某国王女のアンは過酷な日程に疲れてローマの町に逃れ出た。ベンチで寝ているところを記者のジョーと会った。二人はローマの名所を観光して回って親しくなった。
製作年:1953,監督:William Wyler,脚本:Dalton Trumbo,Ian McLellan Hunter,John Dighton,原作:Dalton Trumbo
■ はじめに
◆ 登場人物(キャスト)
アン王女(オードリー・ヘプバーン)
ジョー・ブラッドリー(グレゴリー・ペック) 記者
ヘネシー(ハートリー・パワー) ジョーの上司
アーヴィング・ラドヴィッチ(エディ・アルバート) 写真家
◆ 補足
◇ はじめに
今までの私の映画レヴューを見てこられた方は「お前がローマの休日をレヴューするのかっ?」と言われるかもしれない。
本作は非常に有名な映画であり、すでに素晴らしいレヴューがいくつもある。私がさらにレヴューをする意味があるのかっ?
だが現在では貧乏人の私にも投票の権利が与えられており、同様の意味では私にも本作をレヴューする権利がある。
◇ アン王女役の候補者
すでにいろいろなところで書かれているので、調べればわかるのだが、アン王女役にはエリザベス・テイラーやジーン・シモンズの名前が挙がっていた。エリザベスは都合がつかなかったらしい。
監督のウィリアム・ワイラーはジーン・シモンズを気に入っていたようである。ということで彼女にオファーが行われたが、彼女と契約している会社が断って振出しに戻った後、数人の候補が挙げられてオードリーに決まったという経緯がある。
ジーン・シモンズは、この時点ですでに有名女優で、歴史映画などに多く出演しており、本作にはぴったりである。「悲恋の王女エリザベス」では即位前のエリザベス一世を演じている。
実現していれば私はさらにジーン・シモンズが好きになっただろう。
ちなみにグレゴリー・ペックとジーン・シモンズは「(1958)大いなる西部/Big Country」で共演している。
◇ ハワード・ヒューズ
ジーンと契約している会社と言ったが、実はハワード・ヒューズである。ご存じの大金持ちだが、映画界にも大きな影響力を持っていた。監督もした。
最後にはラス・ヴェガスの高級ホテルの最上階を借り切ってほとんど外出せず孤独な生活を送った。細菌恐怖症であったとも言われている。
彼は歌手のジェーン・ラッセルをスカウトして「(1943)ならず者:ビリー・ザ・キッド/The Outlaw」に起用した。これが映画初出演。
ジェーンはコメディ、色気のある役、マジメな役となんでもこなす素晴らしい女優だったが、出演作はさほど多くはなく、歌手に戻った。マリリン・モンローとの共演も有名。
彼は多くの女性と話題になった。金持ち&有名人の特権か?1929年1月7日生まれで現在(25/04/28)96歳のテリー・ムーアとは20年以上も係争状態にあった。
彼が本当に結婚したのはジーン・ピーターズ。これで彼女は結婚引退した。
ジーン・ピーターズは大きな人気があった女優だが、これで経歴が打ち切られてしまった。非常に残念。大推薦作は「(1951)女海賊アン/Anne of the Indies」。
◇ ジョー・ブラッドリー役の候補者
最初はケーリー・グラントにオファーされたが彼は断った。その後ワイラー監督はグレゴリー・ペックと交渉し、最初は渋ったらしいが出演を承諾した。
彼はすでに有名男優であり、これでアン王女役が有名女優である必要はなくなり、自由に探すことができるようになった。それでオードリー・ヘプバーンに辿り着いた。
私の勝手な意見を述べれば、彼とあまり年齢が違わないステュアート・グレンジャーはどうだろうか?
当時のハンサム男優で、またさほど癖が強くもなく、上品な感じがする。それと本作当時はジーン・シモンズと夫婦であったという好条件がある。
仮定の話をしてもしようがないが、ステュアート・グレンジャー、ジーン・シモンズだったらどうなっただろうか?
