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Kierkegaard

昔、昔のことです。

ここは、江戸は、深川にあるとある大名の下屋敷でございます。

こちらの屋敷には、大名のご息女で巷では、大名息女番付では、横綱クラスくらいだと、評判のお姫さまがお住まいでした。

生まれたとき、蓮の花が見事だったために、蓮姫と名付けられました。

「いいなあ猫は、自由に歩けて」

にゃあと猫が返事します。

「俺も、早く自由の身になりたい。こんな重い着物は脱ぎ捨てたい」

そうです、お姫さまと育てられていますが、実は、男の子だったのです。

とある事情で、お姫さまとして育てられたのです。

びん、木の葉が揺れます、のんびりとした空気が殺気を伝え、蓮姫の目が妖しく光ります。

棒手裏剣が障子を通り抜け蓮姫さまの眉間を目指します、が、寸でのところで別の方向へ飛び、柱に突き刺さりました。

「ありがとう、キョーコ」

「追います」

「ほっといていいよ」

「でも」

「それより、長崎のカステラがあるから、一緒に食べよう?」

「はい」

蓮姫と護衛のキョーコは、蓮姫が点てた茶で南蛮のお菓子を頂きました。

「キョーコは、いくつになったの?」

「17になりました」

「そういえば頭領の決めた許嫁がいたよね、そろそろ、お嫁に行くの?」

「わかりません、尚は帰ってきませんから」

「ねえ、俺のお嫁さんにならない」

「蓮さまは、お姫さまです」

「俺は、男だよ。ごたごたが片付けば、自由の身になれる、君と一緒なら、町民になって一善飯屋を開くのもいいし」

「身分が違いすぎます、私は、野育ちですし、蓮さまは、いずれは大名になられる方です」

「ならないよ、君とずっと一緒がいい」

「蓮さまには、きれいなお姫さまが」

「しー」

蓮姫は、キョーコの手をとりそばに抱き寄せます。

「蓮さま」

「蓮だ」

衣擦れの音が部屋に響きます、蓮姫さまは、護衛のキョーコちゃんが大好きで、キョーコちゃんも蓮姫(蓮君)さまが大好きなのだ。

Kierkegaard

「姫さま、一大事です」

そこへ中老の椹が大声で駈けこんできました。

「何だ?ちっ、いいところだったのに」

「姫さま、昼間です、遠慮してください。それより、上屋敷から使者が参って、姫さまの縁談話を持ってきました」

「いつものように断れ」

「それが、恐れ多くも上さまからの御指図でして、断れないんですよ」

「ふーん、中屋敷や他の下屋敷の姉妹がいるだろう、それを身代わりにすればいい」

「姫さま、猪鹿蝶のご姉妹は、既に嫁がれています」

「断る手立てがないということか、どうせ、裏から手を回したのは、兄者だな」

「そのようですね、いかがいたします」

蓮姫は、しばし瞑目し、椹の耳に口を寄せ何やら伝えます。

「いいんですか?」

くすくす蓮姫は、妖しく笑みます、中老の椹も、護衛のキョーコも、その氷のような微笑と空気に凍りつきました。

つづく その2