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「ここはモミジが綺麗だけれど、お寺の方は毎日お掃除が大変でしょう」

 

 ご近所らしきご婦人二人連れが、通りがかりに声をかけてくる。

 

「いえいえ、私はたまたま今日来合わせただけですから」

 

 近くに駐めた車のナンバーを見て、
「あら川崎から? 縁もゆかりもないのに落ち葉掃きをしているの?」

 

「あー、竹箒が大好きなもので。それに、紅葉とお茶の御礼なんです」

 

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 昨日はかなりの雨、そして今朝は気温が下がって晴れ。となると、雲海が出るかもしれない。

 

 そう思い立って急遽休暇を取り、夜明けに間に合うよう君津の鹿野山九十九谷展望公園へ。

 

 ところが残念。今日は雲海どころか朝霧もほとんど立たず。
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 さてではどこへ行こう。ここしばらくご無沙汰しているあそこかな。

 

 行った先は木更津市、といっても東の外れで市原に近い所にある「真如寺」というお寺。

 

 着いてみると、一昨夜の風雨にもかかわらず、楓の紅葉がまだまだ盛り。すばらしい!
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 車の音を聞きつけて、ご住職の奥様がお出ましになる。

 

「写真を撮るなら、道端ばかりじゃなくて境内の中にも沢山モミジがありますよ」
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 大きな声で名を呼ばれ、本堂前へ行ってみると、お茶とリンゴ、それに大根と柚子のなますが並んでいる。

 

 この地の素晴らしさだの、古今の人々の暮らしぶりだの、さんざんおしゃべりをした後で、我慢しきれず、お願いした。

 

「道路の方の落ち葉を掃いてもいいですか?」

 

 拝借したまだ新しい大きな竹箒は、爽快なほどに落ち葉を集めてくれる。
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 そこへ通りかかったのが冒頭のご婦人方、という次第。

 

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「実は、縁もゆかりもあるんですよ」と答えてもよかった。話がややこしいので自粛したが。

 

 ひとつ。我が家の菩提寺(四谷)のご住職が兼務されているお寺が木更津にあり、この真如寺は、そのお寺の本寺に当たる。

 

 ゆえに私は、孫檀家か甥孫檀家くらいの関係になる。そんな言葉はないだろうが。

 

 そしてもう一つ。昨年亡くなった姉が授かった戒名の院号は「天寧院」。この真如寺の山号は「天寧山」。

 

 これが御縁でなくて何が所縁だろう。

 

 山のような楓の落ち葉と杉の枝葉を、奥様は次々と燃やしておいでになるので、あたりは霧の中のような景色に。
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 もうひと月たらずで冬至、しかもここは山の東側なので、日没も早い。

 

 寒くて暗いときには、焚き火が何よりのご馳走。杉の枝葉は良く燃える。
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 最後は熾火が灰になるまでつっつき回して、すっかり堪能いたしました。
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合掌