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Kierkegaard

江戸城、二ノ丸御殿

側用人である・・守が、将軍に拝謁していた。

「上さま、火急の要件であると伝えたにも拘らず、何故、昨夜お逢いなさらぬ」

「・・・」

「赤子である頃より、お仕えし私めのことを・・・」

「要件は、何だ」

「幕閣に連なる忠臣の御一方に、幕府へ叛意ありとの噂を耳にしまた」

「ふーん」

「ふーんって」

「誰?」

「・・の守であるクー殿でござる。上さまご媒酌による婚姻に、たばかりがありました」

「たばかりって?」

「蓮姫さまは、おのこでございます」

「噂でしょう?両家から、縁組に障りありと聞いていないし」

「上さま!」

「終わりだ」

将軍は、拝謁の許しも請わず、一方的に話す側用人が嫌いだった。

それに噂を流したのは、俺だ、それにしても、何故両家とも静観している?

将軍は、鳥を連れ、天守から江戸の町を望んだ。

「きれいだろう、あれが海だ、飛んでみる?」

鳥は、キュルと鳴いて、はばたくが、将軍の肩から飛び立とうとしなかった。

***

「蓮姫さま、大変です」

「どうした椹、何があった」

「江戸城内で、姫さまがおのこと噂になり、上様までお耳にされたと」

「あ、そう」

「あ、そうって」

「噂を立てた張本人が、耳にしたって大したことはない」

「な」

蓮姫さまは、池の鯉にエサを投げ入れました。

鯉が一尾跳ね、水しぶきが上がりました。

「この縁談を破談へと画策してましたのに」

「無理だよ、上さまの意地悪なんだから、破談になりやしないよ」

「上さまは、何故、姫さまがおのことお知りに」

「彼は、俺と同じで視えるからだろう」

ひゅん小刀が投げ入れられ、姫様の正面に飛んできます。

寸でのところでキョーコが止めました。

「おい、やっぱりお前がガンだ、セツをさっさ帰せ!」

蓮姫の兄君のカインさまです。

「もうすぐ帰ってくるよ」

「本当か?」

「ああ」

蓮姫さまは、空を見上げます、鳥さん、君はどうしたい?

つづく (11)