作品紹介 絵本『くじらのましゅう』第2版 | なかのたいとうの『童話的私生活』

作品紹介 絵本『くじらのましゅう』第2版

『くじらのましゅう』第2版

 

『くじらのましゅう』挿絵原画1より
©2011 Aki Kagami All Right Reserved.

 ぼくはましゅう。
 くじらだよ。
 ぷかぷかういて、すいすいおよいで、ざっぶーんとなみをたてて、おっきくてひろーいうみのなかをいつもひとりでおよいでる。
 ぼくはだれよりもおおきいんだよ。
 だからちっともさみしくなんかないんだ。
 ほんとだよ。

 でもね、ほんとはね、よる、おほしさまをながめていると、ときどきこうおもうことがあるんだ。
 ぼくのなかまはどこにいるんだろうって。

『くじらのましゅう』より

 


「このかいがらを、かみにして、おてがみをかこうよ。ぺんは、これだよ」
 そう、たこです。たこのすみで、じをかくのです。
「でも、ぼく、じをかけないの」
「まかせてよ。かわりにかいてあげる。さあ、ましゅう、なんてかく?」
「ありがとう、いるかさん!」
 ましゅうは、めをかがやかせて、よろこびました。

 ぼくね、ぼくね、あのね、はじめておてがみをかいたんだよ!
 ぼくとおともだちになってくださいって。
 こんど、おあいしましょうって。
 それでね、おてがみはね、いるかさんが、とどけてくれるんだって!

『くじらのましゅう』より

『くじらのましゅう』挿絵原画4より
©2011 Aki Kagami All Right Reserved.

 

『くじらのましゅう』の第2版の制作意図は2点あります。

ひとつは、9月21日(金)、22日(土)、23日(日)開催された THE TOKYO ART BOOK FAIR 2012に出展する作品のラインナップに加えること。

もうひとつは、絵を描いてくれた鏡 安希さんが妊娠出産を契機に作家名をakiから本名の鏡 安希に変えたということがあります。

この『くじらのましゅう』は、ぼくの代表作であり、今のスタイルで本を作る契機になった作品です。



今のスタイルとは、すなわち、ぼくがまずお話しを書き、絵はその作品のイメージに沿った絵が描けそうな方に描いてもらうというものです。

ぼくの選択は作家を選ぶ時点で終わっていますので、原則的として、あれこれと絵に関して細かな指定をすることはありません。

好きなように、好きなところに絵を描いてもらっています。

もともと『くじらのましゅう』は第23回 新美南吉童話賞に応募するために書き下ろされた、絵のないお話しだけのお話しでした。

『くじらのましゅう』の原稿には起稿日と脱稿日が以下のように記されています。

 起稿 平成二十三年八月三十日
 脱稿 平成二十三年九月十五日

このレベルのお話しにしては相当時間をかけて作っていますが、そのほとんどが、どうやって終わらせるかに費やされています。

新美南吉童話賞には原稿用紙7枚という規定があり、その短さではひとつの物語の中に閉じた世界を封じ込めるのが非常に難しいのです。

それに、ぼくは『くじらのましゅう』を幼年向きに作りましたので、使用した文字はすべて平仮名です。

加えて、ぼくはこの『くじらのましゅう』を童話賞に応募するために書いてはいますが、その後すぐに公開するつもりでしたので、本にしたとき見やすく読みやすくなるよう、改行空行を適宜入れ、レイアウトも含めた形で原稿を書いています。

文字数の制限は、かなり厳しい要件だったのです。

最終的に取った決断は、他のぼくのお話し同様、物語の世界を閉じないというものでした。

ぼくの理想は、どこまでも広がる、永遠に終わることのない世界の、はてしない物語です。

ですから、ぼくのお話しは本を閉じた後も物語が続きます。

読んでくれた方々の心の中に、永遠に、ずっと。

そういった願いを込めてぼくはお話しを書いています。




 でも、そのときはきます。
「ごきげんよう、くじらのぼっちゃん」
 それは、かもめでした。
「ましゅうというなまえのくじらをさがしているのですが、ごぞんじありませんか?」
「ぼくです」
「それは、よかった。では、めっせーじを」

 こんにちは、ましゅう。
 ぼくは、えどわーど。きみとおなじ、くじらです。きみのことは、いるかさんからちょくせつききました。なんでも、てがみをなくしたから、わざわざあいにきたとか。こんどおまつりがあります。くじらたちのおまつりです。よかったらきみも、きてみませんか。

「うわあ! いくよ! ぼくぜったいいく! ねえ、かもめさん! おまつりだって!」

 よかったね、ましゅう。

『くじらのましゅう』より

『くじらのましゅう』挿絵原画8より
©2011 Aki Kagami All Right Reserved.

 



『くじらのましゅう』第2版製本完了
 Kinko'sでの製本完了(右は『深海の鼓動』) 
『くじらのましゅう』第2版完成
 自宅で表紙を貼って完成 


 
『くじらのましゅう』表紙
第23回新美南吉童話賞応募作
絵本『くじらのましゅう』
2011年11月15日 初版発行
2012年9月21日 第2版発行
著者・発行者 なかのたいとう
絵  鏡安希(かがみあき)
印刷 杉本浩章
製本 Kinko's
制作部数30部
B5判縦書き22ページ[20字×10行]
1,800字/400字詰原稿用紙換算7枚
B5サイズ挿絵8枚
(C)2011 NAKANO TAITO & (C)2011 Aki Kagami

 


