「スローな愛がいいわ」のB面曲であり、スバルレオーネのCFソングともなった曲である。沈まない太陽、神話、フィヨルドとくれば北欧はノルウェーのイメージであろう。「♪ ハイウェイ 飛ばす影」と歌詞に出てくるので、当初からスバルレオーネとのタイアップが考えられていたのだろうか。(「スローな愛がいいわ」では、車もスローになりそうだし🤣💦)

 

フィヨルド

 

 CMで使用されたのは、サビ前の「♪ あなたがいる/私がいる/この地球のすべてを〜」の部分からである。ちょうど「あなた」で高音に跳ね上がり、宏美さんの声の美味しい部分がブラウン管から流れていたのである。

 

 作詞・作曲はA面と同じ三浦徳子・筒美京平コンビだが、編曲は林哲司さん。萩田光雄先生、船山基紀さんと同じくヤマハ系の方である。変化・起伏の激しい「スローな愛がいいわ」と対照的に、一定のリズムの上にあくまでも落ち着いたお洒落なボーカルが展開される。2コーラス終わった後に、新しいメロディーが出てくるコーダのリフレイン(♪ 束の間の冒険/あなたの腕まくら つつまれて居眠り…)のフェイドアウトで曲を閉じるが、ここでもリズムセクションは変わらぬリズムを淡々と刻み続けている。

 

 内容も、心地よいサウンドに乗って、歌詞の通り居眠りを誘うような幸福感に包まれたムードである。だがよく聴くと、「♪ 体中を愛がめぐるような 恋がしたいの」「♪ 終わりのない愛よ 現われてね 目の前に」「♪ 束の間の冒険」と出てくるので、恋の始まり、永遠の愛の予感、といったところだろうか。

 

 

 「砂の慕情」について書いた際、ベースを演奏されている方の動画をご紹介した。その方のYouTubeのコメントを追っていたら、宏美さんの曲で「是非ベースで演奏して欲しい」と、リクエストしている書き込みが目に入った。リクエストされたのは、「キャンパス・ガール」「夏からのメッセージ」そしてこの「白夜」の3曲だった。なので今回、ベースだけに耳を傾けて聴き直してみた。なるほど粋な感じだが、「砂の慕情」のようなテクニカルで目立つ感じのベースではない。

 

 宏美さんのバックを長らく務められた渡辺茂さん(故人。もんた&ブラザーズのベーシスト)と、SNSで少しやりとりさせていただいたことがある。茂さんは、「目立つベースは良いベースではない。良いベースは目立たないものだ」という確固たる持論をお持ちだった。この「白夜」のベースも、決して目立つわけではなく、注意して聴くと玄人ウケするベースを奏でている、ということだろうか。当時のシングルは残念ながらプレイヤーがクレジットされていないが、きっと名のあるミュージシャンの演奏なのだろう。

 

 ところで、この「白夜」のCFを録画したDVDが、奇跡的にまだ見ることができた。当時ビデオテープはまだ高価だったので、私が大ファンだった横綱輪島の相撲のビデオの余りに録画されたものをDVDに焼いてあったのだ。その頃のビデオ(β)はもうとうにデッキがなく見られないし、出始めの頃のDVD-Rに焼いたものは、多くが読み込めなくなってしまっている(泣)。

 

 しかし、この「白夜」のCFを録画したテープは、焼いた時にすでにテープが劣化していて、トラッキングが合っていないものの、レオーネ特別仕様車、宏美さんの笑顔、「あなたのためにドレスアップ!」というセリフ、そしてもちろん「白夜」の楽曲が確認できる。貴重なこのコマーシャルフィルムに見入ると同時に、受験生でありながら輪島の相撲や宏美さんの映像をチマチマと録画していた当時の自分も、懐かしく愛おしい。

 

件のCFは33秒あたりから

 

(1980.1.21 シングル「スローな愛がいいわ」B面)