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Kierkegaard

ふるふると少女のまつ毛が揺れる。

その黒い瞳に映るのは、漆黒の黒。

「蓮さま・・・」

「キョーコ、行こうか」

バサバサッ、黒い翼が空へ向けて広がる、キョーコは、蓮の腕(かいな)に抱かれ、江戸の上空高くを飛んでいる。

「久しぶりの夜の散歩だね」

蓮がのんき言います。

「あ、うんさまは?」

「私の胸で、お休みだよ。月が隠れいてる間は、しばらく、空の散歩を楽しもう」

「はい」

昔、月が二つ空に浮かんでいた。

二つの月と地球は、一緒に太陽の周りをまわっていたんだ。

「蓮さまは、本当は、どうされたいのですか?」

「あるがままに、なすがままにかな」

「蓮さまは、セツが帰ってくると約束されました」

「ああ、だから今夜、セツは帰ってくる」

まん丸い月が、雲間からのぞきます。

「行くよ」

「はい」

***

江戸城、中奥の将軍寝所で、鳥と少年は、最後の夢を見ていた。

柔らかで優しくて、夢のような世界の中に二人はいた。

何重にも張り巡らせた結界に、さらに強い結界を、彼はかけた、金の篭という。

ぐわーん、衝撃が二人を襲う。

見えない光が、彼の結界を切り裂いたのだ。

少年は、明り取りの格子戸を明け、空を見上げた。

黄金の獅子と白銀の狗が見えました。

「あ・うん?そうか、満月、その力を利用したのか」

少年は、再度結界を張ろうと試みます、ですが、見えない力に跳ね返されます。

「無理だよ、君の力では、もう修復できない」

少年の頭の中に、蓮姫の声がこだまします。

少年は振り返り、鳥さんを抱きしめました。

「嫌だ、嫌だ、嫌だ」

白い手が少年の額を優しく撫でます。

キュルル、鳥が優しくないました。

「大丈夫、俺は、君を離さない」

少年が笑むと、鳥さんも優しく笑った。

別れの時は、もうすぐ。

つづく その13