この記事では、「天才的な漫画家にして詩人の久保帯人」の軌跡を簡潔に記述していく。

 

 

久保は1977年6月26日午前11時9分、広島県にて生誕。幼少期より絵が好きだった。1989年にジャンプを購読し始める。

高校の時に自分の将来の職業を何にしようか考え、「漫画家になろう」と決意する。

高校三年生の夏、久保は集英社にファンタジー漫画『FIRE IN THE SKY』を投稿(ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」の歌詞にも「FIRE IN THE SKY」というフレーズがある)。

この作品はジャンプの月例新人賞の最終選考に残ったが、漫画編集者の浅田貴典は久保の漫画家としての才能に気づく。

 

高校卒業後、広島市内にある穴吹デザイン専門学校に進学するも中退。

1996年にジャンプ増刊号にデビュー作『ULTRA UNHOLY HEARTED MACHINE』(読切)が載る。同年、ジャンプに読切作品『刻魔師 麗』が載る。

1997年、ジャンプに読切作品『BAD SHIELD UNITED』が載る。

ジャンプと契約してからほとんどネームを送らない生活を送っていたが、1999年に『ゾンビパウダー』の連載開始が決まり、久保は編集長に「まだちゃんと準備が出来てないから連載したくない」と言って、めちゃくちゃ怒られたという事件を起こしている。

 

2000年にゾンビパウダーの連載が終わった後、久保は読切作品『BLEACH』を描き、この読切作品がジャンプ増刊号に載る。

 

2000年ごろ、久保は黎明期のインターネットに早くも着目し、自分のサイトを制作する。しかし、誕生してから一年も経ってない黎明期の電子掲示板「2ちゃんねる」で炎上し、そのサイトは閉鎖に追い込まれる。その影響もあって、久保は2000年代後半になるまで一部のネット民から「苦勃起」や「厨房漫画家」などと呼ばれることもあった。

 

2001年ごろ、読切作品『BLEACH』の反応を受け、ジャンプ編集部はこの読切作品と同様のコンセプトの漫画をジャンプで連載させることを決定。

同年、連載漫画『BLEACH』の第1話がジャンプに掲載されたが、やがて『BLEACH』はアニメ化やミュージカル化がされるほどの人気作品となっていった。

2016年に『BLEACH』最終話がジャンプに掲載された際、実写化映画の公開が発表され、二年後の2018年7月に全国ロード・ショーされた。

 

2018年、ジャンプに読切作品『BURN THE WITCH』が載る。

2019年、ゲーム「新サクラ大戦」のメイン・キャラクターデザインを担当。

2020年、読切作品『BURN THE WITCH』がジャンプで短期連載されることが決まる。

 

〇収録

第四巻 p138~185

週刊少年ジャンプ平成8年(1997年)51号掲載

 

 

〇解説

★設定(p138

「B N S T R K 3」とは、「Bonus Track 3」という意味。「そのうち続編で読切をやりたい」と書いてあるが、BLEACH23巻にも「BAD SHIELD UNITED the 2nd」という名前の作品が登場する。

自律式戦闘用ロボット(通称シールド)は、もともと軍事用に開発されたものだったが、近年、民間への違法な払い下げが問題となっている。シールド・セイヴァーズ・カンパニー(SⅡC)は、違法な販売ルートの捜査と流出したシールドの鎮圧・回収を行う団体。

SⅡCのメンバーであるリッキーとミレは上司から「シールド不法売買を行うテロ組織(偉大なる南部の蛇)のボス、マディ・ラミレスを脅迫するために、彼の恋人である女シールドを誘拐せよ」と命じられる。

 

 

★p139

偉大なる南部の蛇のアジトに到着し、ボスの恋人の女シールド「レイチェル・ラミレス」を見つけるリッキーとミレ。

 

★p140

シールドと普通の人間を見分ける方法は一つあり、それは手の甲に「禁じられた心」のマークがあるかである。レイチェルの手にもそのマークがある。3コマ目は2コマ目でリッキーがもっているバッチを拡大(どアップ)したもの。

 

★p141

扉絵。レイチェルとリッキーとミレが描かれている。

 

p142

レイチェルが逃げ出す。

 

★p143

リッキーとミレはレイチェルに「俺達はSⅡCの者だ。だからおとなしく捕まれ」というが、レイチェルは「だまれ!知っているぞ」「民間に流出したシールドを強制的に回収している最低の組織だ」「どうせ わたしも捕まえてスクラップにするつもりだろ」と答える。リッキーは「そんなことしない」と説明するが、レイチェルは逃げ続ける。

 

★p144~147

レイチェルは逃げながら「わたしが捕まったらマディに迷惑がかかるということじゃないか!余計に捕まれるか!!」と叫ぶが、前をよく見てなかったため、崖から落ちてしまう。

 

★p148

よく見ると、リッキーとミレは手袋をはめている。二人は自己紹介し、「レイチェルを誘拐してマディを脅迫する」という目的をレイチェルに語った。

 

★p149~151

レイチェルはマディにメロメロで、「マディはテロリストだが、悪い奴じゃない」と力説する。レイチェルはPD-25型のシールドだが、マディに「レイチェル」という名前をもらったことを嬉しく思っている。リッキーはレイチェルの携帯を奪って、マディに電話をかけようとするが、逆にマディからこの携帯に電話がかかってきた。

 

★p152

リッキーはマディと通話を始め、マディはレイチェルが誘拐されたことを知る。

 

 

★p153~159

レイチェルはマディと電話したくて、強引にリッキーから携帯を奪い返す。

マディはレイチェルに「2時間前に新ルートでのシールドの売買契約が完了した」「これでお前のような旧型を無理にそばに置いておく必要もなくなった」と告げる。(新ルートとはp144のミレンコリン・ルートとは別のルートのこと。)

レイチェル「…いいんだ別に! わたしは気にしない!いずれこうなることは……その…わかってたことだし…な。運命というやつだ、ロボットの。…マディ…あの…さいごにひとつだけたのみがあるんだ…。―――いいか…?」

