8枚目のオリジナルアルバム『10カラット・ダイヤモンド』より。「万華鏡」「スローな愛がいいわ」の三浦徳子さんが作詞を、編曲家のイメージが強い船山基紀さんが作編曲を担当している楽曲である。

 

 私の妻がこの曲を初めて聴いた時、「聖子ちゃんが歌いそうな曲!」と言った。ムム、なるほど言われてみればその通り、聖子ちゃんが歌っている声が容易に思い浮かべられる。調べてみたら、船山さんが聖子ちゃんに提供したアレンジは15曲で、作曲はないようだ(松田聖子.net による)。その15曲も、私や妻が知っているような超メジャーな曲は見当たらない。

 

 しかし、イントロのピアノのリズムやメロは「白いパラソル」に似ているし、「♪ 初恋から飛び立てるのよ〜」からの♭の多いメロディーラインは、どことなく「Rock'n Rouge」を想起させる(「Rock'n Rouge」との類似は、モーダルインターチェンジによると考えられる。「ニッカ・ボッカ」のブログ参照)。

 

 もちろん、宏美さんのこの「水曜の朝、海辺で…」は聖子ちゃんのデビュー前の曲であって、似た部分があるとしても偶然の類似であり、どちらにしても元祖は宏美さんである!閑話休題。

 

 三浦さんの歌詞に目を向けてみよう。少女から大人へ、初恋から愛まで飛び立とうという明るいラブソングである。どちらかと言うと「濃い」曲が多いこのアルバムにあって、この曲は詞・曲共にライトな印象であり、一服の清涼剤のように爽やかである。

 

 アレンジでは、ピアノとギターの音が耳に残る。ピアノはメロディアスではなく一貫してリズムを刻む。ギターはイントロとアウトロのソロはもちろん、間奏のベースとのユニゾンも印象的である。ボーカルとコーラスも、上のE♭まで高音域のファルセットを使ったり、かけ合いやハモリも宏美さんの声を重ねたりと工夫が見られる。宏美さんも、全体に軽快にサラッと歌っている感じだ。

 

 

 

 このアルバムがリリースされた時、まだ私は宏美ファンになっていないので、リアルタイムでは聴いていない。しかし、発売日の日付けを見ると、まさに私が「邂逅」とも言うべき宏美さんの「万華鏡」を初めて聴いた日付けに近い。まだ岩崎宏美という稀代のシンガーの存在に気づかず、『10カラット・ダイヤモンド』の発売も知らず、受験勉強と、大相撲(輪島贔屓)と、ウルトラマン(初代!)な日々を送っていた私。そう思うと、不思議な感慨に包まれる。

 

(1979.10.5 アルバム『10カラット・ダイヤモンド』収録)