ハードワーク~低賃金で働くということ | バベルの図書館

ハードワーク~低賃金で働くということ

ポリー・トインビー, 椋田 直子
ハードワーク~低賃金で働くということ

「近未来の日本の姿か、今そこにある現実なのか」


先日仕事が大ドラブルを起こし(私のせいではありません。。)、40時間連続労働というルール無用の残虐ファイトになってしまいました。仕事があけて朦朧とする頭で「こんな仕事や生活もどんなもんだろう」 と少々悩んでしまったのですが、この本を読んで甘い考えを改める必要があるかな、と思わされました。


イギリス人の女性ジャーナリストが40日間最低賃金しかもらえない仕事に従事し、その生活内容をレポートするというのが本書の内容です。


イギリス人はつくづくこうした体験レポが好きだなぁと思いながら読んでみましたが、その内容は日本も他人事ではないな、と思わされる少なからずショックな物でした。


レポートの舞台はロンドンです。著者は必要最低限の生活保障と、劣悪な公営住宅に住み、日本で言うハローワーク に出向いて様々な職業に就きます。主な仕事はポーター(ビルの管理人のようなもの)、掃除夫、ベビーシッター、給食作りの サポートといった物で、時給は大体4ポンド強(850円位)。私もロンドンに住んでいた事があるので分かるのですが、仮に一日8時間働いたとして4×8=32ポンド、週5日で32×5=160ポンド(32000円位)、 月に直すと15万円弱でロンドンで生活するのは非常に困難です。ここから家賃や税金を引くと、贅沢をする事はほぼ 不可能ですし、家族を養うなどは夢物語です。


こうした職業についている人の多くは移民や黒人ですが、白人も少なからず含まれます。 社会を裏方から支えているにも関わらず、彼らの給与が上がる事は殆どなく、十分な職業訓練も受けさせてもらえません。著者はその理由として、 サッチャー時代の民営化を挙げています。病院や学校、郵便、あらゆるセクションの間接業務を民営化した結果、 そうした部門で働く人は、コストカットの名に全て派遣労働者に切り換えられました。


結果として十分な教育を受けていない者やリストラされた中高年がこうした仕事の従事者となり、また彼らが上の生活水準に上がる事は非常に狭き門となっています。そしてこうした人が数百万の単位でイギリスにはいる というのがこのレポートの結論です。


著者はガーディアン紙の記者ですので、労働党より(サッチャーは保守党)である事を差し引いてみる必要があるかもしれませんが、それにしてもこの格差社会には愕然とさせられるものがあります。


翻って日本ですが、勝ち組み負け組みといったのどかな光景がまだ繰り広げられているわけですから、状況が それほど切迫していないのでしょうか?それともその兆候が既に現れているのか。。 金融ビックバンにせよ、政府部門の改革にせよ、日本にはイギリスから10~20年遅れでやってくるように見えます。


もちろん改革は必要ですし、私も賛成です。ですがその結果起こる事、それを想像するために、 海の向こうの島国は格好のベンチマークなのでは、と思わされる一冊でした。


難易度 ★★★☆☆
インパクト ★★★☆☆
泣ける度 ★☆☆☆☆
笑える度 ★★☆☆☆
怖い度 ★☆☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 5時間