マディ「―――なんだ?」
レイチェル「…も…――もう一度だけ…。…"レイチェル"って呼んでくれないか……。…マ…マディ…?」

マディ「バカかおまえは?」

 

レイチェルはマディに見捨てられたことに絶望し、「残念だったな」「おまえたちの作戦は失敗だ…さっさとわたしをスクラップにしてチーフのご機嫌でもとるといい…」と言うが、リッキーは「だからスクラップにはしないって言ってるだろ?シールドの不法販売ルートを片っ端から潰して…ああいう奴がシールド持てないようにする…それがSⅡCの仕事なんだよ」という。リッキーとミレは手袋を外し、自分たちもシールドであることを伝える。

 

 

 

★p160

夜間、アジトのエリア内でマディは買ったばかりの新型のシールドと対面している。1コマ目をよく見ると、多くの兵士が見張りをしている。

 

★p161

マディはそのシールドのE(エモーショナル)システムを外す。

 

★p162~166

リッキーとミレが「シールド密売の強制捜査に来た」と宣言しながら、アジトに侵入し、ボス(マディ)を探す。多くの兵士はあっさりと倒せたが、新型のシールドは異様に戦闘力が高く、ミレは銃口を向けられる。そのとき、マディが現れる。

 

p167168

マディのシールドを「もの扱い」する話を聞き、自分の知り合いを思い出すリッキー。

 

p169

かつてリッキーはスクラップ工場で働いていた。リッキーには「レイチェル」という名の知り合い(女シールド)がいたが、その知り合いは「売却先がみつかった」とリッキーに話す。その知り合いは「武器工場の開発助手」として働くことが決まったとのこと。リッキーは「良かったな」とその知り合いに祝福する。

 

★p170~173

だが、実は彼女は武器の人体実験に使われていた。それを知ったリッキーはSⅡCへ入ることを直談判しに行く。上司(p144でリッキーとミレに命令を下していたチーフと同一人物)に「お前は何を守りたくてSⅡCに入る?」と訊かれ、「心だ」と答えたリッキーは入隊を許可される。

 

★p174~175

異様の戦闘力を誇る新型シールドに追い詰められるリッキー。だが、突然そのシールドが倒される。

後ろには銃をもったレイチェルが立っていた。

 

★p176~180

新型シールドが破壊され、レイチェルがマディを殺そうとするが、リッキーが「もういいぜ ここから俺らヨゴレ役の仕事だ」と言い、リッキーがマディを殺そうとする。マディは「お前らSⅡCだよな」「ほら欲しいのはこれだろ」と言いながらシールドの売買権利書を見せびらかす。

だが、リッキーは「いらねえよそんなもん」と言いながら、マディに殺すことを宣言する。マディは「丸腰の人間をシールドが殺すって人道的じゃないだろ?」と問うが、リッキーは「俺はロボットだから人道的とかそういうのよく分かんねえや」と言い、マディを斬り倒す。

 

★p181~183

リッキーはマディを殺せたと安心し、現場を立ち去ろうとする。だが、実はマディは瀕死ながらもかすかに生きており、リッキーらに銃口を向け、最期の力で発砲した。

だが、壊された新型シールドの銃が何故か銃弾を放ち、マディの胸に当たった。ただの暴発か否かは不明。

 

★p184

こないだテロ組織で無茶したからねと言うのは、「本来の仕事がシールド密売に関する強制捜査だったのにボスであるマディを殺してしまったこと」を指していると思われる。

 

★p185

レイチェルはSⅡCに入ることを決めたが、レイチェルはリッキーとミレを上官として希望した。

 

 

 

〇総評

レイチェルという名前の元ネタは1982年公開のSF映画『ブレードランナー』か。絵は前々作前作に比べて明らかに見やすくなっている。

「心を守る」というリッキーの発言はBLEACHでも引き継がれているテーマである。

本作では、「レイチェル・ラミレス」と「人体実験の犠牲になったレイチェル(リッキーの知り合い)」という二体のシールドが同じ名前(レイチェル)で呼ばれているので、混乱してしまう読者もいるかもしれない。

 

〇収録

第三巻 p148~193

週刊少年ジャンプ平成8年(1996年)36号掲載

 

 

〇解説

★設定(p148

主人公は麗(うらら)という16歳女性で、刻魔師(こくまし)という職業についている。

刻魔師は、自分の体に封紋という刺青を彫り、自らの肉体を触媒として「民に害をなす魔物」を封紋に封じ込め、自らの精神力によって有事の際に(封印された魔物を)使役する者たちであり、刺青召喚師(タトゥーサマナー)ともいう。

刻魔師は害をなす魔物から民を守ることで、民から謝礼を得ている。

一度封印された魔物を刻魔という。刻魔は、術者(刻魔師)の”気”のみが命をつなぐ糧(かて)となる。刻魔は刻魔師にコントロールされているので、民に害を及ぼすことはないが、それでも民は(合理的な理由ではなく感情的な理由で)刻魔を恐れている。

麗には、剣牂(けんそう)や響(きょう)などの刻魔がいる。

 

 

★p149

表紙。麗と剣牂が描かれている。1990年代の漫画同人誌を彷彿とさせる絵柄なように感じられる。久保は漫画同人誌の界隈で名をはせていた高河ゆんのファンだった。

 

 

p150157

冒頭に「時は未来 世は古代」とあるのは、「時代設定は(『刻魔師 麗』が発表された1990年代よりも)未来だが、舞台設定(俗にいう「世界観」)は古代に近い」という意味だろう。p150の2コマ目の「魔」は魔物という意味だと思われる。

