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Kierkegaard

闇色の世界

彼は、憎悪した、全てを

そして囚われる

江戸城、将軍である彼は、まだ、数えで八歳だった。

「暗いよ、怖いよ」

泣いて叫ぶけど、乳母も、母も来ない。

「おいで」

誰かが、呼んだ。

優しい声だった、幼き彼は、その声に誘われるがままに、その声の方向に向かった。

白い手だった、その手は冷たくて、額を撫でられると、とても気持ちが良かった。

「気持ちいい」

「良かった」

白い顔したその女(ひと)が笑った、少年も笑った。

***

下屋敷は、七夕だったので、みんなでどぶさらいをした。

下屋敷といっても、それなりに下働きの人間も居住しているのだ、彼らにとっても、臨時収入になるのだ。

みなきりきり働いた、朝顔が朝露を含み、美しかった、そんな日である。

奥の蓮姫さまの室の前の廊下で、キョーコは狛犬と遊んでいた。

むくむくした仔犬は、かわいい、夏の暑さにもぐったりせず、彼らは元気だった。

「キョーコ、仔犬ばかりでなく、俺にもかまって」

「姫さま、言葉がおのこになってます」

「誰もいない」

「障子に、何とかですよ」

「この棟は、人払いしてあるから、大丈夫だよ」

「ダメです!妖しを使う者もいるのですから、油断大敵です」

「それこそ願ったりだ」

「蓮さま?」

ウスバカゲロウが二人のやり取りをみていました。

***

「どうして彼だけが・・・」

闇に囚われ、その能力を得た彼は、同じような境遇のものを探した。

見つけた、彼なら、でも、彼は、俺だけどうして。

壊せと、どうして、そんなに軽やかに笑っていられる、憎悪した。

だから・・・

つづく その9