ALOHA
先日、
作家の伊集院静さんが亡くなりました。
伊集院さんのことを知った時は
当時大学生だった私にとって、
男性の、というか、
人としての『色気』というものが
どんなものか、
彼の著書や生き方を通して教えてくれた人でした。
また、伊集院さんの
「大学の4年間は、
人生で最後に遊んで暮らせる時期なのだから
大いに遊びなさい」
というような言葉を間に受けて
大いに遊び、
親には怒られながら 笑
大学生活を悔いなく終えることができました
なので何というか、
私の青春を彩ってくれた要素が一つ、
伊集院さんの逝去によって
違うところへ行ってしまった感じで、
とても寂しい気持ちになりました。
でも、日々忙しい中で、
伊集院さんの著書から離れていた自分もいたので
『なぎさホテル』を買って読んでみました。
「あぁ、これこれ、この感じ。」
と、
久々に、伊集院さんの色気を
味わうことができ、
幸せな気持ちになりました
その『色気』というものは
言葉にするのは難しいけれど
「人としてとても不完全であるからこその優しさ」
ということであったと思います。
伊集院さんが
エッセイで語る自分のこと、
小説で描く人物は
みんな、
挫折や喪失を抱えて生きています。
そのみんなに、
何とも言えない
『色気』があるのです。
私が最初に伊集院さんを知ったのは、
「天使の果実」という
大和和紀さんの漫画でなんですけど
（私は漫画っ子で大和和紀作品の大ファン）
こちらは
伊集院さんの自伝的小説
『潮流』が原作です。
前妻であった昭和の美人女優、
故夏目雅子さんとの
出逢いのストーリーなんですが、
CMディレクターとして
ヒットを生み出す才能の裏で
「飲む・打つ・買う」の自堕落な生活の毎日
家庭に対しても
女性に対しても
かなり酷い男性
としての描写もありました。
お友達として大和和紀さんが
伊集院さんのことを語っているページがあって
お酒飲みすぎて歯ボロボロになりながら
昼夜逆転で麻雀に耽り
車券握りしめて競輪場へ行くと
現実の伊集院さんも
漫画の中と同じ感じでした。
ただ、私は、
「ダメなおじさん
でも、なんか面白いな、この人」
と思って
そこから、伊集院さんのいろんな本を
読み出しました。
そうしたら、
何とまぁ
伊集院さんとは、人に優しいのか。
こういう短編集でも、
挫折したり、大切な人を失った主人公たちが
後ろを振り返って気づくことがあったり
ふっと顎をあげて希望を見つめられたり
そういうキラッとした瞬間の心の描写を
丁寧に、優しく
象徴的な風景に絡めて描くので
とても魅力的に映ります。
挫折も喪失も
体験した伊集院さんだからこその
人に対するとても優しい眼差しを感じられて
当時、部活で足を壊して
引退せざるを得なかった私は、
随分とそれに癒されました。
高校でできなかったことを
大学デビューしてやろうと目論んでいたこともあって
引きこもりたいくらい挫折感を感じていましたが
伊集院さんの本には
挫折した後の再生のストーリーがたくさんあって
痛みを知ったからこそ
完璧になれなかったからこそ
身につけた
人としての優しさという魅力は
『色気』と感じられるんだな
と、ほっとしたことも覚えています。
もしも、あなたが
伊集院静さんの本を読んだことがなかったら
そして、挫折や喪失や寂しさを感じられていたら
とてもとても、おすすめします。
『機関車先生』なんか読みやすいと思います。
そしてやっぱりこの本も
とことん人に優しいです
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