かもめのジョナサン
- リチャード・バック, 五木 寛之, Richard Bach
- かもめのジョナサン
「人は空を飛べないけれど、飛びたいと願う心はある」
青春という一時代を熱くする本は数多くありますが、この作品もその一つかと思います。
速く美しく飛ぶ事をひたすら追い求めるジョナサンが、仲間のかもめ達にうとまれながらも最後は孤独の内に自らの真理をつかむという、この短い寓話が示唆するものは数多くあります。
人は分かり合えないかも知れないし、空を飛ぶことも出来ない。それでも危ういながらも自らの信ずる所へ滑空していきたいと願う感情。自分の在り方に葛藤する若い心にはきっと響く物が多くあると思います。
その情熱が間違った方向に言ってしまう事もあるかもしれませし、人に迷惑をかけているかもしれません。ですが多少間違ったとしても、こうした挑みかかるような感情を持つ事が許される時期というものがあるのも事実です。
年を重ねて、しがらんでくる物が多くなるにつれて、それを「若い」と横によける様になってきた気がします。ですがそうする事で、舞い上がるカモメの姿が心から霞んでいくような気もして、それは少し寂しい事だな、と思わずにはいられませんでした。
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| インパクト | ★★★☆☆ |
| 泣ける度 | ★★★☆☆ |
| 笑える度 | ★☆☆☆☆ |
| 怖い度 | ★☆☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★★☆☆ |
| 推定読了時間 | 2時間 |
ヒレハレ草
- 太田 光
- ヒレハレ草
「何にせよ、笑っておけばとりあえず丸く収まる」
タレント本というと敬遠する人がたまにいますが(特に本読みには多い)、私は時々買う事があります。といっても基本的にお笑い芸人、特に漫才出身の人の本しか買わないのですが、その中で欠かさず新刊を買うのがこの爆笑問題太田さんです。
他にも多くのエッセイや評論を出している太田さんですが、今回はこのヒレハレ草を紹介する事にしました。理由は?というと難しいのですが、なんとなくタイトルと本人が一番マッチしているのがこの本だと思ったからです。
とにかく時事ネタを笑いを含ませながら切らせたら、今この人の右に出る人はいないのではないでしょか?落語の様なリズムをベースに縦横無尽に言葉をあやつり、どんな事件や出来事も盛り上げ、かく乱し、時に合い方をこき下ろしながら見事に(たまに意味不明に)しっかりと落としてくれます。
言葉を操る職業の人は数多くいますが、喋っても書いても職人の技を見せてくれる稀有な才能だと思います。眉をひそめたくなるような事件が多い昨今ですが、こうした絶妙なバランスの笑いのおかげで一息つけるものだと改めて感心してしまいました。
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| インパクト | ★★★☆☆ |
| 泣ける度 | ★☆☆☆☆ |
| 笑える度 | ★★★★☆ |
| 怖い度 | ★☆☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★☆☆☆ |
| 推定読了時間 | 3時間 |
ハードワーク~低賃金で働くということ
- ポリー・トインビー, 椋田 直子
- ハードワーク~低賃金で働くということ
「近未来の日本の姿か、今そこにある現実なのか」
先日仕事が大ドラブルを起こし(私のせいではありません。。)、40時間連続労働というルール無用の残虐ファイトになってしまいました。仕事があけて朦朧とする頭で「こんな仕事や生活もどんなもんだろう」 と少々悩んでしまったのですが、この本を読んで甘い考えを改める必要があるかな、と思わされました。
イギリス人の女性ジャーナリストが40日間最低賃金しかもらえない仕事に従事し、その生活内容をレポートするというのが本書の内容です。
イギリス人はつくづくこうした体験レポが好きだなぁと思いながら読んでみましたが、その内容は日本も他人事ではないな、と思わされる少なからずショックな物でした。
