朝靄に 鈴の音細く 幽くも
頼りなるらむ 最上級生
各務由紀
【追記:かそけし(幽し)の漢字が間違っていました。謝罪して訂正いたします。】
早朝、金沢を発ち東へ向かった。
久しぶりの晴天の予報で、県境の山を越えた先の町は、朝モヤに包まれていた。
と、いつも開け放っている車の窓から、微かに「ちりーん……ちりーん……」鈴の音が流れ込んできた。
信号で止まっていると、正面の朝陽に輝く靄の中から、赤いジャージを着た数人の子どもの列が現れ出でた。
見回すと、そのような赤い塊がいくつかある。
そして耳を澄ませば、鈴の音も方々からしているようだ。
そうか、平日の朝、小学生の登校時刻だ。しかもこの靄。慎重に運転せねば。
赤いジャージと鈴。うまいこと考えたものだ。
その数人ずつの先頭に大きな子が立ち、先導している。
護送船団方式だな。
先頭の子は、ときどき後ろを振り返り振り返りしながら、下級生達がちゃんとついてきているか、確かめている。
なんとも心温まる情景であったが、信号が変わってしまい、私はそのまま街を走り抜けた。
胸の内にのみ残る、一幅の絵である。