麗は東劉(とうりゅう)という魔物を封じ込め、民を救っている。

東劉のキャラデザインを見て「ポケモンのイワークと少しだけ似ているかも」と感じた。ポケモンのアニメ放送が始まったのは1997年4月1日だが、原作となるゲーム「ポケットモンスター 赤・緑」の公開は1996年2月である。

p152で「東劉…」と呟いている魔物は東劉の兄貴である。

麗と剣牂は民を東劉から救ったにも拘らず、民は「人体とは明らかに異なる身体をしている剣牂」に怯えている。落ち込む剣牂を麗は「愛してるぜ」と言いながら抱きしめる。

 

 

★p158~161

剣牂は自分が麗に所属するようになった経緯を回想する。剣牂はもともと静紅という刻魔師に所属していたが、静紅は魔物に殺されてしまう。剣牂は魔物に立ち向かうも敗北し死にかけていたが、麗に救われたという過去を持つ。

 

 

★p162~163

麗は剣牂を封印させ、東劉を解封(封印空間から解き放つこと)する。麗は爺さん(辻頭虎斗斧)の家の中に入る。

 

 

★p164~165

爺さんは封紋を彫る職人。麗は爺さんに金銭を渡しているが、爺さんは「古びて今にも倒壊しそうなこの家」に愛着を持っており、建て直しに消極的である。

「カバチたれる(つべこべ言う)」は広島県の方言であり、久保は広島県出身である。

どうやら麗の背中には途中までしか彫られていない封紋があるらしく、その封紋を彫り上げてほしいと麗は爺さんに頼む。

 

なおp164の4コマ目における「サッサと コレ…彫り上げてくんねーと新しい刻魔(ヤツ)封印れ(いれ)らんねェんだよ」の「新しい刻魔」には2通りの解釈がある。

一つ目は東劉を指すという解釈で、二つ目は「麗が東劉の次に封印することになる刻魔」を指すという解釈である。

p167の4コマ目に「おぬしがさっき乗ってきた新しい刻魔」とあることから、一つ目の解釈を行う読者が多数派だろう。だが、麗は一度、東劉を右足の膝蓋骨あたりの封紋に封印している。

一つ目の解釈をしてしまうと、麗は右足の膝蓋骨あたりの封紋に東劉を封印することが既に可能となっているにも拘わらず、「背中の封紋を彫り上げてくんねーと新しい刻魔(ヤツ)封印れ(いれ)らんねェんだよ」と(爺さんに)述べていることになってしまう。

 

二つ目の解釈では、「新しい刻魔」は「麗が東劉の次に封印することになる刻魔」を指す。

つまり、麗は「たったいま東劉を封印したように、今後も封印しなきゃいけないような刻魔が現れるだろう。そのような事態に備えて『新しい刻魔』用の封紋を完成させなきゃいけない」と考えて、爺さんに背中の封紋の続きを彫ってもらっているということになる。

ネタバレとなるが、のちに麗は東劉の兄貴(霰座)を封印することとなる。

二つ目の解釈であれば「爺さんが背中の封紋を彫り上げていたお陰で、麗は霰座を(背中の封紋に)封印できた」となり、ストーリーの展開に矛盾や不自然さが生じない。

 

 

 

★p166

霰座が、爺さんの家の前で休んでいた東劉を発見する。

 

p167

解説を行ったり語尾が「じゃ」だったりと、ポケモンのオーキド博士を連想させるコマが多い。ただし、『刻魔師 麗』は1996年に発表された作品であり、ポケモンのアニメは当時まだ公開されていない。魚のスクリーントーンはゾンビパウダーでも使用されている。

因みに、霰座は氷魔という魔物であり、『BLEACH』の日番谷冬獅郎と類似した能力を有している。

 

 

★p168

1コマ目の麗の目を光らせる技法は、久保帯人作品でよく見られる。

「コンニチワ」とあるが、標準的な日本語表記をするならば「コンニチハ」となる。

カウパーとは性的興奮時に弱アルカリ性の粘液を出す副生殖腺「カウパー腺」のこと。

 

 

★p169

霰座の目には麗が「脳ミソスカスカ系の小娘」にしか見えなかったため、霰座は「麗に封印された」という東劉の話を信じることができず、東劉が自分を裏切ったと思いこむ。霰座は激怒し、東劉に対して「おんどれみたァなモン(オマエみたいな者)の生き死になんぞアウトオブ眼中やっ」と言い放つ。

 

 

★p170~173

霰座という名前を知った麗は霰座を封印しようとするが、麗と霰座の間に力の差がありすぎるようで霰座を封印できない。

麗が発している「封紋開口!開け 封ずるものの声!」「選択の双門 服従と死」「我が肉体の示す門をくぐれ!!」などといった台詞は、『BLEACH』でしばしば登場する詠唱を連想させる。

麗は「封印できないなら殺してしまえばいいんじゃない」と言って、「響」という魔弾(魔物の一種)を弾丸のようにして放つも、霰座はその攻撃をあっさりと防ぐ。p173で霰座の台詞の吹き出しが麗に矢印となって刺さっている。

 

 

★p174

霰座に「弱い」と言われてキレた麗は霰座を「包茎野郎」と罵倒する。

麗は剣牂を開放して霰座を倒そうとするが、爺さんが「今のお前には3体以上(の刻魔)を同時に実体化(体外に開放すること)させるのは体の負荷が大きすぎる」と言い、剣牂を開放するのを止めようとする。

それを聞いた霰座は「麗が東劉を殺せば、麗は体の負荷のことを気にせずに剣牂を開放できて、霰座と麗は正々堂々と戦えるじゃん」と提案する。

だが、東劉が死ぬのを避けたい麗は自分の体を限界まで使うことを決断し、剣牂を開放する(東劉が1体目で、響が2体目であるため、3体目となる剣牂を開放することは、3体以上を同時に実体化することを意味する)。

 

 

★p175~181

麗は剣牂に「霰座を封印するから、霰座の動きを止めてほしい」と言う。剣牂は麗の体力の限界を心配する。

 

★p182~187

剣牂は善戦するが、麗の“気”がもたなくなってしまい、追い詰められる。p184で、霰座は麗の所有物である刀を奪っている。しかし、麗は「響」の他にもう一体、魔弾を持っており、魔弾「鏨」(ざん)を発動する。霰座を倒した麗は霰座の封印に成功する。

