『ローラーボール』を観ました。
国が崩壊し、大企業が世界を動かすようになった未来。
平和を実現したこの世界では、10人の選手同士ががトラック内を駆け巡りボールを奪い合うスポーツ=ローラーボールが人々を熱狂させていた。金属製のボールをゴールさせるためなら、どれほど相手の選手を痛め付けても構わないという恐ろしい競技だ。
各企業はチームを抱え、エナジー社の花形選手ジョナサンは今日の試合でも大活躍。
チームが順調に勝ち進む中、エナジー社のCEOであるバーソロミューより引退を勧告されるが、ジョナサンはこれを拒否。
ジョナサンは真の黒幕や目的を追いつつ、バーソロミューやエナジー社の妨害工作に遭いながらも試合を勝ち進んで行くが……といったお話。
“コンピューターに支配される管理社会”だの“戦争代行のスポーツ”だのと紹介されますが、いかにも紋切り型な紹介文というか、拡大解釈の度が過ぎた事を言ってるなと。
原作はそうなのかもしれないけど、本作=映画版を先入観なく観てみれば、そうでもない事に気付きます。
タイトル、そして本作の見どころにもなっているのがローラーボールという競技。
擂り鉢状のトラック、その両極にゴールポストがあり、そこに鉄球を入れると得点を獲得。10人の選手はローラースケートや数台のバイクを使い、ゴールを目指すためなら暴力行為も許されるというもの。
バイオレンス上等の、まぁB級臭い設定ですよね(笑)。
とは言え、試合のシーンは迫力があり、けっこうなスピードが出ているのが分かります。
何より、独自のルールを設定した上で、あれだけ広いトラック(ホントに広い!)をセットとして作ったオリジナリティには拍手です。
ちなみにこのトラックのバンク角は38度くらいだそうで、キツくても35度前後という競輪場のそれと比べると、かなりハードなんじゃないかな?
そんなローラーボールの試合シーンが見せ場となっていますが、ただそれだけの能天気な痛快アクション映画では終わらず、何者かに狙われる主人公というスリラー要素も色濃いんですよ。
音楽がほとんどないのも、ずいぶんシリアスな雰囲気。
真にジョナサンを狙うのは何者なのか、ジョナサンを危険視する理由は何なのかという謎を追うのも見どころです。
それ故、スカッとするような作風を求める人には不向きな作品です。
本作は近未来という設定ですが(劇中では語られていませんが2018年なんだとか)、考え方によっては理想的ながら、映画的に見ればディストピアなんでしょう。
どことなく、『デス・レース2000年』を思い出すような未来観です。
特定の分野全てを一手に引き受ける大企業が文字通り大きくなりすぎ、挙げ句には国をも買収できるくらいの規模になり、企業間の競合どころか国家間の戦争すらもなくなった世界。
平和に浸りすぎた反動から、人々はローラーボールという命すらやり取りするような、過激な見世物に熱狂しているようです。
銃で木を燃やして大はしゃぎするシーンはその象徴であり、うすら寒さすら感じさせます。
そういえば、2002年にリメイク作品が公開されているんですよね。
ローラーボールという競技をフィーチャーしたいだけの、毒にも薬にもならない浅薄な作品だった印象があります。
…いや、印象どころか記憶にすら残ってないや(笑)。
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Blu-ray版は映像特典満載です。吹き替え音声がないのが残念かな?
ジェームズ・カーンさんやモード・アダムスさんが当時を振り返るインタビューが良いですね。
映像特典が多く、長く、なかなか見終えられない…(映像特典で222分もあるとか)。