オオハマボウ(ワル)の葉からテンペを作ってみた。 | 発酵食品アドバイザー・アジアの発酵食品研究家 大西孝典のブログ

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先日、那覇で行ったテンペ作りのワークショップの際、インドネシアではワル(Waru)という植物の葉を使ってテンペの菌を取り出して、その菌をスターターにしてテンペを作るという話をし、そして、そのワルこそが沖縄に良く生えているユウナ(ユウナは沖縄での呼称、正式にはオオハマボウ)と同じものなのだ!という話をしたところ、さっそく生徒さんが尽力してくれて、ユウナの葉をたくさん頂けることになった。

ワル=ユウナ=オオハマボウの葉。木の葉についているクモノスカビやケカビからテンペを作る。

 

テンペ作りは一般的には菌スターターであるラギの粉末を使う事が殆どだが、現在でもインドネシアでは、出来上がったテンペを黒く胞子をつけるまで放置し、それを乾燥させてテンペのスターターとして使ったり、今回の様にワルの葉にテンペ、もしくはゆでた大豆を挟み、ワルの葉についているクモノスカビを大豆に移してウサール(Usar)と呼ばれる菌スターターとする場合などがある。

 

このワルという植物、かなり勘違いされているのだが、よく、ハイビスカスの葉からテンペを作る、という説明に対して、ハワイなんかで見かける、真っ赤な花のあのハイビスカスの葉を使うと思っている人が殆どなのだが、実際にはワルはあのハイビスカスではなく、違う植物なのだ。ハワイや沖縄なんかでもよく見るあのハイビスカスはアオイ目アオイ科のフヨウ属のハイビスカスであり、それに対してワル(オオハマボウ)はアオイ目アオイ科Talipariti 属の植物なのだ。以前は前述のハイビスカスと同じ、アオイ目アオイ科フヨウ属のHibiscus tiliaceusとして分類されていたことからハイビスカスという誤解を生んだものと思う。

 

よく見かける一般的なハイビスカス。ワルはこの植物ではない。

 

オオハマボウの花。沖縄ではユウナと呼ばれ、インドネシアではワルと呼ばれる。インドネシアではチークの葉やこの木の葉からテンペのスターターを作る。

 

結局、このワルからウサールを作り、そのウサールからテンペを作るという作業に1週間以上費やしたが、その結果、非常に素晴らしいテンペができた。以下、写真でその経過をご紹介する。

 

茹でた大豆をこのように葉で挟む。

楊枝などで封をし、このまま静置。

少しモヤッとしたものが出てきた。いつも見慣れたクモノスカビの菌糸と形状は同じ。たぶんそうだろう。そう願いたい。

コロニーがだんだんと大きくなってきた。

とうとうこんな感じに・・・。菌糸の全体に胞子が付き始め、

写真の色より黒っぽい。無事成功だ。

十分に胞子も付き、ここから乾燥に入る。

手前左の様に、中には汚染されてしまった個体もあった。

カラカラになるまで乾燥させる。少し足の裏っぽい匂いがするものの、

決して嫌な匂いではない。濡れた子犬の匂いに近いかも。むしろ懐かしい香りだ。

粉々に粉砕し・・・・・・

茹でた大豆に接種した後、発酵器へ・・・

活性が良いのか、20時間でこの通り。別バッチからのテンペはもう少し時間がかかった。やはり個体差もあるのだろう。

天然の葉由来のオリジナル・テンペの出来上がり。

心なしか、一般的なラギから作るテンペより、旨味が濃厚な気がした。

手前テンペ、かもしれないが・・・・。

 

というわけで、今回は、100%沖縄由来のテンペ・スターターを使ったオリジナル・テンペの紹介でした。

 

今回もお付き合い頂き、ありがとうございました・・・。

 

 

終わり。