カナダ旅行記1 オーロラ狂騒曲
9月の下旬、オーロラを見にカナダへ行ってきました。行き先はイエローナイフです。 この旅行の計画は4月、フィンランド旅行から帰ってきた直後から始まりました。フィンランド旅行の目的も、一番はオーロラ鑑賞。幸い観測はできたものの、よく見えたのはほんの数分の瞬間芸。もう少しちゃんとオーロラを堪能したいと思い、帰国後すぐにリベンジを決めました。フィンランド旅行の反省 前回の旅行は行き先が初めて行くフィンランドで、長年の憧れの国。オーロラ観測以外にもやりたいことがたくさんありました。結果、気づけば別のこだわりを優先し、オーロラだけに注力しなかったのが、充分にオーロラを堪能できなかった原因の一つだと思います。 今回はその反省を踏まえ、オーロラを見るためにできるだけのことをしようと決めました。オーロラ鑑賞に最適な時期と場所を選び、オーロラ観測ツアーにも参加することにしました。前回のフィンランドでは宿の周辺で見ることにこだわり、ツアーに参加することをよしとしなかったのですが、宿泊しているロヴァニエミ付近だけ雲に覆われている、なんてこともあり、ツアーに参加していれば、と後悔したからです。フィンランドで見たオーロラ。狙い目はお彼岸 オーロラって、極寒の中で観測するイメージですが、実はオーロラが最も活発なのは真冬ではなく、春分・秋分付近です。春分・秋分は地球の磁極が太陽風の吹いてくる方向に対して垂直になり、地球の磁場が弱まるからです。 真冬のほうが夜が長いので、オーロラを観測できる時間は長いのですが、長い夜の間中ずっとオーロラが出るのを待ち続けるのは現実問題、難しい。オーロラツアーの催行時間を見ても一日あたりだいたい4時間が通り相場なので、完全に真っ暗な時間が22:00から2:00まで4時間ある春分・秋分でも夜の長さは充分と判断しました。実際には4時くらいまで十分暗かったです。 あと、秋や春は真冬よりも晴天率が高い。たとえばイエローナイフは9月には40パーセント以上の晴天率を誇りますが、11月には30パーセントを切ります(Weatherspark参照)。イエローナイフの9月の晴天率イエローナイフの11月の晴天率 それでもイエローナイフはかなり良いほう。北欧に至ってはひどいもので、フィンランドのラップランドなど、1月の晴天率は10パーセント台です。ロヴァニエミの1月の晴天率 いくら上空できれいなオーロラが出ていても、雲があっては地上から見られない。なので、秋分付近であることに加え、お天気が比較的良いという理由で時期を9月に決めました。 ちなみに、降水量と晴天率は必ずしも反比例するわけではないようです。東京は降水量が多いのに晴天率も高く、梅雨真っただ中の6月でも30パーセント弱、冬季に至っては70パーセントを超えます。わたしたちって、とてもお天気の良い国に住んでいるのですね。東京の晴天率イエローナイフを選んだわけ イエローナイフを行き先に選んだのは、以下の二つの理由からです。1.オーロラベルトのど真ん中に位置する2.晴天率が高い たとえば3月に行ったフィンランドのロヴァニエミは、一応オーロラベルトに乗ってはいますが、南端に近い。でもイエローナイフはオーロラベルトのど真ん中。それだけオーロラがはっきりと見える可能性が高いということになります。 他にオーロラベルトのど真ん中に乗っている場所は、アイスランドやノルウェーのトロムソなどです。アイスランドで見たオーロラ。 ちなみに各地の年間晴天率は以下の通りです。オーロラベルトの中では、イエローナイフの晴天率が群を抜いて高いのが分かります。イエローナイフ(カナダ)の晴天率ホワイトホース(カナダ)の晴天率フェアバンクス(アラスカ)の晴天率レイキャビク(アイスランド)の晴天率トロムソ(ノルウェー)の9月の晴天率キルナ(スウェーデン)の晴天率ロヴァニエミ(フィンランド)の晴天率イヴァロ(フィンランド)の晴天率 あと、イエローナイフは一番暗い時間帯が午前0時前後に来るのも魅力。 