曲だけでも、とても幅広い世界観を提示していると思うのだ。「万華鏡」で恋人の不実を歌ったかと思えば、次の「スローな愛がいいわ」では現在の「多様性の時代」の意識の萌芽とも取れる、ありのままに生きようとする男女の姿にフォーカスした。アルバム『10カラット・ダイヤモンド』では、一貫したヨーロピアンなムードの上に、宏美さんの実年齢より上に感じられる女性たちの哀しみをドラマティックに描き切った。また、娘を嫁がせる母親の心情を歌った後年の「桜色」では、「あの三浦さんが宏美さんにこのような詩を書くようになった」と、私は時の流れを感じたり、人の親としての三浦さんや宏美さんの心中に思いを馳せたり、と感慨深かったものである。

 

 最後に、宏美さんが吹き込んだ三浦徳子さんの全作品12曲(発表順)をご紹介しておこう。

 

●万華鏡 作・編曲:馬飼野康二

泣きながら目覚めて 作・編曲:馬飼野康二

東京ーパリ 作・編曲:穂口雄右

麗しのカトリーヌ 作・編曲:佐藤 準

●水曜の朝、海辺で…   作・編曲:船山基紀

哀しみは火のように 作・編曲:佐藤 準

テーブルの下 作・編曲:船山基紀

●スローな愛がいいわ 作曲:筒美京平、編曲:萩田光雄

白夜 作曲:筒美京平、編曲:林 哲司

●ブルー・エンジェル 作・編曲:筒美京平

●桜色 -桜咲く日々に-  作曲:塩見卓史、編曲:野見祐二

● 真夜中のドア〜Stay With Me〜 作曲:林 哲司、編曲:Bro.KONE

 

 三浦徳子さん、今まで素晴らしい詞をわれわれに、そして宏美さんに残してくださり、ありがとうございました。どうぞゆっくりお休みください。🥰