陋巷に在り | バベルの図書館

陋巷に在り

酒見 賢一
陋巷に在り〈1〉儒の巻

「劇画調孔子伝。賢なるかな酒見賢一」


後宮小説の酒見賢一氏が書き上げた、全13巻に渡る傑作歴史大河です。


孔子とその最愛の弟子顔回というあまり(というか殆ど?)取り上げられることのない題材を選んだ斬新さもさることながら、この小説の最大の見所はその展開が「劇画調」という点にあります。


孔子は儒学の祖ですが、儒学と言うと礼節を重んじる非常に堅苦しいイメージを抱きがちです。ですがこの小説では儒学の元を礼とし、そして礼とは祈りによって地霊や神と交信し、その力を借りる事、つまりサイキックとして扱っている点にあります。


孔子は政治の中枢にいて儒の力で政治改革を行おうとしていますが、顔回は仕官もせず、陋巷(スラム)にいて普段はボーっとしています。ですが孔子の政的が彼を貶めようと悪鬼や手下の呪術使いを送り出すと顔回はそれを察知し、彼らとサイキックウォーを繰り広げ次々と打ち負かしていきます。その描写は火花や異様な煙が目に浮かぶほどのリアリティで、まさに胸躍る活劇といったところです。


特に3巻あたりから最終巻近くまで続く女呪術師との対決は目が離せません。私などはこの二人の対決が出てこない巻は読み飛ばしたいほど楽しみにしていました。(結末は少し哀しげでしたが)。


普段触れ合う機会は殆ど無いにも関わらず、心の深いところでつながっている師弟関係の強さと美しさ。いざというときに繰り出させる強烈なサイキック。古代中国の歴史の奥深さ。読み物としての見所に溢れた傑作というより他ありません。孔子と顔回が国を捨てるところで終わってしまいましたが、その後の続編も是非読んでみたいものです。


難易度 ★★☆☆☆
インパクト ★★★☆☆
泣ける度 ★★★☆☆
笑える度 ★★☆☆☆
怖い度 ★★☆☆☆
考えさせられる度 ★★★☆☆
推定読了時間 5時間(一巻)