一番暗い時間帯が午前0時前後に来るって、狭い日本では当たり前、狭い北欧の国々でも当たり前ですが、アメリカやカナダは広大なため、タイムゾーンが東西に広く、場所によっては真夜中の時刻が極端にズレます。たとえばアラスカのフェアバンクスは午前1時が真夜中、ホワイトホースに至っては2時間ずれて午前2時頃に一番暗い時間が来ます。オーロラが一番よく見える時刻もそれだけずれこむことになります。 ガイドブックなどで時々「北欧は北米よりもオーロラが出る時間が早い」などという記述を目にしますが、そこで言う「北米」というのはホワイトホースやフェアバンクスの話で、イエローナイフは北欧や日本同様、午前0時を挟んだ前後数時間が最も暗い時間となります。イエローナイフは異常事態 さて、旅行を9月下旬のイエローナイフに定め、まだちょっと早いかな、と思いつつ、4月中旬には成田発カルガリー経由イエローナイフ行きの往復航空券を無事押さえました。 そしてお次は宿だと思い、Booking.comを開いたら・・・。 なんと!! ホテルの92パーセントがすでに売り切れというメッセージが!! 残っているのは極端に評価の悪いホテルのみ。 え? えっ?! どういうこと?! だってまだ半年近くも先の話なんですよ?! 慌てました。だって航空券はもう発券しちゃったから取り消せない。もし宿が取れなかったら一体どうすれば・・・。 幸いAirBnBはそこまで異常事態になってはおらず、無事好みの宿を予約することができましたが、まだ5か月以上前だというのにエアビーもかなり動いていて驚きました。 航空券は売り切れても、宿はどこかしら取れるのが普通。だからまずは航空券を押さえ、それから宿を決めるのが個人旅行の鉄則ですが、今年のイエローナイフはどうやら違うようです。 今年2025年はオーロラの当たり年。約11年周期の太陽の活動サイクルが極大期を迎える。だからわたしのように、今年オーロラを見に行きたい人は多い。 ・・・ということは今年、業者から見ると、オーロラ旅行は確実に儲かる美味しい猟場ということになります。 ここからは推測ですが、イエローナイフのホテルは旅行会社が早々にツアー用にあらかた押さえてしまったのではないでしょうか。 そして、ホテルが取れなかった人たちはエアビーに流れるので、エアビーも過熱気味。そういうことではないかと。 案の定、旅行直前にBooking.comをチェックしたら、満室だった人気ホテルにチラホラ空きが出ていました。きっとキャンセルが出たのでしょう。でも価格はとんでもなく高かったです。3つ星ホテルが一泊7万近くとか😱 いやはや、皆が行きたがる時に、皆が行きたがる場所へ行くというのはそういうことなんだなー、と勉強になりました。結局オーロラは見えたのか イエローナイフには8泊しました。「イエローナイフに3泊すると95%の確率でオーロラが見える」と言われていますが、わたしは天候運が極めて悪いほう(いわゆる雨女( ̄▽ ̄;))なので、長めの日程にしました。 で、その戦略が功を奏し、無事、満足のいくオーロラを鑑賞をすることができました。これを見たのは最後の夜。翌朝にはもうイエローナイフを発つという晩のことでした。 運よく素晴らしいオーロラで旅を締めくくることができましたが、それまでの一週間も、ほぼ毎晩なんらかのオーロラが見えてはいました。1日目到着便が遅れ、宿についたのは夜中の0時を回っていましたが、この日は強めのオーロラが出ており、宿からカーテン状のオーロラが見えました。あまり天候は良くありませんでしたが、カルガリーからイエローナイフに向かう飛行機の中や空港からも見えました。2日目ツアーに参加するも、この日は雨で、肉眼では全く何も見えず。でもガイドさんのカメラでは空が緑色に写っているとのことでした。ちなみにこの日のツアーは中国人向けで、ガイドさんは台湾人でしたが、中国語を話す参加者は一人もおらず、一組だけ西洋人、あとは全員日本人でした。GetYourGuideの一番人気オーロラツアーで、価格が他より安め、他のツアーでは送迎してもらえないオールドタウンのエアビーまで迎えに来てくれたのが有難かったです。