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ご訪問ありがとうございます。
その前の話 その1 その2 その3 その4 その5
深川にある下屋敷に、美しい蒔絵を施した乗り物が、到着しました。
表門で、伺候の挨拶が交わされ、手順に従い、ゆるゆると門をくぐります。
「ようこそいらせまいられました」
「今日は、お招きありがとうございます。姫さまのお点前を楽しみにしておりました」
「おともの方は、こちらへ、冷たいものを用意しております」
「レイノさま、姫さまがお待ちです」
レイノは、案内に従い、中庭の茶室へ向かう。
手入れが丁寧に施された庭は美しかった、池の上にわたる石の橋、池を彩るのは、白や紅、蒼い蓮の花だった。
しばし庭を観賞したのち、亭主である蓮姫の準備が終わったのだろう、茶室へ向かう。
苔むした手水鉢で、レイノは手を洗うと、案内係の腰元がそっと布を渡した。
レイノは、その端正な顔(かんばせ)に見覚えがある気がした。
躙り口から、茶室に入る。
正面に見える床の間に、桔梗の花が飾られていた、掛け軸に目をやると、レイノは息をのんだ、薄墨で描かれた絵は、六条で茶室に不似合とされるものだった。
席に着いたレイノは、蓮姫の流れるような美しい所作に、魅せられた。
「結構なお点前でした」
「ありがとうございます」
レイノは、すっと蓮姫に近づくと手を取り、自分の胸元に引き寄せ、耳元で囁くようにして、問う。
「あなたの名を、教えてもらえますか?」
「まあ、御戯れを、蓮でございます」
「あなたは、蓮姫ではない。おのこよりも、そちの方が良い」
レイノは、姫を押し倒した、身動きできないように、姫の両手を掴み、両足は己の体重で固定した。
「茶室の作法では、ありませんね」
「黙って」
その時、天井から、いくつもの矢が降りてきた。
「む、ん、」
レイノは、殺気を感じ姫をだきしめ、壁にむかって転んだ、槍が畳に突き刺さっていた。
目を離した隙に、姫は、レイノの腕を潜り抜けた。
「一期一会です、レイノさま」
姫は、すっとその場から消えた。
「ほう、掛け軸の見立てか、くっくっ」
レイノが、茶室から表にでるまで、いくつかの仕掛けがあったが、難なくすり抜けた。
「案内いたします」
先ほどの腰元でした。
「あなたが、蓮姫ですね、美しい」
「お褒めにあずかり光栄です、姫は中にいらっしゃいます」
「二人の美しい姫にお会いできて、今日は、いい日だった。姫、婚礼の日を、楽しみにしています」
レイノは、案内は不要というばかりに、手をふりその場を立ち去りました。
「蓮さま」
「キョーコ、大丈夫?何もされていない」
「仕掛けのおかげで助かりました、手の早い若様ですね」
腰元に変装した蓮姫は、普段の姿に戻ったキョーコを抱きしめました。
「キョーコ、彼が、黒だと思う?」
「わかりません、彼が発する気は、妖しげですが、闇色のどす黒さはありません」
「そう」
カナカナと日暮が鳴いた。
つづく その7
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表門で、伺候の挨拶が交わされ、手順に従い、ゆるゆると門をくぐります。
「ようこそいらせまいられました」
「今日は、お招きありがとうございます。姫さまのお点前を楽しみにしておりました」
「おともの方は、こちらへ、冷たいものを用意しております」
「レイノさま、姫さまがお待ちです」
レイノは、案内に従い、中庭の茶室へ向かう。
手入れが丁寧に施された庭は美しかった、池の上にわたる石の橋、池を彩るのは、白や紅、蒼い蓮の花だった。
しばし庭を観賞したのち、亭主である蓮姫の準備が終わったのだろう、茶室へ向かう。
苔むした手水鉢で、レイノは手を洗うと、案内係の腰元がそっと布を渡した。
レイノは、その端正な顔(かんばせ)に見覚えがある気がした。
躙り口から、茶室に入る。
正面に見える床の間に、桔梗の花が飾られていた、掛け軸に目をやると、レイノは息をのんだ、薄墨で描かれた絵は、六条で茶室に不似合とされるものだった。
席に着いたレイノは、蓮姫の流れるような美しい所作に、魅せられた。
「結構なお点前でした」
「ありがとうございます」
レイノは、すっと蓮姫に近づくと手を取り、自分の胸元に引き寄せ、耳元で囁くようにして、問う。
「あなたの名を、教えてもらえますか?」
「まあ、御戯れを、蓮でございます」
「あなたは、蓮姫ではない。おのこよりも、そちの方が良い」
レイノは、姫を押し倒した、身動きできないように、姫の両手を掴み、両足は己の体重で固定した。
「茶室の作法では、ありませんね」
「黙って」
その時、天井から、いくつもの矢が降りてきた。
「む、ん、」
レイノは、殺気を感じ姫をだきしめ、壁にむかって転んだ、槍が畳に突き刺さっていた。
目を離した隙に、姫は、レイノの腕を潜り抜けた。
「一期一会です、レイノさま」
姫は、すっとその場から消えた。
「ほう、掛け軸の見立てか、くっくっ」
レイノが、茶室から表にでるまで、いくつかの仕掛けがあったが、難なくすり抜けた。
「案内いたします」
先ほどの腰元でした。
「あなたが、蓮姫ですね、美しい」
「お褒めにあずかり光栄です、姫は中にいらっしゃいます」
「二人の美しい姫にお会いできて、今日は、いい日だった。姫、婚礼の日を、楽しみにしています」
レイノは、案内は不要というばかりに、手をふりその場を立ち去りました。
「蓮さま」
「キョーコ、大丈夫?何もされていない」
「仕掛けのおかげで助かりました、手の早い若様ですね」
腰元に変装した蓮姫は、普段の姿に戻ったキョーコを抱きしめました。
「キョーコ、彼が、黒だと思う?」
「わかりません、彼が発する気は、妖しげですが、闇色のどす黒さはありません」
「そう」
カナカナと日暮が鳴いた。
つづく その7