また『遠すぎた橋』を観ました。
前回の鑑賞記はコチラ。
ジャンルは戦争映画ですから、初見では戦闘シーンばかりに注目してしまうのは当然です。まぁ、所詮はエンターテインメントですからね、戦闘になる理由や結果なんか後回しでいいんですよ。
ただ、何回か観ていると、それ以外の事情に目が行くようになるもので、そういえば本作は“ドイツを負かした俺たちの大勝利!”って感じのお話ではなかったんだよなと。
世界史を勉強してきた人ならネタバレに気付くでしょうが、本作で描かれるマーケットガーデン作戦とは失敗に終わった作戦ですから。
そんなオチを知っていながら本作を観る(もしくは再見)すると、連合軍の必死な戦いにどことなく虚無感や悲哀すら漂っているように見えてきます。
序盤にある、“えっ、そんなムチャクチャな作戦、ムリっしょ?”とでも言いたげな将官のリアクションは、少なからず本作の行く末を表しているんですよね。
上層部が立案する机上の作戦に穴があっても、現場はそれに一片の疑念を持たず従順せねばならない。間違いを指摘する現場の意見こそが間違っているという、上手く行っていないワンマン会社みたいな雰囲気すら感じます(笑)。
かと言って、上層部ばかりに非があるわけでもなく、小さな“もしも”の話ばかりしていても事態は進みませんからね。
史実に基づいた戦争映画というと戦闘シーンを主体に、さほどのドラマやメッセージは含まない客観的な視点、つまりドキュメントに近い作風で描かれます。
本作もそれに近い作風ですが、それらに比べるとドラマ要素というか感情移入(or同情)できるシチュエーションが多めです。
瀕死の上官を連れ帰ったドーハン軍曹(演じるのはジェームズ・カーンさん)が、軍医に銃を向けてまで手術の順番を割り込ませようとするエピソードの顛末とかね。
不条理、かつ無慈悲な戦争であっても戦っているのは人間ですから、情みたいなものはどこかしらにあるはずなんですよ。
負傷兵を多めに描いているのもいいですね。
戦う兵士があれだけいる上でバンバン撃ちまくっていれば、その分だけ弾に当たっている人もいます。そりゃ負傷者がどんどん増えていくのは当然です。
民間人の家を野戦病院代わりに使うシーンが多いですが、数人だった負傷兵が終いには足の踏み場もないほどにギュウ詰めになる画は、ちょっとした地獄絵図です(ちょっとではないか)。
戦争映画に事実やリアルを求めるなら、こういうシーンが必要ですよね。負傷した部分を克明に見せるようなリアルじゃなくてね。
後年の作品での負傷兵の描写と言えば、腕が千切れただの内臓が出てきただのと過剰に過激な見せ方をして、こういうのを見て戦争の悲惨さが云々とか言い出す人が増えましたが、逆にそこまで見せないと伝わらないのかよと、チト嘆かわしい気持ちになりますね。
アーネムの橋を奪取する際、橋頭堡として民間人の住宅を拝借しますが、これも我々のような市井の民にとっては迷惑な話で同情しますね。そこを拠点に戦闘が起きるからには住宅にも被害を受けるし、もちろん損害賠償なんてするわけもないんだから、事実上は取り上げられるのと同じですしね。
これが一個人の住宅のみに留まらず、初めは小綺麗だったアーネムが瓦礫の街と化すビフォー&アフターには戦慄です。
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んん~? Blu-rayは品切れみたいですねぇ、配信版も見当たらないし。
そのうちまた発売するでしょうが…。