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Kierkegaard
(手ブロで遊び過ぎて、昨日更新を忘れた)

蓮姫さまは、そろそろかなと思いました。

上屋敷からこっそりくすねた上物の肴と灘の酒を用意し、自室の前の縁に座り、杯を傾けながら、月を眺めていました。

ばさばさ、満月に黒い大きな鳥の影が浮かびます。

ふわり、黒い大きな鳥が、着地しました、木の葉の上の降りたはずなのに、葉を踏みしめる音は、しませんでした。

「坊主、お前が呼んだのか」

「セツは、元気?」

「・・・」

「どうぞ」

蓮姫は、彼に杯を渡すとなみなみと酒を注いだ。

鴉の人は、ぐいと一息で飲んだ。

「セツは、術をかけられている。君が探している少女とは違う」

「彼女は、差し出した俺の手を取った」

「術をかけられ、彼女の中に少女の魂がはいっているから」

「彼女の魂なら、俺のだ」

「術が解けたら、彼女は、セツになる」

「返せというのか?」

「本当の少女の躯と魂が、欲しくない?」

「どこにある」

「あっち」

蓮姫が、指をさしたのは、江戸城でした。

***

江戸城本丸御殿の中奥

障子から月光が差し込み、白い肌が浮かび上がる。

少年は、その白い肌に、胸に抱かれ満足していた。

冷たい手が額を撫でる。

Kierkegaard

「冷たくて、気持が良い」

白い少女が、笑みを浮かべ、また撫でます。

「僕の鳥さん、ずっと傍にいてね」

少年は、少女に体を預け、微睡ます。

ふすまを隔てた宿直(とのい)の元に、急ぎ足で知らせが届けられました。

鈴が鳴らされ、少年は、微睡を邪魔され不機嫌になります。

「何だ、側用人ではだめなのか」

「そのお方さまから、火急の用向きとかで」

「明日、謁見すると伝えろ」

「上さま!」

少年は、ふすま越しで申し伝えると、再び少女の腕に抱かれ眠りにつきました。

つづく (11)