今朝起きると、インスタやFBで世界的に障害が起きているというニュースがやっていた。へー、と思っていると弟からLINEが来ていた。宏美さんの自宅写真紹介をインスタに上げている、という記事を私に教えてくれたのだ。朝から良いことがあったので、皆様にもお裾分け。もうインスタも復旧していることだろう。未見の方は是非どうぞ。

 

 

 さて、今日取り上げる楽曲は、竹内まりやさんが中森明菜さんに提供した楽曲「駅」(1986)。明菜さんのアルバム『CRIMSON』に収録されたが、翌年まりやさんがセルフカバーし、広く知られるようになった。2008年に行われた公式HPのファン投票では、他の楽曲を抑えてこの「駅」が第1位に輝いたという。押しも押されもせぬまりやさんの代表曲で、その後も多くのアーティストによってカバーされている。

 

 中森盤と竹内盤をめぐっては、まりやさんの夫の山下達郎さんも含めて論争があったようだ。ここではそれには触れず、オリジナル盤に敬意を評して明菜さんの歌唱を紹介しておこう。

 

 

 歌の内容については、改めてここで述べるまでもないであろう。「昔の恋人と偶然出会う」というシチュエーションの名曲としては、ユーミンの「卒業写真」と双璧であろう。だが、2曲の纏う色彩がだいぶ異なっている。

 

 「卒業写真」の方は、タイトルから判るとおり学生時代の関係である。ニュアンスも別れた恋人への追憶と言うより、過ぎ去ってしまった青春時代への郷愁、抗うことのできない時の流れ、と言ったものが主題か。

 

 こちら「駅」の方は、もう少し生々しい。2年前には共に暮らしたこともある男女だろうか。その頃はうまく行かなかったが、今になるとお互い愛していたことが解る、という悔恨の情が滲み出ている。

 

 

 宏美さんはこの名曲を、80年代から何度かテレビ番組で歌っている。88年、90年代半ば(この動画だけDマイナー)、2002年とYouTubeに上がっていた。一番新しい動画だけ参考に貼っておこう。明菜さん、まりやさんと同じキーのC♯マイナーで歌われている。

 

 

 YouTubeのコメント欄で、明菜さん・まりやさん・宏美さんの三者の歌を比較した思わず唸ってしまうようなコメントを見かけたので引用しよう。

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中森明菜の歌だと「私は未だに貴方を想っています」と聞こえる。

竹内まりやの場合「もう私は前を向いているのです」の決意表明のよう。

そして、岩崎宏美の場合「昔、そんなことがあった」という回顧録のよう。

 

全く同じ歌詞、同じメロディでも表現者によって、伝わり方が違うのだなあと…

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 そして2010年、「満を持して」という感じで『Dear Friends Ⅴ』でレコーディングされた。しかも大江千里さんのピアノトリオ+ジャズギターというこの上もなくお洒落な編成で。キーは半音下げてCマイナーである。

 

 この曲は音楽的な面では比較的シンプルである。Aメロとサビの2つのパートしかないし、コード使いもオーソドックス。しかもサビは、「宏美さんの歌でわかる4度進行❣️」で取り上げた通り、お約束の4度進行で気持ちよーく流れていくのだ。

 

 本場アメリカでジャズを学んでいるという千里さんを中心とした4人のジャズメン。一応編曲に千里さんの名がクレジットされているが、恐らく簡単な打ち合わせだけで「せーの」で録ったのではないか。イントロは千里さんのピアノ一本で始まる。井上さとし(智)さんのギターは、ロックギターとまるで違うまさにジャズ!な音色やソロを聴かせてくれる。ウッドベースが河上修さん、ドラムスが久米雅之さん。宏美さんも「ちょっぴり私の気分も JAZZ SINGER…ゆったりとしてアンニュイな気分は、このサウンドのお陰です。心地良い時間に酔いしれていました」と振り返っている。

 

 では最後に、“JAZZ SINGER”岩崎宏美のボーカルで「駅」をお聴きください。

 

 

(2010.10.20 アルバム『Dear Friends Ⅴ』収録)