今日は久しぶりに、楽典・ウンチクシリーズを語ってみたいと思う。「女優」「スローな愛がいいわ」徹底比較〈後篇〉のブログで、「女優」が4度進行を使用している云々に加えていろいろ音楽的な話を文字にする努力をしてみた。
そうしたら、ブログの一読者でもある私の弟から、「音楽的なことは詳しくないので、文字だとよく解らない。時間がある時にピアノを弾きながら解説して欲しい」と言われたのだ。なかなか2人の予定を合わせるのは難しいので、ブログの内容をピアノを使って解説する動画を撮って弟に送ったところ、なかなか解り易いと好評だった。
なるほどと思い、リアイアしたら「岩崎宏美作品解説限定・シニアYouTuber」を目指そうか、などと冗談半分、半ば本気で話していた(笑)。
さて、このところブログに、「4度進行」が用いられている曲が頻回に登場した。なので、懲りずにこの「4度進行」を文字と楽譜とで解説することを試みたい。だが、それぞれの曲でキーは違うし、デグリー(度数)で示すのも解り難い。そこで、少々乱暴ではあるが、全ての曲をAマイナー(イ短調)に移調して説明することにした。参考までに、原調も明示した。
まず、「4度進行」の4度、という音程についてである。音程を数える時は、その音自身を“1”と数えるので、【譜例1】のように、ラシドレ、レミファソ、ソラシド、ドレミファ、と上がっていくこの音程(音の距離)を「4度」と呼んでいる。ルート(根音。コード=和音の1番下の音)が4つずつ上がっていくので「4度進行」と呼ぶのだが、ずっと上がっていくと、どんどん音が高くなってしまう。従って、実際には【譜例2】のように、上がったり下がったりしているのが普通である。それでも音は変わらないのだ。
そして、そのルートの上に3度ずつお団子のように音を重ねたものがコード【譜例3】である。詳しい説明は省くが、トニック(この場合Am)には7度の“ソ”は加えないことが多い。また、ドミナント(この場合E7)の場合、”ソ”に♯がついているが、その方がトニックへの進行がスムーズになるのだ。そのことにも深入りしない。(トニック、ドミナント等をもう少し詳しく知りたい方はこちら➡️「宏美さんの歌でわかるスリーコードの役割❣️」)
ではいよいよ、実際の宏美さんのオリジナル曲で、この「4度進行」がどこでどのように用いられているか見ていこう。ピアノやギターが弾ける方は、是非音を出してみて、どの曲も同じ、心地よいコード進行になっていることを体感していただきたい。初めての動画解説にチャレンジ❗️
「愛よ、おやすみ」(original key=A minor)
「さよならの挽歌」(original key=F♯ minor)
「女優」(original key=G minor)
こうして挙げてみて気づいたが、3作品とも筒美先生の曲であった。
以下の3曲は、カバー曲であるが*、これらも見事(一部ベース音が違うところもあるが)に「4度進行」で一周している。
「黒いオルフェ」(恋人たち)➡️1ヶ所ベース音違う
「駅」(Dear Friends Ⅴ)➡️完全なる4度進行
「黒のクレール」(Dear Friends Ⅴ)➡️1ヶ所ベース音違う
もう「4度進行」の雰囲気が掴めたのではないかと思うので、是非ご自分でどこの部分が「4度進行」なのか、当ててみてくださいね❣️😊
あと、完全に一周はしないが前半の4つだけ、4度進行が使われているという例(6251進行、1473進行など)はいくらでもある。
思秋期、恋人たち、シェルブールの雨傘、銀河伝説、Rose、聖母たちのララバイ、エトランゼ、家路、etc...
是非、こんな側面からも宏美さんの歌を楽しむキッカケにしていただければ、こんな嬉しいことはない。
【追記 2022.8.18】*今日ふと気づいたのだが、オリジナルでしかもシングル曲である「恋待草」も4度進行で一周している。1箇所ベース音が違うのみである。(♪ あふれるほどの恋しさで/逢えますか 逢えますか、の部分)