3日目前日とは別の会社のツアー(日本人向け)に参加。Veltra経由で申し込みました。最初の数時間は何も見えませんでしたが、夜中の2時を回った最後の最後に活発に動くオーロラが出現し、みな拍手喝采でした。 とはいえ、ほんの数分、雲の切れ目からオーロラがユラユラしていた程度。「最後にブレイクアップが見られましたね!」というガイドさんの言葉に「え・・・、この程度を"ブレイクアップ(オーロラ爆発)"と呼んじゃう??」と内心思いました。むしろツアーが終了後、街中のホテルから宿まで歩いて帰る間に見たオーロラのほうがより印象的でした。空が晴れ、街の灯りをものともせず、くっきり見えました。4日目この日はツアーに参加せずオールドタウンの宿(ログキャビン)のポーチから鑑賞。部屋の中に待機し、15分に一度くらいのペースで玄関ポーチから空を確認していました。5日目この日も宿のポーチから鑑賞。薄く雲が出ていますが、全天にとぐろをまくオーロラが壮観でした。もっと広いところで見て見たくなり、徒歩一分のグレートスレーブ湖の湖畔へ。雲にさえぎられ、ちょっとまだら。6日目自分のログキャビンの背後から後光が差すようにオーロラが出現。この夜のオーロラは一晩中、強くなったり弱くなったりしながら、空のあちこちに移動しながら出ていました。7日目この日のオーロラは短時間でしたが、写真に撮ると初めてカラフルなオーロラに写ったのが印象的でした。 日が経つにつれ、見えるオーロラのレベルは徐々に上がって行きましたが、自分の要求水準がそれ以上に上がってしまい、最終日までは「もっとすごいオーロラが見たい。これは来春にまたリベンジか?」と思っていました。8日目そして迎えた最終日の8日目。この日はツアーに参加しましたが、もう空のどこを見てもオーロラでいっぱい! しかも一晩中出ていました!この真上からオーロラが降り注ぐ感じはオーロラベルト直下のイエローナイフならでは。車のフロントライト(下方)にも負けない極光。なんというか、もう、すごかったです。若い人たちがやっていたので、真似してみた^^ わたし、ちょっとブレてる(;^_^A川面に映る逆さオーロラ。 オーロラは、写真と肉眼でだいぶ印象が違い、実は肉眼ではこんなに色鮮やかには見えません。白っぽく、まだ何とかグリーンは見えますが、赤や紫には見えない。聞いた話では、肉眼でもカラフルに見えるのはよっぽど強いオーロラで、年に数回見られる程度なのだとか。写真に慣れすぎてしまうと、実際のオーロラにがっかりするかもしれません。 でも逆に、どっちを向いてもオーロラが出ている壮観さは写真では表現できない。肉眼でしか経験できない感動もありました。 あと、イエローナイフの夜空はオーロラが出ていなくてもすごくきれい。星の数に驚きました。空にはこんなにたくさんの星があるのかと。オーロラツアーの是非 わたしたちが泊ったログキャビンはダウンタウンから離れたオールドタウンにあり、玄関を一歩出ればオーロラを見ることができました。 でもツアーにも参加してよかったと思います。理由は主に以下の二つです。1.カメラの設定を教えてもらえた2.他の参加者の方と情報交換ができた カメラの設定に関しては、事前に本で読んでいったのですが、役に立ちませんでした。なぜならカメラマニア向けに書かれたものは、高価なレンズを持っていることが前提だからです。「F値2以下、焦点距離は20ミリ以内が望ましい」と言われても、そんなレンズ、高くて買えない(-_-;) 一方、ツアーで説明される設定は一般人向けで「F値3.5、シャッタースピードは20秒、ISO感度は1600から始めましょう。納得がいかない場合はそこを起点に少しずつ設定を変えていき、好みの設定を探しましょう」とのこと。カメラのスペックが現実的だったので助かりました。 実際にはスマホが活躍し、ここに上げた写真の8割はiPhone12で撮影したものです。ナイトモードで撮りました(シャッタースピードを最大に設定。