参考。「ステュアート・グレンジャー&ジーン・シモンズ共演映画」。
共演作の中には「(1953)悲恋の王女エリザベス/Young Bess」があって、即位前のエリザベス一世(ジーン)とトマス・シーモア(ステュアート)の恋愛が展開していて、本作と状況が似ている。
この問題をもう少し検討してみよう。
彼をフランス人記者の設定にして、フランス人のイケメン俳優のルイ・ジュールダンではどうだろうか?彼はイケメンであるだけでなく、コメディにも多く出演している。
すると若干堅苦しい感じのグレゴリー・ペックよりも、ウィットが効いたイケメン記者が出来上がる。展開をコメディっぽいものにすると、もっと楽しい感じの「ローマの休日」が出来上がる。
このようにすると王女役も再検討。大胆に上に述べたジーン・ピーターズにする。ルイとは「女海賊アン」で共演している。キリッとした感じの王女が出来上がる。いやジーン・シモンズも非常に好きだが。
以上を私の独断でまとめると以下の組み合わせとなる。番号は私の推薦順。
1.ジーン・ピーターズ&ルイ・ジュールダン
2.ジーン・シモンズ&ステュアート・グレンジャー
3.オードリー・ヘプバーン&グレゴリー・ペック
◇ 別の展開
参考として「王女が自分の人生を切り開く映画」を見ていただきたい。
女王でも王女でもよいが、今までの自分の人生に満足できずに、そこから脱皮していく女王・王女の映画を集めたものである。
本作を例にすれば「アン王女が地位を捨てて、自分の新しい人生を始める」ということになる。
私の希望を言えば、このような展開にできなかったのかと考える。いや本作は、これはこれで完成品なので、そのようにすれば、また別の映画と言うことにはなるが、このような映画の方が私的には好みである。
◇ グレゴリー・ペック
グレゴリー・ペックは有名男優だが、私が見た範囲では抑制的なキャラクターの役ばかりで、少しばかり不満である。
推薦作はアン・バクスターと共演の「(1948)廃墟の群盗/Yellow Sky」。
小柄なアンがライフルで銃撃戦を演じている。彼が率いる強盗団が、56.7度Cという観測上の世界最高気温を記録した海面下(一番低いところで-86メートル)の砂漠デス・ヴァレー(死の谷)を越えて逃亡してきたところ、老人と孫娘(アン)だけが住む廃墟の町に来たというストーリー。
後は「(1952)世界を彼の腕に/The World in His Arms」。これは1928年8月16日生まれで現在(25/04/28)96歳で生きており歌手でもあるアン・ブライスが共演。
◇ オードリー・ヘプバーン
1929年5月4日~1993年1月20日:63歳。ベルギー生まれ。
オードリー・ヘプバーンはそれまでの経歴はともかく、本作で一気にトップスターになった。以降は話題作、人気作ばかりである。
冒頭のキャスト紹介で「Introducing Audrey Hepburn」と表示されていて、あたかも映画初出演かのように書かれているが、彼女はその前にも映画出演している。ただし大作は本作がはじめて。
彼女の映画はあまり見ていないが、今のところの推薦作は「(1967)暗くなるまで待って/Wait Until Dark」。
盲人の女性が麻薬事件に巻き込まれて襲撃されるストーリー。アパートの中に侵入してきた賊を盲人が自力撃退する。
参考。「目が見えない女性が襲撃される映画」。
◇ 画面
本作の画面を見てみると、まずモノクロでわりと画面が暗い。昼間の場面でもわりと暗い。
エリザベス・テイラーやジーン・シモンズを検討するくらいならば、このあたりにも力をいれてほしいところである。
それでも本作は素晴らしいのだが、もっと素晴らしい映画になったのではないかと思う。
復習すれば、カラー映画にして、細かいところも鮮明にかつ明るくしてほしかった。
◇ なぜヒット作となったのか?
これは私が言わなくてもいいことだが、一応挙げておく。
まずグレゴリー・ペック。先に述べたように私は彼をあまり評価しないのだが、本作の場合はむしろ良かったのかと思う。本作の時点で彼は有名男優である。
強烈なキャラクターが売りの男優ではなく、抑制的&控えめな感じの男優の方が上品な感じになる。
それとオードリー。彼女は本作時点であまり知られておらず、新鮮味があり、清楚な感じがする。この点がむしろ幸いだったと感じる。
ジーン・シモンズはともかく、エリザベス・テイラーでは派手すぎるような気がする。補足。エリザベスは好き、念のため。
場所がローマでローマの観光地を見ることができる。ローマは観光地が多いために、何度もストーリーが変更されたとのこと。
参考として「(1954)愛の泉/Three Coins in The Fountain」を見ていただければよいと思う。
こちらは「ローマでのアメリカ人女性三人の恋愛模様」を描いたものだが、カラー撮影で、こちらもローマの名所をいくつも見ることができる。展開も洒落ている。
三人の女性はドロシー・マクガイア、ジーン・ピーターズ、マギー・マクナマラ。本作前のオードリーよりは人気がある。
画面は非常にキレイで、先に述べたように本作の画面が、このようであれば、さらに大ヒットとなっただろう。
「愛の泉」はレヴューを見てみると非常に評価が高いのだが、本作ほどのヒット作ではない。「愛の泉」の三組の恋愛はいずれもハッピーエンドなのだが、本作はご存じの通りの結末で、むしろ逆にこのあたりが影響したのか?
