東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で「青児とパリの美術」を観た！

東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館で「青児とパリの美術～東郷青児のコレクションより～」を観てきました。

1921（大正10）年から1928（昭和3）年までフランスに滞在した東郷青児は、日本にパリの香りをもたらしました。しかし、青児が洋菓子の包装や雑貨に描いたイメージはお伽噺のように理想化されたものであり、戦後、二科会の海外展のために再び青児が訪れたパリは、経済成長や国際情勢の変化の中で大きく変わっていきました。収蔵品で構成するこの展覧会では、青児が現実のパリに対峙して制作した展覧会出品作と、私達の憧れに応えて作り上げた甘美なイメージの世界を比較展示ています。

僕の興味は、東郷青児のあのようなスタイルの絵がいつごろから出てきたのか、またあのスタイル以外の青児の作品はどんなものがあるのか、の2点でした。青児40歳前後の作品、「婦人像」や「紫」、つまり1936年、昭和11年にはあのスタイルが固まっていたんですね。戦前ですよ、これには驚きました。

そしてあのスタイル以外の作品、今回も僅かながら出ていましたが、2009年に出た「ジュニア版ブックレット」によると、18歳、19歳の作品、「コントラバスを弾く」や「パラソルさせる女」、そして「巴里の女」や「バンティミーユの女」がありました。フランスからの帰国後、30歳を過ぎた頃、「ピエロ」や「超現実派の散歩」は、1928年、29年の作品です。

1931年、34歳の頃から女性を描くことが多くなり、36歳の頃、東京火災（現・損保ジャパン）の印刷物に採用されます。そしてこれまた驚いたことに、1970年代に飛んで、絵具厚塗りの作品「古城」が突然変異のようにありました。「ラムセスの寵妃」は亡くなる1年前、青児79歳の作品です。

左：「コントラバスを弾く」1915（大正4）年右：「パラソルさせる女」1916（大正5）年

左：「巴里の女」1922（大正11）年右：「バンティミーユの女」1922（大正11）年

左：「ピエロ」1916（昭和元）年右：「蝶現実派の散歩」1929（昭和4）年

左：「婦人像」1936（昭和11）年右：「紫」1939（昭和14）年

左：「古城」1970（昭和45）年右：「ケナの少女」1973（昭和48）年

左：「望郷」1959（昭和34）年右：「ラムセスの寵妃」1976（昭和51）年

東郷青児とは、

東郷青児は、甘美な女性像で知られる洋画家です。1916年、19歳の時に、西洋の新しい美術を志向する日本の画家たちが集まっていた二科展で最高の二科賞を受賞。1921年から7年間フランスに留学しピカソらと交流しました。帰国後は二科展で活動しながら、滞仏経験を活かした文筆や壁画、挿絵、装丁で人気を博しました。戦後は二科会の国際交流を進め、1960年に日本芸術院会員、翌年二科会会長に就任しました。80歳で亡くなるまで洋画界に大きな足跡を残しました。

「青児とパリの美術東郷青児のコレクションより」

1921（大正10）年から1928（昭和3）年までフランスに滞在した東郷青児は、日本にパリの香りをもたらしました。しかし、青児が洋菓子の包装や雑貨に描いたイメージはお伽噺のように理想化されたものであり、戦後、二科会の海外交流展のために再び青児が訪れたパリは、経済や国際情勢の変化の中で大きく変わっていました。当館の収蔵品で構成する本展では、青児が私達の憧れに応えて装飾や印刷物の中に作り上げた甘美なイメージと、現実のパリに対峙した画家として制作した展覧会出品作とを比較展示します。

「東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館」

東郷青児―その人生と仕事―