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Kierkegaard

10年前、下屋敷邸内

殿さまの命で、一時帰京した蓮姫さまは、おひとりでした。

幼馴染のキョーコとセツカの姉妹は、一緒に江戸へ上ることは、叶わなかったのです。

「退屈だ」

真上に朔夜の月がある夜でした、お子様なのに、宵ぱりな姫(君)さまである。

ひらり、ひらり、黒い美しい大きな黒羽が落ちてきました。

姫さまは、そっと右手に受け止め、妖しの気配を感じます。

「これは、鞍馬の天狗さまとは違う」

姫さまは、真上を飛ぶ、黒い羽の人を見つめました。

姫さまと黒い羽の人の視線が交錯しました、そのとき、一陣の風が吹き、木の葉が渦巻きました。

『俺が視えるのか!』

姫さまの頭に、直接声が響きます。

「妖しには、慣れている、誰?」

『・・・』

「言いたくないなら、いいや。退屈なんだ、話し相手にならない?」

『・・・いい加減というか、豪胆なおのこだな』

「一期一会だ、せっかく会えたんだから、酒でも飲まないか?」

黒い大きな羽の人は、姫さまの元に降りてきました。

身の丈は、四寸五分(194cm)でしょうか、細身の鴉天狗でした。

蓮姫は、杯を渡しました。

「灘の酒だ、旨い」

自分の杯と相手の杯になみなみと、竹筒から酒を注ぎました。

『うまい』

「良かった」

Kierkegaard

姫さまと鴉天狗は、酒を酌み交わし、話をした。

外国(とつくに)から、じぱんぐへ愛しい娘を探しに来たのだと。

「君の想い人は、この日本(ひのもと)のどこかにいるの?」

『宣教師が、日本の王様への貢物だと言って、彼女を俺から引き離した』

「今生の生を終えれば、君の近くで転生するのでは?」

『俺たちのラビ(導師)が、ジパングにいると教えてくれた』

「会えるといいね」

『ありがとう』

黒い羽の人は、蓮姫に微笑を返し、彼女を探し、再び空へ飛んだ。

セツカが消えた時、その理由を知っているだけに、蓮姫は沈黙を通した。

だが、狗神は、何と言った?

セツカは、術をかけられていると、誰に?

つづく その8