レポートの舞台はロンドンです。著者は必要最低限の生活保障と、劣悪な公営住宅に住み、日本で言うハローワーク に出向いて様々な職業に就きます。主な仕事はポーター(ビルの管理人のようなもの)、掃除夫、ベビーシッター、給食作りの サポートといった物で、時給は大体4ポンド強(850円位)。私もロンドンに住んでいた事があるので分かるのですが、仮に一日8時間働いたとして4×8=32ポンド、週5日で32×5=160ポンド(32000円位)、 月に直すと15万円弱でロンドンで生活するのは非常に困難です。ここから家賃や税金を引くと、贅沢をする事はほぼ 不可能ですし、家族を養うなどは夢物語です。
こうした職業についている人の多くは移民や黒人ですが、白人も少なからず含まれます。 社会を裏方から支えているにも関わらず、彼らの給与が上がる事は殆どなく、十分な職業訓練も受けさせてもらえません。著者はその理由として、 サッチャー時代の民営化を挙げています。病院や学校、郵便、あらゆるセクションの間接業務を民営化した結果、 そうした部門で働く人は、コストカットの名に全て派遣労働者に切り換えられました。
結果として十分な教育を受けていない者やリストラされた中高年がこうした仕事の従事者となり、また彼らが上の生活水準に上がる事は非常に狭き門となっています。そしてこうした人が数百万の単位でイギリスにはいる というのがこのレポートの結論です。
著者はガーディアン紙の記者ですので、労働党より(サッチャーは保守党)である事を差し引いてみる必要があるかもしれませんが、それにしてもこの格差社会には愕然とさせられるものがあります。
翻って日本ですが、勝ち組み負け組みといったのどかな光景がまだ繰り広げられているわけですから、状況が それほど切迫していないのでしょうか?それともその兆候が既に現れているのか。。 金融ビックバンにせよ、政府部門の改革にせよ、日本にはイギリスから10~20年遅れでやってくるように見えます。
もちろん改革は必要ですし、私も賛成です。ですがその結果起こる事、それを想像するために、 海の向こうの島国は格好のベンチマークなのでは、と思わされる一冊でした。
| 難易度 | ★★★☆☆ |
| インパクト | ★★★☆☆ |
| 泣ける度 | ★☆☆☆☆ |
| 笑える度 | ★★☆☆☆ |
| 怖い度 | ★☆☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★★☆☆ |
| 推定読了時間 | 5時間 |
陋巷に在り
- 酒見 賢一
- 陋巷に在り〈1〉儒の巻
「劇画調孔子伝。賢なるかな酒見賢一」
後宮小説の酒見賢一氏が書き上げた、全13巻に渡る傑作歴史大河です。
孔子とその最愛の弟子顔回というあまり(というか殆ど?)取り上げられることのない題材を選んだ斬新さもさることながら、この小説の最大の見所はその展開が「劇画調」という点にあります。
孔子は儒学の祖ですが、儒学と言うと礼節を重んじる非常に堅苦しいイメージを抱きがちです。ですがこの小説では儒学の元を礼とし、そして礼とは祈りによって地霊や神と交信し、その力を借りる事、つまりサイキックとして扱っている点にあります。
孔子は政治の中枢にいて儒の力で政治改革を行おうとしていますが、顔回は仕官もせず、陋巷(スラム)にいて普段はボーっとしています。ですが孔子の政的が彼を貶めようと悪鬼や手下の呪術使いを送り出すと顔回はそれを察知し、彼らとサイキックウォーを繰り広げ次々と打ち負かしていきます。その描写は火花や異様な煙が目に浮かぶほどのリアリティで、まさに胸躍る活劇といったところです。
特に3巻あたりから最終巻近くまで続く女呪術師との対決は目が離せません。私などはこの二人の対決が出てこない巻は読み飛ばしたいほど楽しみにしていました。(結末は少し哀しげでしたが)。
普段触れ合う機会は殆ど無いにも関わらず、心の深いところでつながっている師弟関係の強さと美しさ。いざというときに繰り出させる強烈なサイキック。古代中国の歴史の奥深さ。読み物としての見所に溢れた傑作というより他ありません。孔子と顔回が国を捨てるところで終わってしまいましたが、その後の続編も是非読んでみたいものです。
