一昨日、東京で昨年と並んで史上最も早いソメイヨシノの開花宣言がなされた。という訳で、桜の季節にピッタリのこの歌を取り上げたい。

 

 「桜色 -桜咲く日々に-」は、62ndシングル「始まりの詩、あなたへ」のカップリング曲(その後アルバム『Thanks』に、アルバムバージョンが収録されている)である。作詞は、「スローな愛がいいわ白夜」以来実に約30年ぶりの三浦徳子さん。娘さんが結婚される折りの心境をこの詞に込めたそうだ。

 

 嫁ぐ娘に寄せる母の想い、というこの歌は、その逆の「秋桜」(山口百恵、1977)を思い起こさせる。この「桜色」がリリースされた時のプロモーションの言葉に、確か「秋桜」を引き合いに出していたのを見た記憶があるのだが、それが何に書いてあったのか残念ながら思い出せない。

 

 20歳の宏美さんに不実な男に思い乱れる女性の詞(万華鏡)を書き与え、21歳になったら時代を先取りするような男女のあり方を歌わせた(スローな愛がいいわ)三浦さん。娘を嫁に出す母親なら誰しも経験するような、ある意味ごく普通の感情を素敵な作品にし、50歳を目前に控えた宏美さんに提供されたことは、とても感慨深いものがある。

 

 作曲の塩見卓史さんは、「想い出の扉」の時にご紹介した通り、富士楽器の社長さんである。以前は富士楽器のホームページから、宏美さんの歌の流れるCMが見られたのだが、Adobe が Flash Player のサポートを終了したためか、残念ながら見られなくなってしまった。

 

 

 編曲は、メイン曲の方の「始まりの詩、あなたへ」のアレンジも手がけた野見祐二さん。『PRAHA』全曲も彼の担当であり、オーケストレーションはお手のものだ。この曲は、ストリングスをバックに、舞い散る桜吹雪を思わせるような、激しいピアノの16分音符のイントロから始まる、ドラマティックなサウンドである。

 

 ドラムスは、テイチク移籍後の宏美さんのサウンドを支える一人、西脇辰弥さん。編曲家、ハーモニカ奏者の印象が強いが、ドラムスも叩くというオールマイティーな方だ。

 

 キーはAマイナー、構成はAA’BCA’’+A’BCA’’DA’’’。Aパートはピアノの印象が強く、16ビートフィールに聞こえる。ブリッジのBパート(♪ そよぐ風 すばやく 私の〜)では、ピアノが和音弾きの4つ打ちになってやや落ち着き、Cパートに入るのだ。

 

 2コーラス終わると現れる、大サビのDパート(♪ どうぞ 神様 守って下さい〜)は、ティンパニを模したような音が入ったり、「♪ 今日、この日の 誓いの」でバックが止まって「くちづけ…」の言葉を際立たせたりと、特に劇的である。

 

 最後にテーマが回帰するA’’’の部分では、「♪ 嫁ぐ日をむかえた あなたを見てた〜」の「見てた」の節回しが高い音に変わり、聴く者に曲の終わりを印象付ける。

 

 と、持ち上げておいて落とすわけではないが、私はこの曲はもう少しシンプルなアレンジでも良かったのではないかという気がしている。音数を減らして宏美さんも歌い上げずに語りかけるような編曲(例えばSALTのピアノ一本の「秋桜」のような)にした方が、三浦さんが詞に託した嫁ぐ娘さんへの想いが、さらによく伝わる歌になったのではないか。あくまで私個人の感想ではあるが。

 

 

 私にも、今年もう24歳になる娘がある。もしかしたら遠からず嫁いで行くのかも知れない。私は父親だが、その時を迎えたらどのような気持ちになるのだろうか。想像もつかない。

 

(2008.4.14 シングル「始まりの詩、あなたへ」カップリング曲)