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その前の話 その1  その2

Kierkegaard

カイン君と蓮姫さまは、双子の兄弟である。

当時、双子は忌み嫌われていたので、お二人の父君であるお殿様は、弟君である蓮さまをお姫様としてお育てになりました。

カインさまは、上屋敷に、蓮さまは、下屋敷と離れて暮らしておりました。

お殿様は、二人に護衛を付けました、それが、同じく双子の姉妹である、キョーコとセツカでした。

仲の良い姉妹の縁で、カインと蓮は、離れて暮らしていても、幼き頃から頻繁に顔を合わせることとなりました。

「お前、生意気」

「君こそ」

何故か、会うたびにとっくみ合いの喧嘩をしてしまう兄弟だった。

「蓮姫さま!はしたのうございます」

「カイン君!相手は、姫さまです」

ま、でも、猫の兄弟のじゃれ合いみたいなもので、それほど深刻に考えるほどでもありませんでした。

セツカが消えるまでは。

Kierkegaard

春、薄紅色の桜が月夜の晩に鮮やかに浮かび上がります。

今宵、上屋敷では、華やかな桜の宴が催されていました。

下屋敷の蓮姫さまも、キョーコを誘って、裏門からこっそり忍び込んで、離れで酒盛りしていました。

下屋敷と違って、灘の酒があるのです。(蓮姫さまは、お酒が大好きなのである)

「キョーコもいける口だろう?飲まない」

「け、結構です。蓮さま、久しぶりなので、妹に挨拶したいのですが」

「いいよ、セツカもこっちに誘っておいで」

キョーコは、セツカの元へ急ぎました、離れから屋敷の奥とよばれる棟までは、結構ありますが、キョーコの足は軽く、空を駈けます。

キョーコは、胸元から小さい笛を取り出して、吹きました。

その笛は、現在の犬笛のようなもので、特殊な訓練をした忍びだけが聞こえる音をだします。

すぐに妹のセツカから、返事の音が聞こえました。

キョーコは、セツカの待つ桜の木を目指します。

「セツ・・・」

キョーコが見たのは、黒い大きなカラスが妹を抱え、飛び立とうとした瞬間でした。

キョーコは、棒手裏剣を投げたが、間に合いませんでした。

「セツカ!」

キョーコの声なき咆哮が、月夜にこだまします。

セツカが消えてからです、蓮姫さまを襲う賊が現れ、カイン君が弟に八つ当たりするようになったのは。

つづく その4