昨日、野口五郎さんと宏美さんのニュー・アルバム『Eternal Voices』のジャケットが公開された。なかなかシャレオツである。5月13日の発売が待ち遠しい。😍
だが、オジサンには不安(と不満)もある。というのもこのアルバム、発売時にはCDに2曲収録され、テイクアウトライブとして2曲が聴けるらしい。その後随時配信され、最終的には10曲+MV1曲という仕様のようだ。昭和の人間としては、やはりカタチで欲しいのだ。最終的に、10曲全て収録されたCDが欲しいと思うオジサンは、私だけではあるまい。😜💦
さて、今からちょうど14年前の4月14日、この「始まりの詩、あなたへ」がリリースされた。宏美さんの62ndシングルにして、映画『能登の花ヨメ』(2008)の主題歌である。作詞作曲:大江千里、編曲:野見祐二。
映画『能登の花ヨメ』は、監督: 白羽弥仁、主演:田中美里。映画の企画がスタートした後に能登半島地震(2007年3月25日)が起き、脚本を全面的に書き直して震災からの復興映画の色合いを濃くしている。以降若干のネタバレあり、注意!
都会で育ったみゆき(田中美里)の婚約者・紘一(池内万作)には、能登で一人暮らしをする母・松子(泉ピン子)がいる。松子が骨折したという報を受け、みゆきは世話をするため一人能登に向かう。みゆきは慣れぬ土地で懸命に家事や農作業に努めるが、松子や周囲との確執に苦しむ。だが、徐々に土地に馴染み始めたみゆきは、震災以降中断したままになっているキリコ祭りの復活を訴える。はじめ冷ややかだった土地の者も、やがてみゆきの熱意にほだされて…。
祭りが盛大に行われた夜、松子は自分が嫁入りの際に着た白無垢をみゆきの肩にかける。ラストは紘一とみゆきが婚礼で能登の町を練り歩くシーンで終わる。この最高の場面で、宏美さんの歌う「始まりの詩、あなたへ」が流れるのである。
この曲の作者である大江千里さんと宏美さんとのコラボレーションは、千里さんが司会をしていたTOKYO FM『大江千里のLive Depot』に宏美さんがゲスト出演したのがきっかけだったという。「始まりの詩、〜」以降も含めると、千里さんはオリジナル・アルバムに「哀しみの環状線」「ベリー」の楽曲を提供、『Dear Friends』シリーズでは4曲ほどピアノを弾いている。
そんな千里さんが宏美さんに書いた渾身のバラードがこのシングル、「始まりの詩、あなたへ」である。 千里さんがニューヨークへピアノの勉強をやり直すために留学を決意し、出発前に書いた曲で、今まで応援してくれたファンや親、すべての方への感謝を込めて書いたという。それがこの曲のキャッチコピー、「この曲の向こうに、貴方は誰を想いますか?」に繋がるのだ。
その歌を宏美さんが歌うと、まさに多くの方のイメージ通りの、どこまでも大きな愛を謳い上げる、久々に「岩崎宏美」らしい大きなバラードになるのだ。宏美さんが沢田知可子さんのラジオ番組に出演した折りの話によると、この映画の主題歌を歌うアーティストを選考する時期に千里さんのデモテープを聴き、「もしも他の誰かに決まったとしても、自分のアルバムで歌わせてほしい」と伝えたら、その願いが叶ったのか宏美さんが歌われることになったそうだ。だがまるでこの歌は「岩崎宏美」のために書き下ろされたかの如き曲であることに、皆さん異論はあるまい。
この曲は『PRAHA』のオーケストラアレンジを全曲手がけた野見さんの編曲だ。そのため、よりクラシカルでスケールの大きい楽曲になっているが、細かい部分でも拘りが見え、興味深い。1番に2度出てくる歌詞の「♪ ぜんぶぜんぶ」の後の長い休符が、2番ではオミットされスピード感が増すあたり、さすがである(画像参照)。
この曲のサビの「♪ あたたかさは人に生まれて いちばんの宝物だから〜」からは、16分音符の畳みかけるようなフレーズが何度も繰り返される。そしてベースは下降順次進行でカノンコードに近い進行であり、お約束だが快感である。宏美さんの日本語の美しさ、歯切れの良さがひときわ目立つ箇所でもある。
また、この曲は全部でツーハーフであり、最後のハーフは1番と全く同じ歌詞である。だが、「♪ 交し合ったこのぬくもり〜」の符割が異なるのである。これもアルバム『Thanks』に封入された楽譜でハッキリ別の符割で書かれているし、宏美さんも毎回のライブでもここは律儀に歌い分けていた。この辺りの千里さん、もしくは野見さんの真意を確かめてみたい気もする(こちらも楽譜画像をご覧ください)。
この曲のリリースから7年後の2015年8月6日。宏美さんのデビュー40周年を記念して、ニューヨークのマーキン・コンサートホールで、宏美さんは千里さんのピアノ一本でコンサートを催した。ニューヨーク在住の千里さんに敬意を表してであろう。
残念ながら私は行かれなかったが、何人もの仲間がニューヨークツアーに参加し、このコンサートも楽しんで来た。このニューヨークコンサートを詳しくリポートされていらっしゃる方のブログを紹介しておこう。この方のブログでも「始まりの詩、あなたへ」でハプニングがあった、と書かれている。まるで宏美さんが歌い間違ったように書かれているが、複数の仲間からの報告によると、千里さんのピアノのキーが間違っていたとのこと。せっかくのニューヨーク公演、千里さんの素晴らしい作品でアンコールを飾るはずが、残念だ。😂
最後に、このニューヨーク公演のダイジェスト映像と、宏美さんのインタビューをご覧いただこう。
(2008.4.14 シングル)