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| インパクト | ★★★☆☆ |
| 泣ける度 | ★★★☆☆ |
| 笑える度 | ★★☆☆☆ |
| 怖い度 | ★★☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★★☆☆ |
| 推定読了時間 | 5時間(一巻) |
墨東綺譚
- 永井 荷風
- 墨東綺譚
「変りゆく物への哀哭。荷風流の哀哭」
今までダラダラと節操無く惰読してきた私ですが、このブログを始めてから本に対して少し真剣に向き合うようになってきた気がします。
いろいろな作品に思いを巡らすうちに、ふと「美しい文章」とはどういものだろう、という事を思い立ちました。そこで今回は永井荷風の墨東綺譚です。日本文学の中で美しい文章と言えば私はまずこの人を思いつきます。
変り行く東京。情を通わせた娼婦。少しずつだが確実に変っていく町や人の心。自分の力では留める事も変えることもできないこうした物事の理を、淡々とした日常生活の中にひっそりと忍ばせながら作品は進んでいきます。
芸術家と言う者は常に新しい事にチャレンジしているようですが、その目的は決して変る事の無い何かを探しているかのようです。ですが結局それは見つからず哀しみが募っていく。そうした思いを荷風は実にしっとりと、まるで極上の蒸留酒のような文体で語っていきます。
かつで日本文学研究の大家ドナルドキーン氏が荷風について語っていました。「金と女にだらしなく、いつもチャックが開いた 疲れた老人。それなのに、描く言葉は何故こんなにも美しいのだろう」と。
最も醜い者が最も美しい物を生み出す事がある。そしてその裏にある哀哭という感情。芸術と人の営みの奥深さを考えさせられる一冊でした。
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| インパクト | ★★★☆☆ |
| 泣ける度 | ★★★☆☆ |
| 笑える度 | ★★☆☆☆ |
| 怖い度 | ★☆☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★★★☆ |
| 推定読了時間 | 5時間 |
若きウェルテルの悩み
- ゲーテ, Johann Wolfgang Von Goete, 竹山 道雄
- 若きウェルテルの悩み
「偉大なるワイマールの賢者も若かった 」
別に失恋したわけではないのですが、ゲーテを紹介したいと思います。
ゲーテは詩人として紹介される事が多いですが、それにとどまらず、政治、思想、文学、科学に到るまで非凡な才能をみせ、ワイマールの賢者の名を欲しいままにした人類史上の知の巨人です。
そのゲーテが若かりし頃に書いた失恋物語がこの若きウェルテルの悩みです(蛇足ですが森鴎外訳だと「少年ウェルテルの憂い」とちょっと趣がいまひとつのタイトルだったような記憶があります)。
ウェルテルは自分に恋人がいるにも関わらず人妻に横恋慕し、あげくに振られて自殺します。その苦悩たるや「もう少し力を抜いたら」とか「とにかく落ち着け」とつっこみたくなるようなすさまじさで悩み続けます。
単純にあらすじだけ聞いて、今の価値観に照らし合わせるとストーカー扱いされかねない勢いです。ですがさすが詩人だけあってその無駄のない文章と、恋愛だけではなく生き方、孤独といった青年期の悩みを丹念に詩的に詠いあげる力量には感動せざるをえません。
自らも大恋愛の末失恋し、その負のエネルギーを芸術に昇華させ、そして自らが死ぬかわりに主人公を死なす。 若くして芸術家のあるべき姿を体現して見せたかのようなゲーテの魔法の筆力に、ただただ頭が下がる思いです。
| 難易度 | ★★★☆☆ |
| インパクト | ★★★☆☆ |
| 泣ける度 | ★★★☆☆ |
| 笑える度 | ★★☆☆☆ |
| 怖い度 | ★☆☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★★★☆ |
| 推定読了時間 | 5時間 |
純粋なるもの