10秒もしくは30秒)。 ちなみにツアー会社はたくさんあり、最初わたしはインスタグラムで毎日のように素晴らしいオーロラ写真をアップしていらっしゃるナヌックツアーさんのツアーに参加したかったのですが、日本出発前に問い合わせたら、9月は全て売り切れだということで諦めました。その話をツアーの他の参加者の方にしたら、「わたしも問い合わせました。一年前に埋まったそうです」ですと!! しょえぇぇぇぇぇ! 一年前!! やっぱり今年のイエローナイフは異常事態ですね・・・。 あと、オーロラツアー最大手のオーロラビレッジ。宿泊とセットになった数日間のプランしかなかったので、宿が先に決まっていたわたしは諦めたのですが、これも他の参加者の方から聞いた話では、「表には出ていないけれど、個別に問い合わせると、単発のツアー要望にも応えてくれる場合がある」そうです。 こうした耳より情報が聞けるので、ツアーに参加する意味は十分あると思います。 オーロラ鑑賞ツアーには大きく分けて二種類あります。1.拠点があり、そこで待機して鑑賞するツアー2.バスでオーロラを追跡するツアー 最初に申しこんだツアー(二日目)はバスで追跡するツアーでした。一か所に待機するより、積極的に雲の切れ目を探して移動するほうが観測確率が高いだろうと思ったのですが、暗ーいバス(オーロラ鑑賞を妨げないよう、灯りは基本消している)で一晩中あちこち移動するのは落ち着かず、ものすごく疲れました。 二回目に参加したツアー(三日目)はハイブリッド型で、拠点を持ちつつも、その拠点にこだわらず、どこかで見えそうという情報があれば、急遽そこへバスで向かう、というタイプでした。最初のツアーよりずっと楽で、拠点のロッジは明るくて広くて寛げたし、参加者同士、話ができました。ティピーが設置されているのもポイントが高かったです。 気に入ったので、その場で最終日のツアーの申し込みをしました。Aurora Wonderland & Becks Kennelsというツアー会社です。ここは他社よりツアー時間も長く(10時から3時まで5時間)、お得。オススメです。 8晩のうち、ツアーに参加したのが3晩、あとの5晩は宿から鑑賞しましたが、ちょうどよいバランスでした。ガイドブックなどには「イエローナイフはツアーに参加するのが前提」と書いてありますが、個人的には毎晩ツアーに参加する必要はないと感じました。宿からオーロラが普通に見えましたし、特にイエローナイフにたくさんある湖のほとりは暗くて鑑賞に最適。ツアーで暗いところへ行っても、人気のスポットは10台くらいのツアーバスがひっきりなしに出たり入ったりして、車のライトがむちゃくちゃ鑑賞の邪魔。むしろツアーよりも宿近くの暗い場所のほうが鑑賞に適していると感じたりもしました。今回の服装 セーター:ノーブランド ダウンジャケット:Uniqlo パンツ:Uniqlo(ヒートテック) 靴:アピタオリジナル バッグ:Lesportsac【色番】F332 マトラッセゴールド(Matelasse Gold)【型番】3356 ハーパーバッグ(Harper Bag) ツアーへ行ったときのコーデです。防寒対策に何かと荷物が多かったので、バッグは大き目のものを持っていきました。 9月下旬のイエローナイフは首都圏の12月くらいの気候でした。最高気温12度~15度、最低気温5度。滞在中、零下には一度も下がりませんでした。 -20度とか-40度になるという冬のイエローナイフでは普通の防寒着では間に合わず、特別な防寒着を借りる必要がありますが、まだこの季節は手持ちのダウンコートで十分。真夜中にオーロラを見るときに着ていました。昼間はウルトラライトダウンくらいがちょうどよい感じでした。防寒対策。あっ、耳当てを写すの忘れた! 次回は昼間のイエローナイフについて書きます。「イエローナイフは見どころがなく、昼間は何もすることがない」と言われますが、全くそんなことはなかったです。8泊してもやり残したことがあるくらい。昼間も楽しく、大忙しでした。