損保ジャパン東郷青児美術館で「モーリス・ドニ」展を観た!
損保ジャパン東郷青児美術館で「モーリス・ドニ いのちの輝き、子どものいる風景」展を観てきました。
最近、ドニの作品をまとまって観たのは去年、2010年5月から8月にかけて国立新美術館で開催された「オルセー美術館展2010『ポスト印象派』」展でした。ちなみにドニの作品は10点も出されていました。ちょっとしつこいかもしれませんが、その題名を以下にあげておきます。「セザンヌ礼讃」「カルヴァリオの丘への道」「テラスの陽光」「ペロス=ギレックのレガッタ」「ミューズたち」「木々の中の行列(緑の木立)」「マレーヌ姫のメヌエット(ピアノの前のマルト)」「ランプの傍らの娘たち」「若い娘の寝室のためのパネル、9月の宵」「若い娘の寝室のためのパネル、10月の宵」。
なかでも大きく取り上げられたのは第3章セザンヌとセザンヌ主義の項、ナビ派の画家たちがセザンヌの静物画を囲んで集まる「セザンヌ礼讃」でした。そして第7章ナビ派の項、ヴュイヤベール、ボナール、ヴァロットン、セリュジエらと共に、ドニも取り上げられていました。ドニの代表作としてよく取り上げられる「ミューズたち」も、ひときわ光を放っていました。第8章内面への眼差しの項では、「マレーヌ姫のメヌエット(ピアノの前のマルト)」と「ランプの傍らの娘たち」が出されていました。マルトは言うまでもなくドニの奥さんです。第10章装飾の勝利の項では、「若い娘の寝室のためのパネル、9月の宵」と「若い娘の寝室のためのパネル、10月の宵」がヴュイヤベールやボナールと共に、最終章を飾っていました。
展覧会の構成は、以下の通りです。
序章 若き日のモーリス・ドニ
第1章 くつろぎのなかで
第2章 子どもの生活
第3章 家族の肖像
第4章 象徴としての子ども
今回は、タイトルが「モーリス・ドニ いのちの輝き、子どものいる風景」展、たしかに子どもや家族が主題であることは明らかです。しかし「オルセー・・・」を観た後で、僕は大いに期待して「ナビ派のドニ」を観に行ったのですが、その期待もなんとか半分満足した、といったところでした。期待はずれ、とまでは言いませんが、そういう意味ではドニの別の側面が観られたわけで、それでよしとすることにしました。ともすれば完成度がやや低い作品が多い中で、やはり圧巻はチラシにもなっている「家族の肖像」でしょう。三角形の安定した構図と、マルトの黒っぽい衣服を中心に、カラフルな色彩を廻りに配したものです。若き日のマルトを描いた「バラを持つマルト」という作品もあります。
ナビ派の中でもとくに理論家として知られるドニは、後に有名な絵画の定義を語っています。すなわち「絵画作品とは、裸婦とか、戦場の馬とか、その他何らかの逸話的なものである前に、本質的に、ある一定の秩序のもとに集められた色彩によって覆われた平坦な表面である」と。第4章以降、ドニは聖書あるいはローマ神話を主題にした作品を描くようになります。ナビ派を代表する画家であるドニの面目躍如です。「川から救い出されたモーセ」や「聖家族(ふたりの母)(1)」、そして「プリウレの窓辺の受胎告知」がそれです。サン=ジェルマン=アン=レ、プリウレの教会の内部装飾やステンドグラスの制作にも、ドニは関わっています。
序章 若き日のモーリス・ドニ
第1章 くつろぎのなかで
第2章 子どもの生活
第3章 家族の肖像
第4章 象徴としての子ども
「モーリス・ドニ いのちの輝き、子どものいる風景」
図録
監修:
モーリス・ドニ総目録編集室
クレール・ドニ(室長)
ファビエン・スタール(次長)
ピラー・サエーズ・ラカーヴ(研究員)
編集協力:
小川里枝
発行:
NHK
NHKプロモーション