私は毎晩、就寝する前に45周年記念のツアー・パンフレットを眺める。巻末のディスコグラフィーが、恐らく現時点で宏美さんの吹き込んだ曲名の一覧が一番充実しているからだ(「ぼくのベストフレンドへ」のシングルが抜けているし、細かい誤植は若干気になるが)。それを見ながら、翌日のブログの曲目を決めてから眠る、ということが多い。そうすると、寝つく前に何となく「ああ書こう、こう書こう」というイメージができ、通勤中の執筆(?)がスムーズに行くのだ。

 

 ところが昨夜は、疲れてそのルーティーンをせずに寝てしまった。朝も寝坊気味。だが目覚めたら、頭の中で宏美さんの曲が流れている。「ん、これ何の曲だっけ?」と脳内再生を続けてみたところ、それがこの「ブルー・エンジェル」だったのだ。なので、今日はこの曲について触れてみたい。

 

 『岩崎宏美のすべて』(1981)に収録された、いわゆる未発表オリジナルの「ブルー・エンジェル」は、作詞:三浦徳子、作編曲:筒美京平という布陣。シングル「スローな愛がいいわ白夜」(1980)のコンビである。お二人はその前年のアルバム『10カラット・ダイヤモンド』でも、コンビは組まなかったがそれぞれ作品を提供している。そう考えると、この曲は、1979〜80年頃の作品と推測される。

 

 詞の内容は、すでに眞峯隆義氏によって指摘されている通り、「相手に思慕の情を抱きながら、報われない小さな存在」を歌った「パピヨン」「花のことづけ」「れんげ草の恋」の系譜に位置づけることもできよう。この歌ではその「小さな存在」は「青い小鳥」という言葉で表現されている。だがこの曲は、少なくともこの2人がいっときは男女の関係にあった、と考えられる点では、前出の3曲とは一線を画しているようにも思う。

 

 さて、楽曲構成を見てみよう。ワンコーラスの構成は以下の通りである。

 

A:私は一人で夢を見ていたの〜

A’:青い小鳥は壁に向かっては〜

B:ある日誰かが このドアをたたいては〜

B’:ドアのすき間に こぼれた光〜

C:愛されたくて 愛されたくて〜

 

 少し考えてしまったのは、この曲はBパート、Cパートのどちらをサビと呼ぶべきか?ということである。と思って「サビ」を改めて調べたら、そもそも事典等によって表現も様々であることがわかった。その定義にもよるが、「曲中で最も盛り上がる、最も印象的な部分」だとすると、私はこの曲ではBパートかな、と。しかし、Cパートがサビだと捉えることもできる。皆さんはいずれとお感じだろうか。

 

 「青い小鳥」の悲しい鳴き声を思わせるストリングスの短いパッセージからイントロは始まる。曲調は軽快なバウンスである。宏美さんの歌唱は、80年代の初頭らしく声も良く伸びている。上のCの音も何度か出てくるが、余裕のある発声で地声で通している。2度現れる、コーラス最後の(2コーラス目では割愛されている)「♪ Ah... Blue Angel」の部分だけは、高音にファルセットを用いて、美しい余韻を残している。

 

 

 『岩崎宏美のすべて』のリリースは、1981年の12月5日である。その数日前の12月1日から、私はファミレスでアルバイトを始めた。住んでいたアパートからバイト先のファミレスまで、13㎞も離れていた。だが、そこは田舎だったし、深夜のバイトだったので遠いと思ったことは一度もなかった。その夏のプールの監視員で稼いだお金で買ったカーステで、この『岩崎宏美のすべて』を大音量でかけながら、週4回、深夜のバイトに通っていたのだ。思い出すだに懐かしい。

 

(1981.12.5 アルバム『EXCEL ONE 岩崎宏美のすべて』収録)