 

★p188~189

封紋内亜結界(封印空間)で会話をする霰座と剣牂。剣牂によると、麗は一番当てやすい(刀を持った霰座の)手を狙わず、一番よけやすいところを狙って魔弾「鏨」を発射したのだという。そのような攻撃は霰座を余り傷害しないで済むというメリットが霰座にある一方で、麗自身にとってはメリットがない。しかし、麗は身寄りがないためなのか、「私達(魔物のこと。特に刻魔)」のことを何よりも大事にしてくれるのだという。

 

★p190~192

剣牂は(静紅という主を喪ったあと)麗に所属するようになった経緯を思い出しながら、麗への感謝や恩を霰座に伝える。それを聞いた霰座の顔は明るくなっていく。

「だから私はここにいる」はデジタルモンスターの名台詞「だから今、僕はここにいる」に似ている気がするけれど、多分これは気のせいだろう。

 

★p193

麗と霰座の戦闘で半ば倒壊している爺さんの家。爺さんは「どうあっても建て直せということ…らしいの」と気に入っていた古びた家を建て直すことにする。

爺さんは戦闘で疲弊した麗の頭を冷やしているが、麗は「へーき…もう一人にはならないよ」と寝言を呟いている。これは恐らくp191の回想シーンの続きであり、麗は剣牂に「へーき…もう一人にはならないよ」と語っていたのだろう。

最後のコマをよく見ると、麗の右腕に一つの封紋(刺青)が見えるが、p170の1コマ目にも同じ封紋がある。

 

 

 

〇総評

前作「ULTRA UNHOLY HEARTED MACHINE」よりもコメディ色が少し強くなっている。久保は2001年ごろに<その61 あなたにとっての「ヒーロー」もしくは「ヒロイン」を教えてください。 >と質問されて「ヒーローはジョン・ボン・ジョヴィ。ヒロインは道太貫麗。」と答えており、麗をかなり気に入っている様子。

 

 

〇追記

ネットで『刻魔師 麗』に関する資料が多数あったので、それらをnoteの記事にまとめた。

 

〇収録

第二巻 p144~179

週刊少年ジャンプ(赤マルジャンプ)増刊号1996年Summer Special掲載

 

 

〇解説

★設定(p144

この読切漫画の主人公のベインハルト・ロズナーは、凄腕のデリーター(抹殺屋。金銭さえ払えば人間や建造物や組織などを抹殺する犯罪者のこと)。ベインハルトにはかつて恋人がいたが、マフィアが5年前に密造したドラッグ「ウルトラ・ホーリー」でその恋人は死んでしまった。ベインハルトは、その恋人とよく似たアンドロイド(人間そっくりのロボット)「ティナティナ」とペアを組んでいて、ティナティナからは「べオ」と呼ばれている。

 

★p145

国家治安維持局の兵士たちがマフィアの廃人兵一人を射殺する。

 

 

★p146~149

・ロズナーが住んでいる国(以下「この国」と表記)から離れたコショウ連邦の海運がロズナーに「ただでさえメルカルド共和国の鉄鉱に押されててやばい」「あの海峡の賊を片付けてもらわないと…」と仕事の依頼をするが、「桁が二つ違う」と報酬が低いことを理由に一蹴される。

 

・すると、背後から「(桁を)二つと言わず三つ増やそう」と提案する男が現れる。ロズナーはその話に乗った。その男はp145で「オーケー」「完了だ」と言っていた人物。ティナティナは国家治安維持局を「国家の犬」と言うが、ロズナーは「惜しいね正解は政府の犬だ」という。ロズナーが住んでいる国(この国)の国家治安維持局は、この国の政府の言いなりになっているようだ。

 

 

p150

・マフィアの廃人兵は、合成麻薬「神の祝福」を服用されていた。この麻薬は「乱用者を命令実行能力のある廃人にさせる作用」がある。どうやら「組織のための兵隊を作る」ために開発された麻薬のようだ。

 

・ドラッグの説明のあいだ、ロズナーは「ウルトラ・ホーリー」という麻薬と車いすに乗った恋人を思い出す。

 

 

★p151

・国家治安維持局の男は報酬を三桁増やそうとするが、ロズナーは「一桁でいい」と答える。ロズナーによれば、「コショウ連邦の海運は麻薬のビジネスで大金を稼いでいる」のだという。コショウ連邦の海運が言っていた「あの海峡の賊」とは、「神の祝福」を開発したマフィアのことなのだろう。そして、その海運とそのマフィア(海峡の賊)は、麻薬のビジネスをめぐって争っていると考えられる。

 

・国家治安維持局からのオファーを受け、ロズナーはそのマフィアを倒すことにした。

 

・国家治安維持局の男から「ドラッグは嫌いか」「ポリシーか?」と訊かれたロズナーは「個人的感想だよ」と答える。

 

 

★p152

白い戦車に乗ってマフィアのアジトに向かうロズナーとティナティナ。2コマ目の矢印は、初期の久保が多用していた。ロズナーは「マフィアを合法的に潰す手段なんかいくらでもあるのに(国家治安維持局の親玉の)政府は何で わざわざ俺達に依頼したんだろ?」「それとも何か合法的にマフィアを潰せない理由でもあるのか?」と疑問に思う。ティナティナはプリンが大好物で、ロズナーに「あとでプリンやるぞ」と言われて元気を出す。

 

 

★p153~155

ティナティナはロズナーの有能な片腕として活躍しており、アジトの見張りの末端二人組をあっさりと倒した。見張りの末端は「たりーよな」「見張りなんてジャンキーにやらせればいいのに」と愚痴をこぼしていた。

 

 

★p156

ロズナーの恋人はティナという名前らしく、アンドロイド「ティナティナ」は今は既に亡くなっているティナの姿と記憶を受け継いでいる模様。もともと足が不自由だったティナは麻薬の売人に「足が治る」と騙されて麻薬「ウルトラ・ホーリー」に手を出してしまった。その結果、ティナは苦しみながら息を引き取ったという過去がある。