- 島 朗
- 純粋なるもの
「一瞬に全てをかけ、道を極めんとする者にだけ見える世界がある」
イチロー選手が5年連続200本安打を達成しました。素晴らしいことですが、日本でも昨日大記録が生まれました。将棋の羽生善治王座が14連覇というタイトル連覇の新記録を打ち立てたのです。
将棋に詳しくない方はピンとこないかもしれませんが、将棋界の大抵の記録というのは大山康晴15世名人(故人)という方が持っています。近代将棋の黎明期に登場した巨人であり、タイトル獲得数、通算勝ち星、タイトル連覇とありとあらゆる記録を打ち立て未だに破られていません。野球でいうなら、王と張本と福本を合わせたようなまさに不滅の存在です。
そのうちの一つを昨日羽生王座は破り、また他の記録でも将来的には射程距離に入れています。まさに天才。神がかり的な頭脳を持った人です。その羽生王座を始めとする、現在活躍する「羽生世代」の棋士達。その若かりし頃を綴ったのがこの作品です。
著者は島朗八段。自らが開いた将棋研究会で、若い羽生世代の棋士達と切磋琢磨した彼らの兄貴的存在です。
彼らがどのように考え、どのような姿勢で将棋と向き合ってきたか。何故彼らはそんなにも強いのか。その答えを島八段は「純粋さ」と答えています。同世代が青春を謳歌している中で、毎日何時間も、変わらず、休むことなくひたすら棋譜と格闘し、ただ将棋が強くなりたいという思いで何年間もそこに打ち込んでいく。将棋自体の才能もさることながら、努力する才能、そしてそれを成せる純粋さこそ彼らの力の源泉だとこの本は答えています。
羽生さんにせよイチロー選手にせよ、道を極めんとして努力を積み上げてきた人は、その上になりたつ静かな自信を湛えているように見えます。根拠の無い自信や単なる楽観主義な人が多い昨今ですが、こうした本物の佇まいというのは厳かで、やはり違って見えるものです。
彼らと同世代である事を誇りに思うと共に、とかく流されやすい自分をもう少し戒めなければと思ってしまいました。
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| インパクト | ★★★☆☆ |
| 泣ける度 | ★☆☆☆☆ |
| 笑える度 | ★☆☆☆☆ |
| 怖い度 | ★☆☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★★☆☆ |
| 推定読了時間 | 4時間 |
サウスポー・キラー
- 水原 秀策
- サウスポー・キラー
「スポーツヒーロー。孤独と緊張感の中で何を思うのだろう」
阪神が優勝しパリーグはこれからプレーオフと、プロ野球シーズンもいよいよ佳境に入ってきました。 その一方で楽天の監督が解任され、巨人では大粛清の嵐と、勝負の世界の明暗がはっきりと分かれている 感がします。
そこで今日紹介しようと思ったのがこのサウスポーキラーです。今年の「このミス」で 大賞に選ばれた作品ですが、ベテラン投手が自分の地位を保つため、若手の有望な投手を蹴落としていきます。そこに巻き込まれた新人エースが、犯人探しをするというストーリーです。
奇抜なトリックも猟奇的なシーンも何もない本書ですが、人物描写のたくみさと、何も無い事が確信犯的に新鮮さを生んで、エンターテイメントとして十分に楽しめる一冊です。
ただこの本を読んで、そしてプロ野球で現在起きている明暗を考えると、もちろん実際の野球界で相手を蹴落とすための傷害事件がおきているとは思いませんが、虚虚実実の駆け引き、取引が行われていることは想像に難くないですし、実際に若手の活躍を忸怩たる思いで見つめているベテランというのも存在するのだと思いました。
スポーツの根底はクリーンでフェアなものだと思います。ですが生活のかかったプロスポーツであればそこに人間らしい感情が渦巻いている事は決して否定できるものではありません。
一瞬の油断による怪我、不用意な発言によるトラブル、予期せぬライバルの出現。スポットライトを浴びる裏で日々緊張感にさらされる生活とはどういったものなのだろう。そう思いを巡らされる一冊でした。
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| インパクト | ★★★☆☆ |
