純粋なるもの | バベルの図書館

純粋なるもの

島 朗
純粋なるもの

「一瞬に全てをかけ、道を極めんとする者にだけ見える世界がある」


イチロー選手が5年連続200本安打を達成しました。素晴らしいことですが、日本でも昨日大記録が生まれました。将棋の羽生善治王座が14連覇というタイトル連覇の新記録を打ち立てたのです。


将棋に詳しくない方はピンとこないかもしれませんが、将棋界の大抵の記録というのは大山康晴15世名人(故人)という方が持っています。近代将棋の黎明期に登場した巨人であり、タイトル獲得数、通算勝ち星、タイトル連覇とありとあらゆる記録を打ち立て未だに破られていません。野球でいうなら、王と張本と福本を合わせたようなまさに不滅の存在です。


そのうちの一つを昨日羽生王座は破り、また他の記録でも将来的には射程距離に入れています。まさに天才。神がかり的な頭脳を持った人です。その羽生王座を始めとする、現在活躍する「羽生世代」の棋士達。その若かりし頃を綴ったのがこの作品です。


著者は島朗八段。自らが開いた将棋研究会で、若い羽生世代の棋士達と切磋琢磨した彼らの兄貴的存在です。


彼らがどのように考え、どのような姿勢で将棋と向き合ってきたか。何故彼らはそんなにも強いのか。その答えを島八段は「純粋さ」と答えています。同世代が青春を謳歌している中で、毎日何時間も、変わらず、休むことなくひたすら棋譜と格闘し、ただ将棋が強くなりたいという思いで何年間もそこに打ち込んでいく。将棋自体の才能もさることながら、努力する才能、そしてそれを成せる純粋さこそ彼らの力の源泉だとこの本は答えています。


羽生さんにせよイチロー選手にせよ、道を極めんとして努力を積み上げてきた人は、その上になりたつ静かな自信を湛えているように見えます。根拠の無い自信や単なる楽観主義な人が多い昨今ですが、こうした本物の佇まいというのは厳かで、やはり違って見えるものです。


彼らと同世代である事を誇りに思うと共に、とかく流されやすい自分をもう少し戒めなければと思ってしまいました。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★☆☆
泣ける度 ★☆☆☆☆
笑える度 ★☆☆☆☆
怖い度 ★☆☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 4時間