 

★p157~158

アジトからマフィアの末端兵士が応戦しに来るが、ロズナーらに圧倒される。

 

★p159

マフィアの黒幕が登場する。黒幕はサングラスをしている。

 

★p160~162

黒幕は抹殺屋(デリーター)の戦闘力の高さに焦る。黒幕はクラッカー(ここでは爆薬という意味)を用意させ、ロズナーの前に姿を見せることにする。p161で、ロズナーはドラッグという単語を口走った敵に怒りをぶちまけている。

 

★p163~165

黒幕は「自分の組織のメンバーだった女」をロズナーの前に見せつける。この女は合成麻薬「神の祝福」の製造目的を知り、脱走を試みたため、記念すべき兵士第一号にされる予定だったが、麻薬のバランスが合わず今じゃ一人で歩くことすらままならないと伝え、この女を人質のように扱う。ロズナーは車いす生活だったティナの姿を重ね合わせ、この女を救うため、黒幕にその女をよこすよう叫ぶ。

 

★p166~170

だが、その女には爆薬が仕掛けられていることをティナティナが察し、身を挺して爆薬からロズナーを守った。

つまり、その女は「クラッカー」であり、一連の黒幕の行動はロズナーを爆殺するための芝居だった。

ティナティナはその衝撃で足の装置に支障をきたしてしまう。

ティナがウルトラ・ホーリーに手を出したのは売人が「足を治せるよ」とティナを騙したから。

ロズナーは「あのときドラッグで生きている奴らなんて信じない」と決めたのに……と後悔する。

 

p171

ロズナーは黒幕を殺そうとするが、黒幕から「俺達(マフィア)が政府の依頼を受けてウルトラ・ホーリーを製造した」という衝撃の事実を聞かされる。

 

p172173

この国には「首相→政府→国家治安維持局」という命令系統が存在し、なんと政府はマフィアに麻薬を製造させていたという衝撃的な事実が明かされる。SV(ソリビジョン)とは立体テレビのこと。

 

★p174~176

黒幕はロズナーに「一緒に手を組んで政府に報復しないか」と提案するが、その提案をロズナーは拒む。

 

★p177

ロズナーが黒幕を射殺したのはp165の回想シーンのようにティナと同じセリフを聞きたくなかったからだと考えられる。

 

★p178~179

アジトを完全に破壊して、白い戦車に乗り込むロズナーとティナティナ。ロズナーは足が不自由だったティナのことを思い浮かべながら、「爆薬を庇って壊れてしまった足の部分は、すぐに歩けるようにしてやるよ」とティナティナに言う。二人は、二人だけで首相官邸と軍部を抹殺する計画を立てている模様。具体的な抹殺方法を考えるティナティナにロズナーはプリン食べないかと提案する。

 

 

〇総評

布石・伏線が山のようにあり、ストーリー展開が素晴らしい。しかし、良く読み込まないと、ストーリーが頭に入ってこないので、雑誌掲載時の読者アンケート人気は良くなかった可能性がある。

ただ、本作の「アンチ・ドラッグ」精神は強烈なメッセージ性を放っており、少年漫画でここまで踏み込んだ読切作品は少ないと思われ、本作は久保のユニークさを感じさせる。

 

 

 

〇タイトル

番外編「zombiepowdersnow」

第四巻 p68~71

 

〇分析

track24の続きという流れになっているが、track24ではガンマらは車で次の街まで移動するという様子だったのに、何故か「特急」というワードが出てくる。ガンマが奪った車は(オープンカー風に改造された)パトカーなので、流石にその車のまま次の街まで行くのはためらわれたのだろう。

 

・ウルフィーナがロスコ―と別れた4日後のこの番外編では、エミリオの年齢が17歳になっている。第二巻の人物紹介7 エミリオでは16歳とあり、また、track26でウルフィーナが「ガンマと会ってからまだ一月(ひとつき)しか経ってない」と言っていることから、ウルフィーナがロスコ―病院で入院していたのは一か月ほどの間だったとみられる。

 

・エルウッドの出身地のブルーノートでは雪が降らない模様。

〇タイトル

track for cut down / the nameless way

第四巻 p117~137

 

〇分析

★p117~119

ガンマやエンジェルたちはジェミニ研究所に到着し、ナズナと対面する。時刻は昼ころ。ジェミニ研究所はドーム状の建物であり、ジェミニの元ネタはジェミニ天文台だろう。どうやらガンマには「完真(ガンマ)」という漢字の名前があるらしい

 

★p120

扉絵。ZOMBIEPOWDERがLeet表記されている。ガンマは自分の頬の鎧を一時的に外しているが、頬の鎧の下は頭蓋骨になっている。

 

★p121~129

ガンマとナズナは深い親交がある様子。ナズナはエミリオを見て一瞬で、死者の指輪が体内に潜んでいると見破った。ナズナはウルフィーナが一年間、ナズナの実験体となることを条件に、エミリオから死者の指輪を摘出することにした。

 

★p130~132

ガンマは研究所のメイドがいる部屋からすぐの場所にいた。そこには十字架が立っており、ガンマは喪服のような黒色の服を着ている。手には花束がある。おそらく「タテナさん」という人物の墓なのだろう。

 

★p133~134

ウルフィーナがママに「エミリオの手術が始まったこと」を告げる。ママはtrack18(第三巻p8283)でも出てくる。最後のコマで、ナズナは手術(術式)で手に装着する用具を準備万端にしている。

 

★p135~137

時刻は夜になった。

ガンマとスミスが研究所を立ち去る。

スミス「決めたんだね」

ガンマ「ああ。信じてみることにしたのさ」「ここ(ジェミニ研究所)で立ち止まるか進むかは」「あいつ(エルウッド)が自分で決める」「俺と同じようにな」

(スミスはガンマを見つめる)