| 泣ける度 | ★☆☆☆☆ |
| 笑える度 | ★☆☆☆☆ |
| 怖い度 | ★☆☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★☆☆☆ |
| 推定読了時間 | 3時間 |
巨額を稼ぎ出すハローキティの生態
- ケン ベルソン, ブライアン ブレムナー, Ken Belson, Brian Bremner, 酒井 泰介
- 巨額を稼ぎ出すハローキティの生態
「無言のカリスマは世界に癒しを届け続ける」
私は男なのでそれほどハローキティに興味はないのですが、香港やシンガポールといった東南アジア地域で生活している間にやたらとキティグッズをみかけ、「そんなに人気があるものなのか」と不思議に思っていたところこの本に出会いました。
日本通の欧米ジャーナリストが、世界を席巻する日本のキャラクター、ハローキティの魅力の秘密に迫るというのが大筋です。
サンリオの社員デザイナーが何気なく作ったキャラクターが20年に渡り世界中で愛され、アジアでは限定グッズ販売で警察が出動する事態になったり、アメリカでハリウッドセレブを虜にしたりと愛らしい姿とは裏腹のパワフルなセールス力は「日本の小学生以下の女子限定」程度の認識しかなかった私にとって少々衝撃的でした。
著者はキティの魅力の源泉として、二頭身で口が無い点を上げていました。ここには日本的以心伝心や禅の趣が生かされ、購入者にそれぞれ異なる(その人に都合の良い)癒しを提供してくれると述べていました。
何を大げさな事をと思ったのですが、ためしにWeb上でキティを凝視してみると、確かに口が無いのに何かを訴えかけてくるような不思議な気分に浸る事ができました。
サンリオの歴史に関する記述が冗長な点と、結局売れつづける理由についての答えが見出せていない点が少々残念ですが、ジャパニーズクールの代表格であるハローキティについての知識が得られた事は、なかなかに貴重な体験でした。
| 難易度 | ★★☆☆☆ |
| インパクト | ★★☆☆☆ |
| 泣ける度 | ★☆☆☆☆ |
| 笑える度 | ★★★☆☆ |
| 怖い度 | ★☆☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★☆☆☆ |
| 推定読了時間 | 5時間 |
悪魔の辞典
- アンブローズ ビアス, 奥田 俊介, Ambrose Bierce
- 悪魔の辞典
「健全な魂など味気ない、と悪魔はファウストは言った」
前回紹介したおバカさんの純粋さと比較すると、まさに対極に位置する辛辣さ、ひねくれっぷりを発揮しているのがこの悪魔の辞典です。
新聞記者だったビアスが記した主に政治や日常生活に関わる言葉を風刺たっぷりに解説した辞典ですが、その内容は世の中で価値や権威があると思われる物をことごとく皮肉り、世の中をまっすぐに捉えるなど子供の戯言かと思わせるようなインパクトがあります。
読み勧めていくうちに不適な笑みがこぼれ、タイトル宜しく魂が悪魔化していくような、他人を平気であざ笑えるような奇妙な魅惑に取り付かれていく危険な書物です。
周囲の人に同じ具合で接すれば、人でなしとか緑の血が流れているという評判を得ること請け合いですが、こうした風刺や皮肉の精神というのはうまく使えば逆に人間味が増してみえるという非常に微妙な代物であるのも事実です。
使うには高いセンスが要求され、失敗した時のリスクも大きいですが、うまくユーモアを織り交ぜてクールな大人を演出できれば人生もよりいっそう面白くなるのではと思わされました。
尚Webで悪魔の辞典を検索すると○○の悪魔の辞典(食べ物の悪魔の辞典、ガンダム悪魔の辞典等)亜流を数多く見つける事ができます。中には秀逸なものもありますので、本書を読んだ後に探索してみるのもまた面白いかと思います。
| 難易度 | ★★★☆☆ |
| インパクト | ★★★★☆ |
| 泣ける度 | ★☆☆☆☆ |
| 笑える度 | ★★★☆☆ |
| 怖い度 | ★☆☆☆☆ |
| 考えさせられる度 | ★★★☆☆ |
| 推定読了時間 | 6時間 |