「ヴェネツィア絵画のきらめき」展を観る! | とんとん・にっき

「ヴェネツィア絵画のきらめき」展を観る!



渋谷・東急Bunkamuraのザ・ミュージアムで「ヴェネツィア絵画のきらめき」展を観てきました。ヴェネツィアは3度ほど行きましたが、2回目に行った1970年だったと思うのですが、街中にティツィアーノ展の垂れ幕が飾ってあり、驚いたことがありました。ぜひ見たいとは思っていたのですが、ヴェネツィアに宿泊した3日間のスケジュールが決まっていて、次の日はカルロ・スカルパの「ブリオン・ヴェガ」へ1日がかりで行くことが決まっていました。友人と二人、「ブリオン・ベガ」を見に行くために、サンタルチアの駅からトレビソという駅まで行く汽車に乗り込んだところ、前の席のうら若き女性がティツィアーノ展の図録を持っていました。片言の英語で、身振り手振り、その図録を見せてもらったことを思い出しました。



前の日は、やはりカルロ・スカルパの「クエリーニ・スタンパリア美術館」を一人で見に行ったところ、その日が日曜日で美術館は休館日、外観と入り口からのぞける範囲の写真を撮って、すごすごと引き下がりました。ヴェネツィアといえば、古い建築は別にして、建築をやっている者はカルロ・スカルパの作品を観る、ということになるわけです。サンマルコ広場に面した「オリベッティのショールーム」は小さいながらも、世界的に注目を集めた作品でした。その当時はのんびりと美術館を見て回るということはほとんどなく、なにしろ建築を見て回るのに精一杯でした。



今回の「ヴェネツィア絵画のきらめき」展には、クエリーニ・スタンパリア美術館からの作品が多かったのには驚きました。ヴェネツィアといえば、僕はティツィアーノかティントレットぐらいしか知りませんでしたが、1999年3月から6月にかけて国立西洋美術館で開催された「フィレンツェとヴェネツィア」展、これはエルミタージュ美術館所蔵イタリアルネサンス美術展となっていますが、素晴らしい展覧会でした。本棚を探してみたら出てきました、その時の図録が。



ヴェネツィアの盛期ルネサンスだけでも、ティツィアーノの作品は「教皇パウルス3世の肖像」「悔悛するマグダラのマリア」「十字架を背負うキリスト」などがありました。目玉はラファエッロの「聖家族(聖母子と髭のない聖ヨセフ)」でしたが、他にもヴェロネーゼやティントレットなど見応えのある作品はたくさんありました。まあ、僕がみても今回の「ヴェネツィア絵画のきらめき」展は、残念ながら作品の質・量ともに見劣りがする展覧会だったように思います。特に最後にあったカブリエル・ベッラの18作品の質は低く、他の作品とのバランスがとれていないように思いました。





今回の「ヴェネツィア絵画のきらめき」展では、やはりティツィアーノの「洗礼者聖ヨハネの首をもつサロメ」は、僕は素晴らしい作品だと思いましたが、同行した家人はサロメの顔が冷たくて嫌だといいます。ジャン・ベッティーノ・チニャローリの「聖母子」の方がイエスの肌はふっくらとして聖母マリアの顔は穏やかな表情であたたかいといいます。なるほど、そんな見方もあるんですね。ロザルバ・カッリエーラのふたつの作品、「タンバリンをもつ少女」と「弦楽器をもつ少年」は小さな作品ですが、パステル画だというのには驚きました。パステルであんなに(写真のように)表情豊かに描けるんですね。



フランチェスコ・モンティとジャンバッティスタ・ピットーニの作品は、油彩ですが、ほとんどモノトーンの鉛筆画かエッチングを思わせる、透視図の見本のような作品で精巧に綿密に描かれています。まるでボザールの透視図画のようです。入り口を入ると正面に掲げられていたのは、ジュゼッペ・ベルナルディーノ・ビゾンの作品「パラツォ・ドゥカーレに入るフランス大使ジェルジ伯、1726年11月4日」という長いタイトルの付いた巨大な、しかも写実的な絵です。ヴェネツィアを描いたヴェドゥータ、風景画です。ベルナルド・ベロットの作品、「サン・マルコ広場とブチントーロ」は、やはりヴェドゥータ(風景画)で、透視図法に従って描かれており、豪華絢爛な祝祭を忠実に記録した、画家はいわば「報道カメラマン」です。1970年に僕がヴェネツィアへ行ったときの画像も載せておきます。