スミス「それじゃ僕たちは進もうか」

 

この会話の意味を考察する。ガンマはおそらく、「タテナさん」という知り合いと死別しており、「タテナさん」を蘇生させるためにゾンビパウダーを求めているのだろう。ガンマは、この地(ジェミニ研究所)で「(ゾンビパウダーを求めて)進むのか、それとも立ち止まるのか」の選択をしたと考えられる(ガンマが選択したのは「進む」というものだった)。「信じてみることにしたのさ」とあるが、ガンマは「エルウッドが戦闘力を磨いても殺人者にはならないかもしれない」という可能性を信じることにしたのだろう。一連のガンマのこの発言は、スミスの「…どうしてなんだい?キミは僕と違ってそこまで『戻れた』…それなのにどうして他の『人間』を信じてあげられないんだ…」(track25)という主張のアンサーになっている。ガンマは、ジェミニ研究所で寝ているエルウッドに「ゾンビパウダーを求める旅に進むか否かの選択」を自分で決めるよう託した。

 

 

★総評

和訳は「この名もなき道」というもので、登場人物(エルウッドなど)の今後の人生の暗喩だと感じた。track for cut downとは「削減(縮小)のためのtrack(回)」を意味しており、この最終回が打ち切りという作者にとって不本意な事情で描かれた回であることを読者に示唆している。

 

 

 

〇タイトル

track26 beLIEve.

第四巻 p96~115

 

〇分析

★p95

エンジェルはエルウッドに「あたしはガンマの愛人」と言う。

 

p96

ゾンビパウダーではなく「ゾンビパウダァ」と書いてあるが、これは久保の「極力ネイティヴの発音に近い表記を用いる」という方針による。powderのアクセントはpówderであり、ネイティヴの発音では「パウダァ」の方が「パウダー」よりも近い。久保はヴ行の発音の外来語はバ行の片仮名ではなくヴ行の片仮名で表記することが多い。ミルク瓶にはDIEとLIVEという相反する動詞が書かれている。伏字の意味は「どうして誰も私に(伏字)しないの?」という意味。

 

★p97~99

エルウッドがガンマと一緒に旅をしていると知り、驚くエンジェル。エンジェルは近くにガンマがいることを匂いで察してガンマのもとへジャンプする。p99の最後のコマをよく見ると、ガンマの靴が見える。

 

★p100

ガンマは滞在しているホテル(track25p75参照)の屋上で独り回想していた。回想シーンはtrack25の第四巻p83の続きだと思われる。

スミスはガンマに「どうして他の『人間』を信じてあげられないんだ?」「何のためにチェインアーツを習得したんだい?」「何のために鎧を打ち込んだんだい?」「『フェイレン』と訣別するためじゃなかったのかい?」と問うていた。ガンマは「わかってんだよ…そんなことは」と呟く。

 

『フェイレン』が具体的に何を指すのかは作中で明かされなかったが、個人的な考察を以下で述べる。おそらく、『フェイレン』は「非人(拼音:fēirén)」という中国語由来の用語である。その根拠は少なくとも四つある。一つ目は中国語の発音をカタカナで音写すると「フェイレン」となること。二つ目はp100のスミスの発言でこの単語が『人間』と対になる意味で使われていること。三つ目はp102で「非」とよく似た漢字らしき文字が見えること。四つ目は火輪斬術のようにガンマの武術が東洋由来であり、漢字圏であること。この四つが根拠である。

 

★p101~103

ウルフィーナが鍋とトライポッド・オヴ・ジャスティスを持ったまま、屋上への階段を上っている。ウルフィーナが屋上に着くと、ガンマが悪夢にうなされていた。この悪夢はp82で述べられていた「粘着質の夢」のことだろう。

 

★p104~108

ガンマが辛そうな様子で寝ていたことを気にするウルフィーナ。ウルフィーナは「ガンマと会ってからまだ一月(ひとつき)しか経ってないが、それでも毎日、顔を突き合わせているのだから、もっと自分のことを信用してほしい」と言う。

 

★p109~111

拗ねてしまったウルフィーナにトライポッド・オヴ・ジャスティスで攻撃されるガンマ。すると、エンジェルが突撃してきた。エンジェルの足にはエルウッドの姿が。(スミスの野郎 黙ってやがったな)とは、「エンジェルが薬を届けに来ることを」という意味だろう。

 

p112~115

エンジェルはチェインアーツを使ってガンマとスミスとエルウッドとウルフィーナとエミリオを一気にナズナのいるジェミニ研究所まで運ぶことにした。

 

 

★総評

このタイトルはBLEACH474話でも使われた。「believe(信じる)」という動詞の中に「lie(嘘をつく)」という動詞が含まれていることに着目した天才的なタイトル。このタイトルはスミスの「どうして他の『人間』を信じてあげられないんだ?」発言にかけている。

〇タイトル

track25 BADFINGER:BITCHANGEL

第四巻 p73~93

 

〇分析

★p73~74

スミスはナズナという博士(死者の指輪をエミリオから摘出できるとガンマが言っていたあの医師と同一人物)に電話で「ガンマの薬が残り少なくなってきた」ことを伝える。ナズナは「だろうな。10日ほど前にエンジェルをそちらに向かわせた」と答える。スミスは「エンジェルちゃんが?」と戸惑うが、ナズナは「あれは良くできた子だ」と答える。

 

p75

扉絵。ユニオンジャックのデザインに基づいて描かれている。ZOMBIEのMとPOWDERのWを重ねるというのは天才。髑髏と天使の羽のマークはエンジェルを意味している。番外編「zombiepowdersnow」の二日後、ガンマらはローディナント州という街に着いていた。

 

