Bunkamuraザ・ミュージアムで「山寺後藤美術館展　バルビゾンへの道」を観た！

Bunkamuraザ・ミュージアムで「山寺後藤美術館展　バルビゾンへの道」を観てきました。山寺後藤美術館の所蔵作品は、過去に二度、2008年3月に大丸ミュージアムで、そして2011年12月に山寺後藤美術館で観ることができました。

「山寺　後藤美術館」は、山形県河北町出身の実業家・後藤季次郎が長年にわって収集したヨーロッパ絵画のコレクションを核として、平成6年に山寺に開館したもので、フランスを中心とする17世紀から19世紀までの絵画コレクションはわが国有数なものです。ミレーの版画作品も多数所蔵しており、また、エミール・ガレやドーム兄弟などのガラス工芸作品も多数所蔵、展示しています。

「山寺後藤美術館」といえば、その目玉はというと、コローの「サン＝ニコラ＝レ＝ザラスの川辺」でしょう。一目観ただけでコローの作品だと分かるもので、今回もポスターやチラシにこの作品が使われています。1850年頃から、コローはロマンティックで、叙情的な風景画を多く描くようになります。画家として修業を始めてから50年目の1871年、コローは弟子とともにフランス北部バ＝ド＝カレ県のアラスを訪れて写生を行います。その際に描いた実景に基づいたのがこの作品です。サン＝ニコラ＝レ＝ザラスは場所の名で、「アラス近くのサン＝ニコラ」という意味です。

山寺後藤美術館では他にも、いわゆるバルビゾン派の画家たちの作品が収集されています。パリの南に位置する広大なフォンテーヌブローの森の中のバルビゾン村を制作の地とする、コローやミレー、ルソーらの作品で、今回も多数出品されていました。バルビゾン派の画家たちの中には、たとえばミレーのように、急速に力を蓄えた産業資本家の主導する社会の発展に抵抗感を抱き、農村や農民の暮らしを描くことでそれに対抗する価値観を提示しようとした画家もあったと、図録にあります。山梨県立美術館も同じようにバルビゾン派の画家の作品、特にミレーの作品を系統的に収集しています。

他にも観るべき作品は数多いのですが、山寺後藤美術館の蒐集された作品はいずれも観ていて「安心感」があるというか、流行の言葉で言えば「癒される」作品が多く、何度観ても“損はない”作品ばかりです。

展覧会の構成は、以下の通りです。

神話・聖書・文学

美しさと威厳

風景と日々の営み

静物―見つめる

「山寺・立石寺」方向を見る

「山寺後藤美術館」アプローチ

神話・聖書・文学

左：オノリオ・マリナーリ「シバの女王」右：パウル・エミール・ヤーコブス「ディアナ」1832年

左：エドワード・マシュー・ウォード「リア王とコーデリア」1857年右：ジャン＝ジャック・エンネル「荒地のマグダラのマリア」

美しさと威厳

左：ニコラ・ド・ラルジリエール「カトリーヌ・ギィモン・デュ・クードレイの肖像」1704年頃右：ジャン＝マルク・ナティエ（伝）「落ちついた青色の服」1746年

左：ウィリアム=アドルフ・ブーグロー「愛しの小鳥」1867年右：エティエンヌ・アドルフ・ピオ「花売りの娘」

ジョン・エヴァレット・ミレイ「クラリッサ」1887年

風景と日々の営み

左：ヤコブ・ファン・ロイスダール「小川と森の風景」右：ジャン＝バティスト・カミーユ・コロー「サン＝ニコラ＝レ＝ザラスの川辺」1872年

左：ナルシス・ヴィルジル・ディアス・ド・ラ・ペーニャ「フォンテーヌブローの森の小径」1871年右：アレクサンドル・ドフォー「鶏のいる風景」

静物―見つめる

左：アントワーヌ・ヴォロン「果物と18世紀マルセイユの陶製スープ鉢のある静物」1880年右：アンジェロ・マルティネッティ「鹿と猪のある静物」

「山寺後藤美術館コレクション展　バルビゾンへの道」
ヨーロッパ絵画の世界は実に幅広いもので、ひとつの時代にも、さまざまなスタイルやジャンルがあります。さらに時代の移り変わりとともに新たな潮流が次々と溢れ出て、その土壌をいっそう豊かなものにして来ました。山形市の山寺後藤美術館には、16世紀のバロック期から19世紀後半のバルビゾン派の風景画に至る、多様なヨーロッパ絵画が収蔵されています。同美術館より約70点が出品される本展では、16世紀から19世紀に至るヨーロッパ絵画の様式の変遷を辿りながら、古代の神話や聖書、文学作品などに基づく主題を展観していくことができます。そして、近代の入口に立ったバルビゾン派の画家たちが選択した、「風景」というモチーフの意味を問うことで、近代に向かって動き始めた時代の流れを捉えていきます。

「Bunkamuraザ・ミュージアム」ホームページ

「山寺後藤美術館」ホームページ

山寺　後藤美術館所蔵
「ヨーロッパ絵画名作展」