本寺に当たる真如寺のように並木を成しているわけではないが、そのうちの1本は、庫裡(くり)の縁側からも見えて、秋には鮮やかな色彩を石灯籠と一緒に楽しむことができる。
ところがこのモミジ、斜めになった幹の上側が、根本から3mくらいまで黒く硬くなっていて、明らかにおかしいと思っていた。一部分を近くで見ると、こんな感じ。
今回の滞在中たまたま、近隣のお寺のご住職で、昔は植木職人同然のお仕事をなされていたという方が来訪され、この黒い部分は「死んでいるから、そのうち木全体が枯れてしまう」と教えて下さった。
そして、何とも驚いたことに、手にした剪定鋏を黒い部分の下にガシガシと突っ込んで割れ目を入れ、ムンズとつかむとベリッバリッと引きはがしてしまった。
見るとその下は、幹が腐敗してもはや土のようになっており、蟻か何かのタマゴがボロボロ出てくる。
「こういうのを全部引っぺがして土を掻き出すか洗い流してきれいにしてから、木の枝を切ったときに塗る薬を塗ってやらないと、木全体が枯れてしまうんだよ」
「えーと、人間でも、傷が膿んだり壊死したりしたときには、切開したり切除したりして、きれいに洗ったあと薬をつけて、包帯を巻くようなものですか?」
「うーん、まあそう言っても良いだろうな」
さあ大変。大好きな遊び場、もといテレワーク拠点なのに、大事なモミジが枯れてしまうなんて……。
「素人でもやればできるよ。いまの見てただろう? 薬はホームセンターなんかで売っているしね」
そうか、私がやっても良いんだ。よーし、老師がそう仰るならやってみよう!
物置小屋から脚立を引っ張り出してよじ登り、じっくりと観たり触ったりしてみると、黒い部分やその周りの「死んでいる部分」は、触ると乾いているし、コツコツ叩くと乾いた響きを出すので、「切除手術」をしなければならない部分は分かった。
だがしかし!
その「死んだ部分」は「生きている部分」と比べて硬いし、上の写真をよく見ればわかる通り「生きている部分」が縁に巻き付くような格好で、ほとんど融合している。
その「死んだ部分」は「生きている部分」と比べて硬いし、上の写真をよく見ればわかる通り「生きている部分」が縁に巻き付くような格好で、ほとんど融合している。
老師の真似をしても、ベリッと引きはがせたのはごく一部で、他は指も懸からないし、植木鋏を突っ込む余地もない。
これはノミとカナヅチで彫り出すしかないんだろうか???
そこでまず、自分の持っている道具を棚卸ししてみた。私の車には、いろんなものが積んであるので。(cf.やかんけんもん)
この作業に使えそうな道具というと(左から)、
・万能ノコギリ(ただし長め。繊細な作業にはあまり向かない)
・剪定鋏(これは、老師のが羨ましくて買ってしまったおニュー)
・百均で買った彫刻刀セット(細かい削り出しに使えるかも)
・ラジオペンチ型のプライヤー(色々すごく便利!)
・草の根を切る道具(名前は知らないけれど、ギザギザしたやつ)
・鍬や斧のクサビを調節するための軽い木槌(軽いのでたぶん役に立たない)
・鉄のヤスリ(ノミがわりになるかなぁ。あるいは削り落とすか)
・小さいナタ(たぶん役に立たない)
・切り出しナイフ(木や竹の加工には超便利)
・別件の作業(お遊び)中に、土に埋まっていたのを掘り当てて、色々役立てている錆びた鉄筋の切れ端
・剪定鋏(これは、老師のが羨ましくて買ってしまったおニュー)
・百均で買った彫刻刀セット(細かい削り出しに使えるかも)
・ラジオペンチ型のプライヤー(色々すごく便利!)
・草の根を切る道具(名前は知らないけれど、ギザギザしたやつ)
・鍬や斧のクサビを調節するための軽い木槌(軽いのでたぶん役に立たない)
・鉄のヤスリ(ノミがわりになるかなぁ。あるいは削り落とすか)
・小さいナタ(たぶん役に立たない)
・切り出しナイフ(木や竹の加工には超便利)
・別件の作業(お遊び)中に、土に埋まっていたのを掘り当てて、色々役立てている錆びた鉄筋の切れ端
こんなところかな。車の中の道具箱という制約があるから、全部小さい。なので、パワーはあんまりない。
ノミとカナヅチは、さすがに車載していない。家にならあるんだけれど。
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ここから先は、朝ご飯の前とか、昼休みとか、一息入れたとき(かなり頻繁)に、何日かかけてやってみたこと。
脚立の天板にとりあえず使えそうな道具を並べておいて、まずノコギリで、「生きている部分」よりも上にはみ出している「死んだ部分」に切れ目、というか刻み目をつけてから、切り出しナイフで少しずつ削ってみた。
あらら、「生きている部分」に傷をつけちゃった。手前の黄緑色の部分。
明らかに違うのがよく分かる。
「死んだ部分」は切ろうが削ろうが、材木と同じでどこまでいっても茶色(黒ずんでいる所も)のままなのに、「生きている部分」は傷つければ痛そうに見える。
黒い部分を削り落としたところで、削りくずを掻き出す。ここで、草の根切り(ギザギザ)が役に立った。
でも、人間の指に勝る便利な道具はない。
黒い部分の下も乾いた材木のような状態で、とても生きているようではない。
そこでさらにノコギリで刻みをつけて切り出しナイフで削るという、彫刻まがいのことをチマチマと続ける。
それにしても効率が悪い。ノミとカナヅチがあったらなぁ。
気分転換を兼ねて、庫裡の周りを物色して物置などを覗いていると……
おお、バール!
そして、これは何? 洗濯棒? 何だかよく分からないけれど、とくにかく重いので木槌の代わりになる!
削り屑を掃除するのに柄付きのタワシも動員。
始めてから何日目だったか、薄暗くなってしまった頃に、ついに大手術の完了!
老師のご指導を受けた直後に、ホームセンターで剪定鋏と一緒に買い込んだ薬品。
べっとりと塗りつけると、まるでセメントで固めたように見えたが、翌日には乾いて元の木肌色に。
これで、モミジを救えた! はず!!
さあ次は、ほとんど枯れてしまったように見える枝垂れ桜だ(cf.花鳥風月 私の「遊び場」)
この桜も、どうすれば生かすことができるか、ちゃっかり老師に教わってある。
必ず助けてあげるからね!