★p76~78

ウルフィーナは張り切って、手料理を作るが、それはゲテモノだった。(BLEACHの織姫でも似たシーンがあったな。)ガンマとスミスとエルウッドは我慢して、その手料理を食べることにするが、ガンマは不自然な動作を見せる。エルウッドとウルフィーナは(オーバーなリアクションを取ることによってウルフィーナの料理がゲテモノであることを暗示しているのだろう)と判断する。やがて、ガンマは食卓を離れていってしまう。スミスも一口食べてすぐにガンマの方へ向かって行ってしまった。ウルフィーナは周りから良い評価を受けられず、エルウッドに「くやしいよー」と泣きつく。

 

★p79

実は、ガンマは突発的に腕が勝手に動くようになってしまう体質だった。p74の「ガンマの薬」を使うことで、その異常を抑えることが出来る様子。「ガンマの薬」は注射で摂取するタイプのものな様子。

 

★p80

スミスは「博士に連絡取っておいたから心配(薬が足りなくなる心配)ないよ」と言う。ガンマの「どっちをだ」の「どっち」とはエルウッドとウルフィーナのこと。スミスは「あの子供(エルウッド)のことだよ」という。

 

p81

スミスは「ゾンビパウダーを手に入れるまでエルウッドを連れていくならもっと鍛えるべきだ」と言う。

 

p82~83

スミスは「…どうしてなんだい?キミは僕と違ってそこまで『戻れた』…」「それなのにどうして他の『人間』を信じてあげられないんだ…」「彼(エルウッド)は才能があるし実際どんどん強くなってる…だけど彼はキミとは違う『人間』なんだよ」「キミと『同じ』になるとは限らないじゃないか…」と諭す。

スミスは「もしゾンビパウダーを手に入れるまでエルウッドを連れていくのなら、もっとエルウッドを鍛えるべきだ。君はエルウッドを鍛えれば、エルウッドが以前の自分のように人間性を失って『人間』ではなくなってしまうと考えているのかもしれない。だが、エルウッドの戦闘力が向上しても、エルウッドが『人間性の欠片もない殺人者』になるとは限らない。エルウッドを死なせたくないのなら、戦闘力を徹底的に磨かせるべきではないのか」とガンマに問いかけている。

 

★p84~87

ガンマを探すエンジェル。エンジェルは路上の男性二人に失礼なことをしてしまう。エンジェルはその男性二人に舐めたような態度で接したため、さらに怒らせる。そのころエルウッドは路上を歩いていた。エルウッドはガンマの食卓での不自然な動作を思い出し、(またおれの知らないことかな)と物思いにふける。エルウッドは男性二人に囲まれているエンジェルを見て、エンジェルを助けようとする。

 

★p88

2コマ目でエンジェルが謎の笑みを浮かべているので、3コマ目のシュッは一瞬、エンジェルの攻撃に見えるが、実際はエルウッドの攻撃。

 

★p89~93

エルウッドは男性一人をあっさりと退散させる。エルウッドはエンジェルがガンマと知り合いであることに驚く。しばらくしてもう一人の男性がエルウッドに銃口を向けているのに気づいたエンジェルはエルウッドに「伏せて」と叫ぶ。エルウッドが瞬時にしゃがんだ後、エンジェルは超能力(実際はガンマの使うチェインアーツの一種)を使って銃口を向けていた男性を倒した。(サイキッカーとは超能力者のこと。)

 

★総評

タイトルは「悪の指、即ちビッチな天使」という意味。BADFINGERという同名のバンドに影響されたのかもしれない。

 

 

 

 

 

〇タイトル

track24 But still livin' under the Sky.

第四巻 p47~67

 

〇分析

p47

4コマ目には病床の三人が描かれている。左から、ガンマ、ウルフィーナ、エルウッドの順。

最後のコマでエルウッドはMARYと書かれた本を読んでいる。

 

★p48~49

「今日はウルフィーナが退院する日」というモノローグはおそらくエルウッドによるもの。

 

★p50

扉絵。ウルフィーナの服にはホルスタイン・デヴィルとある。意味は「乳牛の悪魔」。乳牛とあるのは、ウルフィーナが巨乳だからだろう。track19の扉絵でもウルフィーナには「地獄からのサンタクロース」と書いてあった。

 

★p51~53

ロスコ―はウルフィーナに車いすを餞別として贈る。track11(第二巻p68)で、ウルフィーナは「一年前くらい前に、この街(アルカンタラ)に来てから何度も、この街に死者の指輪があると聞いた」と言っており、番外編「zombiepowdersnow」でもエミリオが16歳から17歳になっていることから、ロスコ―の「君がこの街に来て2年か」発言はおそらく、君がこの街に来て1年か」の誤植。

 

★p54~56

ウルフィーナはロスコ―に感謝するが、ロスコ―は「私はエミリオくんの眠っている原因にさえ気付いてやれなかった…」「礼を言われるようなことは何もしていないよ」と言う。それに対してウルフィーナは「ええ…だから…ありがとうを」という。

 

「ええ…だから…ありがとうを」発言の真意について考察する。「ええ」とは、「エミリオの眠っている原因」が通常の医学では分かりようのないものだったということへの同意を意味している。「だから…ありがとうを」とは、エミリオの症状が「そのように通常の医学では太刀打ちできないような大変なもの」だったにも拘らず、ロスコ―がエミリオをケアし続けてくれたことへの感謝を意味しているのだろう。

 

ウルフィーナ「それじゃ…先生」

ロスコ―「ウルフィーナくん!」「…一度…」

ウルフィーナ「……?」「何ですか?先生」

ロスコ―「…いや…」「…また…」「…いつでも戻っておいで」

ウルフィーナ「はい!」

 

おそらくロスコ―は、最初は「…一度…戻ってきてくれないか」と言おうといていたのではないか。だが、ウルフィーナが自分のことを感謝し、信頼してくれていることを踏まえて、「…また…いつでも戻っておいで」と言ったのだろう。「…また…いつでも戻っておいで」と言うのは実は、かなり勇気がないと出来ない行為である。なぜなら、相手が自分のところに戻ることを内心、厭うているにも拘らず、そのような発言を相手にしてしまった場合、相手に不快感を与えてしまいかねないからだ。しかし、その台詞を聞いたウルフィーナは満面の笑みで「はい!」と答えた。

