『映画 王様戦隊キングオージャー アドベンチャー・ヘブン』を観てきました。
今日はシュゴッダムの王となったギラの戴冠式。他の4王国の王や民も集まり、式が始まろうとしたところに、ギラの幼馴染であるデボニカが現れる。デボニカは死の国ハーカバーカからの使者で、ギラや4王国の王たちを先導する。
ハーカバーカに着いた5人を待っていたのは、シュゴッダム初代国王ライニオール。新国王になったもののギラでは再び起こるであろう大災厄から国民を救えない、ならば自分が現世に蘇ってシュゴッダムを守るしかないと語るライニオール。
デボニカを犠牲にしてまで現世に復活を遂げようとするライニオールを止めようと、ギラは王凱武装しクワガタオージャーに変身。そしてライニオールもまた、死者の魂を力に王骸武装し……といったお話。
『王様戦隊キングオージャー』という作品は異世界観たっぷりのビジュアルが圧倒的で、毎週放送されるテレビ作品でよくもまぁあれだけのクオリティをキープできるものだと感心します。CG屋さんは血を吐き続けているんだろうなぁと(笑)。
テレビ版がそんななので、さて劇場版はどこまでやるのかなと思えば、余裕でテレビ版を越えています。
何となく、映画館で似たような体験をしたなーと思い出したのは『アバター ウェイ・オブ・ウォーター』。
本作はちょっと解像度を落とした『アバター』くらいの事をやっているんですよね。比較対象が『アバター』の時点で、ずいぶんハイレベルなんですよ?
夏映画は仮面ライダー側に力を入れているのが露骨ですが、今年は逆にして欲しかったと感じる人が多いんじゃないかな?
監督は上堀内佳寿也さん。
個人的に、ニチアサ作品における上堀内さんは贔屓にしているんですが、特に映画に関してはテレビ版と区別をつけて明確に特別感を出しているのが良いんですよ。
その一つがロケ地で、通常のニチアサ作品はテレビ版&劇場版ともにいつもの場所ばかりですが、カミホリさんの劇場版はこれまでに見た事のないロケ地を探してくるので目新しさがあります。本作の場合はCGで構築された世界ですが、劇場版ならではの新世界を生み出していますしね。
長期シリーズ最大の課題であるマンネリ化を、どうにかして脱却しようとする姿勢が見て取れるのが好きです。
これは去年もそうでしたが、ロボ戦がないのは好印象の極みです。等身大ヒーローのパワーアップ形態もなければ、変身するのもクライマックスの一回のみという潔さ。
スーパー戦隊シリーズの夏映画はただでさえ尺がないから、一番無駄に感じるロボ戦を排してまでドラマに重きを置いたのは実にナイスな采配です。それ故、ドラマパートに時間を割いてもらえるのがありがたい。
劇場版に乗っかった新製品を出せずに歯ぎしりしているであろう、あのオモチャ屋を思うと痛快です(笑)。
中村獅童さんのキャスティングも絶妙です。
中村さんはスパ戦は歌舞伎に通じるものがあると言及もしていますが、それ故か、ライニオール役のハマりようも尋常ではありません。
近頃のニチアサ作品はレギュラー以外の役者には割と自由に、ちびっ子視聴者を(そこまで)配慮しない芝居をさせていますが、本作における中村さんも同様に思えます。子供向け作品ではあるけど、子供をナメていない証左ですね。
劇においてキャラを表現するのは脚本や衣装はもちろんですが、やっぱり演者の力(かつ少々のネームバリュー)なくしてはあり得ない事を実感します。
毎度言いますが、劇場プログラムは情報満載で、写真のみならず読み物としても楽しめます。故に買いです。ヤンマとかリタの取り巻きの名前とか初めて知ったよ(笑)。
ちなみに800円、確実に元は取れますよ。
…と、ここでテレビ版も含めた『王様戦隊キングオージャー』という作品についての雑感。
圧倒的なビジュアルに加え、ずいぶん練られたストーリーがいいですね。仮面ライダーくらいに対象年齢を上げたスパ戦が見たいという要望に応えたかの作品に思えます。
国単位のしがらみに加え、ちょっとした政治を描いているのも新鮮で見応えがあります。
その反面、ちょっとマニアックに走りすぎているのが気になります。
まぁ子供は子供なりに楽しめているんでしょうが、大人=親が説明できないくらいに複雑にしちゃうのはどうかと思います。
近年のnotテレビ作品の仮面ライダーよろしく、大人が楽しむために子供から横取りするような真似は控えて欲しいどころか、止めて欲しいです。大人だけで楽しみたいなら新しいものを作れよと。
まぁ、数あるスパ戦シリーズの中の異色作たる1作ならいいですが、来年はもう少し明快な戦隊にして欲しいですね。