8月5日、早朝の太海の海水浴場には若いファミリー一組に我々だけと
いう塩梅だった。遠く外房の海に目を向ける。穏やかな海の広がりが私
の心を落ち着けさせる。自然の持つ力なのか。人間の肉体は自然と同
化することで精神をも宇宙の一コマにさせてしまうのか。
教授は、太海の氏神である香指(かさし)神社へと導く。急な階段を上り
つめると、そこに古びた漁村の神社が奉られていた。
旧・太海村の村社である香指(かさし)神社の祭神はヤマトタケルの后で
ある「弟橘姫」(オトタチバナヒメ)。
東京湾一帯で信仰され、海に関係のあるを氏神を遠い昔に祀られ、村の
安泰を願ったという。
狛犬は伝武田石翁作。
境内は縄文時代の遺物を包蔵する浅い洞窟があり、香指神社遺跡と
呼ばれている。
また、境内からは太海の海岸、仁右衛門島が一望できる。
太海観光のハイライトといえる仁右衛門島は、太海海岸から200m沖合
いにある岩礁のような小島で、個人所有の有人島だそうだ。
1180年、石橋山の戦いに敗れた源頼朝が安房へ逃れた際に、島の住
民であった平野仁右衛門に助けられ、恩賞として島と沿岸の漁業権が与
えられたと伝えられているそうである。
島には手こぎ舟で渡るという。
海に立つ画家ゆかりの宿・江澤館
東映映画のトップシーンを思い出される、波高く外房の海。
早朝の一時だったが、今日も期末試験の採点業務を残しているにも
関わらず、教授は気持ちよく、太海海岸のガイドに時間を割いてくれた
のだった。
この後、教授のマンションに戻り、出支度を済ませてから、最寄りの
「太海」駅で教授に見送られた私は、内房線に乗り「安房鴨川」で外房
線に乗り換え、教授お薦めの勝浦の朝市へと向った。