夏休み4日目、思い立つように8月4日、午後3時50分、八重洲駅前から
安房鴨川へ高速バスに揺られながら向かう。
通行料金が800円になったアクアラインを通るも、高額料金のときと変
わらず車の流れはほとんどなかった。
2時間近く乗っていると前方に鴨川到着を知らせる表示が目に入ってきた。
安房鴨川から、再びバスに10分ほど乗った山あいに大学はあった。
到着すると、教授は校舎を背景に颯爽とした出立ちで私を迎えてくれた。
校舎を出る女子大生の挨拶も清清しい。
大学の周囲や校舎の概容をレクチャーされる鴨川の教授。
日頃の講義の場面を、演壇に立って説明してくれるサービス振り。
鴨川の教授の熱い講義を受ける学生は幸せ者だ。
カフェテラスの雰囲気や、窓越の景色を見ていると、まるでリゾート地の
セミナーハウスにいるようであった。
屋上からから見る太平洋。先にロサンジェルスが見えるだろうと、うれし
そうに語る教授。
ここは「終の棲家だ」と、教育への情熱をあらわに示す教授。
確か、私より一足早く60歳を迎えた教授だが衰えは微塵も感じさせない。
夜は、ビールとワインで刺身を肴に語らい、酔いに任せてか教授は
自宅の奥さんはもとより、私の家内へも電話を入れる。
60前後の男同士は、今まで歩んできた自らの距離を計りながら、
いつしか眠りにつくのであった。
夜が明け、教授の手料理を頂きながら、おいしい朝食の時間を過ごす。
海側からの陽光は穏やかで、私は非日常感覚に陥っていたのだが、
教授には、これが日常だと思うと不思議な面持ちになってしまった。
何処に立つかで、同じ環境にあっても世界は違って見えてしまうのだ。
外に出て、浜辺を歩く。既に海水浴を済ませたのか浮き輪を抱えた老人
夫婦と幼子の連れとすれ違う。
海辺では波と戯れる父と子、その姿を目を細めながら遠巻きに眺める
若い母親、夏の休暇を満喫したかの表情を浮かべているように見えた。
教授は、「ウエルネスプロジェクト」の授業の一環として、農業実習を
学生とともに行い、グリーンツーリズムの体感や低農薬有機野菜を
作ることで、食物を作る喜びを理解させることに力を注いでいるという。
その収穫物のミニトマトとオクラを家内への土産として手渡してくれた。
今後は地産地消をビジネスシュミレーションするためにレストラン演習
やツアープランの作成、地元高校生との共同学習を更に推進していき
たいと取材された地元の新聞を示しながら抱負を語るのだった。
好漢「鴨川の大学教授」に幸あれ!!