■ あらすじ
◆ アン王女は大使館を抜け出した
アン王女はヨーロッパ某国の王位継承者。今回はヨーロッパのいろいろな国を回って外交活動をしている。ハードな日程のため疲れている。
同行している主治医は「ゆっくりお休みになるように」と鎮静剤を注射をした。
主治医や他の人は部屋を出て行き、王女はベッドに入った。
だが彼女は寝ておらず、大胆にも窓から降りて、大使館の中に入っていた業者の車の荷台に乗って大使館から出て行った。
車を下りて夜の町を彷徨っていたが、だがしばらくして薬が効いてきて眠くなってベンチで寝てしまった。
◆ 記者のジョーは王女と出会った
アメリカ人の記者ジョー・ブラッドリーはアン王女を取材するためにローマに来ていた。
そこでベンチで寝込んでいる若い女性を発見した。寝ぼけているので、自分のアパートまで連れて行った。
ジョーは王女の会見を取材することになっていたが寝坊をしてしまい、遅れてしまった。
また昨夜連れて来た女性は起こしても起きないので、そのままにして自社に行った。
上司のヘネシーに問い詰められて「ちゃんと会見場所にいた」と嘘を言ったが、上司は「王女の体調不良のため会見は中止」という記事を見せた。
記事の写真を見て、アパートに連れて来た女性がアン王女であることに気が付いた。「これは特ダネになる」と考えた。
ジョーは友人のカメラマンのアーヴィング・ラドヴィッチに電話をかけて、彼女が王女であることは伏せて、写真を取ることを依頼する。
◆ 二人はローマ市内を回った
アン王女は「用事がある」と言って出かけて、市場で靴を買い、長い髪をバッサリと切った。
ジョーは王女を追いかけてスペイン広場で追いついた。スペイン階段で話した後、ローマ市内の案内を申し出て、ローマの名所を見て回る。
王女はスクーター(Vespa)に乗って走り出したが、彼女は運転できずに悲鳴をあげた。ジョーはスクーターを追いかけて飛び乗って二人で走った。
二人乗りを警察に注意されたが、その後もいろいろと見て回った。
◆ 王女は大使館に戻った
川のほとりで開かれているダンスパーティに出て踊った。
王女を追っていたエージェントに見つかって追いかけられて逃げ出した。王女は相手の一人の頭をギターで殴った。
二人は川に飛び込んで逃げ、岸にあがってキスをした。
ジョーのアパートで服を乾かしていると、王女の国の人々が「王女が病気ではないか?」と心配しているというニュースが流れた。
ニュースを聞いて自分の役目を自覚した王女は大使館に戻っていった。
ジョーは王女とのことを記事にしないことに決めた。
◆ 王女の会見が行われた
王女の会見が行われるとアナウンスされた。
多くのメディアが集まった。ジョーも参加した。
奥の階段から下りてきた王女は記者たちの前まで進み、一人一人に会釈しながら歩いた。
王女とジョーは他の人には分からないように頷き合った。
会見が終わり、王女も記者たちも立ち去った。ジョーは王女のことを思い浮かべながら、最後に部屋から出て行った。
■ 出演作
◆ オードリー・ヘプバーン
(1966)おしゃれ泥棒/How to Steal a Million
(1961)噂の二人/The Children's Hour
(1967)暗くなるまで待って/Wait Until Dark
(1960)許されざる者:妹は先住民の娘なのか?/The Unforgiven
(1957)昼下りの情事/Love in the Afternoon
◆ グレゴリー・ペック
(1945)白い恐怖/Spellbound
(1947)パラダイン夫人の恋/The Paradine Case
(1962)アラバマ物語/To kill a Mockingbird(1958)大いなる西部/Big Country
(1947)決死の猛獣狩り/The Macomber Affair
(1948)廃墟の群盗/Yellow Sky
(1952)世界を彼の腕に/The World in His Arms