 

★p57~58

ロスコ―には妻と娘がいたが、病院にかまけてばかりいたロスコ―と妻は不仲になり、妻は娘を連れて実家に帰るために家を出てしまった。だが、実家に向かう途中で交通事故に遭い、二人とも亡くなってしまった。事故が起こったのは夏の終わりの嵐の晩だった。ウルフィーナがこの街に来たのも同じく、夏の終わりの嵐の晩だった。

 

★p59

ロスコ―の「…私は本当に」発言の続きは「医者失格だなあ」というものだろう。ロスコ―はガンマなくしてエミリオとウルフィーナを救えなかったことに責任を感じているようだ。そんな様子のロスコ―に看護師のユリノアは「大丈夫。ウルフィーナさんはきっと無事に帰ってきますよ」「だって今日はこんなに晴れているんですもの」と語りかける。この発言は「ウルフィーナがこの街に来たのが夏の終わりの嵐の晩だったこと」を踏まえているのだろう。「嵐の晩→不幸・不吉そうなイメージ」「晴天→明るいイメージ」というように、風景とキャラの感情を合わせるというのは心理描写で多用される技法である。

 

★p60

エルウッドがウルフィーナの退院祝いで花束を渡す。track11(第二巻p67)で出てきた花屋で買ったものだと考えられる。

 

★p61~66

ジョアンという警官が同僚数名とともに「ウルフィーナがこの街を出ていくこと」を知ってウルフィーナのもとにやって来る。ジョアンはウルフィーナに度々見舞いに来ていた。ガンマが空から降ってきて、パトカーを奪う。ガンマは次の町へ行くための車を狙うため、この街を徘徊していた。エルウッドは「鉄道を使えばいいじゃん」と言うが、ガンマは「俺は列車に乗ると寝ちゃう体質なんだよ」と放言する。ジョアンはやりたい放題のガンマにイライラするが、背後から現れたスミスに銃口を向けられ、驚く。スミスは銃弾を使うのを勿体ないと思ったらしく、手持ちのピストルの銃倉を使ってジョアン以外の警官を倒した。

 

★p67

ジョアンはウルフィーナとの別れを寂しく思うが、ウルフィーナの接吻で元気を取り戻す。ジョアンはスミスに気絶させられていた同僚の警官を起こす。

 

 

★総評

タイトルの意味は「でも、まだ空の下で生きている」という意味。「生きている」の主語は、ガンマ、スミス、エルウッド、ウルフィーナ、そしてエミリオなどの人物であろう。

track25で、ガンマら四名はローディナント州に移動している。ガンマやウルフィーナらは警官から奪ったパトカーに乗っているので、track24だけ読むと、「ガンマらは次の街にこのパトカーで移動したのかなと思える」が、番外編「zombiepowdersnow」(第四巻 p68~71)には「特急列車に乗ってたらガンマの寝過ごしが原因で北国に寄ることになった」とある。

ジャンプ掲載時は<ドライバー交代で一悶着!!ガンマ対スミス戦始まる!?次号『ナビ』!!>と煽り文が書かれていたとの情報があるが、単行本第四巻p47~67を読んだ限りでは、ドライバー(運転手)が変更になったという描写はない。track24が単行本に収録されるときに一部のページが修正されたか。

 

 

 

〇タイトル

track23 GageBreaker3

第四巻 p25~45

 

〇分析

★p25

エミリオとウルフィーナが乗っている先頭車両へ急ぐガンマ。

 

★p26

扉絵。よく見ると、スミスは本の上に銃を置いている。

 

★p27~31

ガンマはエミリオらの載っている列車が暴走していて、停車させられないことを知る。「エミリオらを降ろすにはこっちが飛び乗って引きずり落とすしかねえってことか」とガンマは考え、エミリオらの乗った車両に飛び乗る。p31のガンマの構図は、BLEACHの「助けに来たぜ」のシーンに似ている。ガンマは満身創痍のウルフィーナを見て、(ウルフィーナは体が不自由になっているせいでこの列車から降りることが出来ないのだろう)と考え、ウルフィーナとエミリオをおんぶして、車両から降ろそうとする。

 

★p32

この列車はアルカンタラに向かっており、このままではアルカンタラの住民が犠牲になってしまうと聞いたガンマは、ウルフィーナとエミリオを救うのと同時並行で、この暴走車両をストップさせることにする。

 

★p33~37

ガンマは技「火輪斬術雷戦段!!」「孤雷炮(こらいほう)!!」を発動し、暴走車両の動力機関を発見する。だが、その動力機関には銃が内蔵されており、銃口がガンマとウルフィーナとエミリオに向けられていく。

 

★p38~39

スミスはエルウッドよりも遥かに視力が良いと分かる。スミスは、ガンマが姉弟(ウルフィーナとエミリオ)を庇って16発も銃弾を受けていることを視認した。「(姉弟を庇うといった事情がなければ)ガンマが銃弾ごときで怪我をするはずがない」とスミスは語る。

 

★p40~45

スミスは走っている列車の車輪のビス(ねじ)を撃ち抜き、車両のスピードを落とすことに成功した。車両が傾き、ウルフィーナとエミリオが落下するが、エルウッドは二人をキャッチした。ガンマはサーカスのテントに車両をぶつけることで、車両を停止させることに成功した。

スミスは「コートの柄が派手になったね」と言って、ガンマが珍しく負傷していることをいじっている。

ガンマも「てめーのスーツこそ いつからそんな派手になった?」といじり返す。

 

★総評

GageBreakerとは「籠の破壊者」という意味で、ここで言う「籠」とはウルフィーナ(鳥籠のエヴァ―グリーン)を指すのだろう。track13「鳥籠のエヴァーグリーン」がGageBreaker1で、track18鳥籠のエヴァーグリーン×append selfdemonizer mix.」がGageBreaker2という立ち位置か。