今回の京都旅行のハイライト養源院。

時節柄花の話題を先に入れたので、やっとたどりつきました(笑)。

 

養源院を目指したきっかけは本文最後の方に記すとして、

先に本日のブログタイトルの意味の説明から。

 

こちら、俵屋宗達直筆の杉戸絵『唐獅子図』、『白象図』、『波に麒麟図』(および今回見られなかった襖絵『松図』)があることで知られますが、この杉戸絵などは博物館に移動したらまったく意味合いが異なってしまう、この場所にあるからこそ、絵に施した工夫が生きる、と気づいたのです。

つまり教会の祭壇画と同じように。

 

 

 

まず受付を済ませると、6か所で説明があり(6つの説明内容はすべて異なり、一部はテープ、残りはご住職/スタッフの方の説明です)、概要を簡潔に把握することができるという便利な仕組みでした。6つの説明が一巡すると、また頭から同じ説明が6回繰り返されるので、途中からジョインしても、逃した部分を最初から聞くことが可能です。

 

説明を聞けば聞くほど、この杉戸絵はまさにバロック時代の教会画だなぁと実感です。

カトリック教会が対抗宗教改革として聖書の場面を大型のバロックの画家たちに描かせたたあの時代。

プロパガンダ作戦として、信者たちの目線を重視して絵画が制作されました。

例えば聖母の顔に光が当たるよう工夫したり、見上げたときに、キリストが迫るように工夫された絵画など。

 

この『唐獅子図』や『白象図』(写真はそばにあったポスターですが)もまたしかり。

 

 

 

中に入ると正面には、唐獅子図の杉戸があります。

謁見者が次の間に通される際、右側の戸が開けられます。

つまり右側の戸が、すすすっと左側に寄せられます。

そうすると、右の戸に描かれた獅子の顔が左へ移動。

左側に描かれた獅子の腹に食い込むような様相を呈します。

なので杉戸は必ず右側を開けるようになっていたとのこと。

 

そして右側が開かれた時、謁見者の目に飛び込んでくるのは奥の杉戸に描かれた右側の白象。

いらっしゃいませ、と挨拶しているかのよう。

 


 

帰る際は、麒麟が描かれた杉戸(獅子図の裏側)の右側が開けられます。

謁見者が振り返るとその目の先にはこちらの象が飛び込んできます。

来訪をお礼しているかのような平身低頭で描かれているのです。

 

 

 

また、左右の白象を合わせて目の前で見ると、また異なった様相を呈します。

右の母象が左の子象をやさしく見守るようにも見える、というわけです。

 

 

 

なるほど、描かれた場所にそのままあるということの意味を実感です。

 

 

さらにご住職が強調されていたのは、この寺院が豊臣の源流から発し、

徳川家の菩提寺になったという融合的意味合いでした。

 

まず寺院を創建した淀君は豊臣秀吉の側室。

父である浅井長政の追善がその目的だったそう。

淀殿は子の豊臣秀頼とともに大坂の陣で落命し、この地で菩提が弔われます。

その後焼失した際、再建したのは浅井長政のもうひとりの娘、つまり淀君の妹お江。

そのときお江は二代将軍徳川秀忠公正室に収まっていたので、豊臣側の淀君が弔われたこの場所は、徳川家の菩提所にもなります。

見学コースでは、こうした事実関係が披露され、浅井長政を起点に豊臣と徳川が融合した稀有な寺院であることが何度か強調されました。

 

 

またお江がこの寺院を再建する際、伏見城の戦いの際についた血染めの床をそのままの順番で天井板に使用したため、血天井もこのお寺の見どころのひとつ。

 

血天井見学時には、中央の頭上にある黒い血でかたどられた顔と手と刀らしき形が示され、

「これは自害した武将・鳥居元忠のもの、という”伝説”です」、と。

これはそれらしいものをたどることができる(それらしいものにに見える)一例にすぎないようです。

 

でも、黒い手形は2つ、まぎれもなく頭上にはっきり見えました。

血の海の中に手をついた跡が今も残っていること自体、なまなましいことこの上なく、

以前見た乃木大将の自邸の自害部屋にあった黒い小さな血の染みどころのスケールではありません。

自害した一族郎党は400人弱とのことでしたから。

 

 

 

 

この日は「の間」特別公開日でないのが残念でしたが、こちらの寺院は拝観日が限定的なので、

拝観日に当たっただけでもラッキーということで。

 

とにかく俵屋宗達が描いたという杉戸絵『唐獅子図』、『白象図』、『波に麒麟図』

さらに京狩野に属する狩野山楽の『椿図』襖が見られれて満足です。

(偶然ですが、本日受けた多摩美大の講義は、その弟子で養子の狩野山雪がテーマでした。)

 

 

養源院を訪れたきっかけは、最近見た京都観光案内番組でした。(たまたま見たので番組名失念。

時々見かける檀れいさんご出演のものではなかったけど。)

 

そのなかで養源院の白象が紹介され、

”狩野派が武家好みで代々画風を受け継ぐなか、宗達は個性を存分に発揮し自由闊達。

ボリューム感満載でその対象物は画面からはみだし、天空へと向かう・・・”

 

お寺のために直接描きつけたというその臨場感にもそそられて、

心は一気に京都に向かったのでした。

 

 

 

 

 

 

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