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Kierkegaard

蓮姫さまが憂えているのは、鳥さんのことである。

鳥さんは、この日本(ひのもと)に連れてこられて、その羽の美しさから剥製にされ、とある大名家に納められました。

その城は、戦火に焼かれ、鳥さんも灰になりました。

珊瑚の産卵する夜、灰から一筋の光が、天を目指しました。

太平の世に、鳥さんは目覚めました。

虹の羽をもつ鳥さんは、恋しい夫(つま)を探します。

「見つけた、あなた」

大きなお城に住まう少年の元へ飛んでいきました。

闇の中に、もがいている光、鳥さんは優しく抱きしめました。

「会いたかった、あなた」

鳥さんと少年は、そのときから仲良く暮している、空を見上げ、街を見下ろし、海を眺めた。

少年は、城に結界を張った、鳥さんを逃がしたくなくて、誰にも見せたくなくて。

Kierkegaard

蓮姫は、過去視から戻ると、あ・うんを呼んだ。

キョーコに抱かれる二匹の狛犬は、ぴょーんと飛ぶと、くるりと反転し変化した。

おおきな獅子と狗が現れました。

「拙者らの出番でござるな」

「神の眷属である貴方たちでないと、あの結界は破れません」

「そなたでも無理なのか?」

「彼は、血がぎゅっと凝縮されてますからね。今晩は満月です、月の力を借りて、一気に開きましょう」

「うむ、今宵のためにしばし休むとするか」

お二方は、ちいさな文鎮に変化し、蓮姫は、やさしく握るとと懐にいれました。

「蓮さま、今夜なのですね」

「キョーコ、御庭番もいるから充分に注意してね。俺がいるから、安心かな」

「蓮さまも、行かれるのですか?」

「理由があるからね」

蓮姫は、文机に向かうと、紙にさらさらと書きつけると、鶴を折りました。

掌に載せた鶴をふっと吹くと、それは空高く飛んでゆきました。

「鴉の人への文ですか」

「ああ、キョーコ、セツは今晩帰ってくる。ずいぶん離れ離れになってすまない」

「蓮さまのせいでは、ありません」

蓮姫は、キョーコを抱き寄せました。

蓮姫は、「俺のせいなんだ、全部」、そう心の中でつぶやきました。

つづく その12