鏡安希プロフィール写真大
2008年女子美術大学 芸術学部 芸術学科 卒業 
2011年ドラードギャラリー「手のひらサイズのアート展」参加
ドラードギャラリー「WOMAN&GIRL展」参加
カナダ ルーファス・リン・ギャラリーにて作品展示
絵本「くじらのましゅう」絵担当
2012年ドラードギャラリー「小さな絵の大博覧会」参加
第16回日仏現代国際美術展 入選
ドラードギャラリー「第2回手のひらサイズのアート展」参加

優しい言葉で心が癒されるように、優しさがふわっと漂ってくるような、そんな絵を描けたらと思っています。

☆ブログはこちらになります☆
http://ameblo.jp/aki-oo00/

 

『くじらのましゅう』を書いたとき、幼年向きのお話しを書くのは、はじめてだったので、文字をどうしようかとあれこれ迷いました。

そして、いくつかの点を考慮して、漢字どころかカタカナの使用さえ控えることにしました。

じつは、ぼくのまわりにはカタカナが苦手な大人が何人かいます。

その多くは女性なのですが、彼女らの話しを聞くと子どものころからそうだったと言います。

ぼく自身そういうことはまったくないので若干半信半疑だったのですが、素直に彼女たちマイノリティの意見を取り入れることにしました。

するとそれは、結果的に平仮名が読めるすべての人に向けたお話しとなり、外国人を含む平仮名しか読めない人さえ対象として含むことになりました。

つまり日本語を理解するすべての人が対象になったということなのです。


 
朗読 くじらのましゅう
朗読『くじらのましゅう』
なかのたいとう 作 鏡安希 絵 我竜麻里子 朗読
2012年9月14日録音 7分23秒

 
そして今回、これまで何回か行ってきた朗読への取り組みを形にすべく、朗読CD(AUDIO BOOK)の制作も行いました。

目がみえない子どもたち、そして大人たちも、ぼくのお話しの対象読者です。

すべての人に文学を。

『くじらのましゅう』から広がる様々な取り組みには、そういったメッセージも込められています。


 
電子書籍版 くじらのましゅう(韓国語)
電子書籍版『くじらのましゅう』(韓国語版)
なかのたいとう 作 陸美株 訳 鏡安希

 
また『くじらのましゅう』は現在、韓国語、英語、スペイン語の翻訳を進めています。

タブレットとスマートフォン用の電子書籍として制作し、配信するためです。

ぼくは現在の電子書籍のあり方に疑問を持っています。

電子書籍だからこそできる、電子書籍のための電子書籍を。

それが、ぼくの電子書籍へ向けた思いです。




『くじらのましゅう』は7月に、声優のたまご 佐倉愛理によって朗読されています。


なかのたいとう作『くじらのましゅう
(朗読時間:約8分)
作:なかのたいとう 朗読: 佐倉愛理
2012.07.28@東京笹塚 namGallery
© 2011 NAKANO TAITO
 ぼくはましゅう。
 くじらだよ。
 ぷかぷかういて、すいすいおよいで、ざっぶーんとなみをたてて、おっきくてひろーいうみのなかをいつもひとりでおよいでる。
 ぼくはだれよりもおおきいんだよ。
 だからちっともさみしくなんかないんだ。
 ほんとだよ。





なかのたいとう童話の森 出版局


現在、以下の本がAmazon Kindleストアで販売中です。

Kindle PaperWhite / Kindle fire / Kindle fire HD / iPhone, iPod touch & iPad版Kindleアプリ / Android版Kindleアプリで、ご覧いただけます

 
また、2012年9月に開催されたTHE TOKYO ART BOOK FAIR 2012に向けて制作した本は、価格を改定した上で、在庫があるうちは販売を継続しています。

下記のお問い合わせ先にご連絡いただければ、折り返しご連絡いたします。
なかのたいとう童話連絡先
Book:
¥1,200
深海の鼓動』×ナオゲリータ[B5判 12ページ]
灰色の虹』 ×菅谷さやか[B5判 38ページ]
雪だるまのアルフレッド』×和華[B5判 42ページ]
オイディプスとスフィンクス』×相田木目[B5判 52ページ]
くじらのましゅう』×鏡安希[B5判 22ページ カラー挿絵8枚]
はりねずみのふぃりっぽ』 ×たぐちななえ[B5判 22ページ カラー挿絵7枚]
ねずみのらんす』×かわつゆうき[B5判 22ページ カラー挿絵8枚]
¥2,400
フローラの不思議な本』×鈴木匠子[B5判 211ページ カラー挿絵15枚]
ZINE:
無料
side by side 』×実鈴×小野祐佳
(『夜空の星と一輪の花』の朗読CD付き(朗読:我竜麻里子))
[A5判 オールカラー34ページ]
※本をお買い上げ頂いた方には無料で差し上げます
※送料分の切手(¥200)をご送付願えれば郵送いたします
Audio Book:
¥600
朗読『くじらのましゅう』×我竜麻里子 [オーディオCD 7分23秒]
朗読『はりねずみのふぃりっぽ』×我竜麻里子 [オーディオCD 7分56秒]
朗読『ねずみのらんす』×我竜麻里子 [オーディオCD 6分09秒]
朗読『雪だるまのアルフレッド』×我竜麻里子 [オーディオCD 53分04秒]
朗読『灰色の虹』×我竜麻里子 [オーディオCD 50分弱]
送料一律 ¥500(ただし1回で送れる量を超えた場合は別途ご相談)

 

なかのたいとう童話の森は、童話作家なかのたいとうの個人出版レーベルです。自作の出版の他、絵本、童話、児童小説を電子書籍で自費出版したいという方たちのための窓口として2013年に設けられました。初期コストをかけずに出版することは可能ですので、自作の電子書籍化をお考えの方はぜひご相談ください。


また、なかのたいとう童話の森は、電子書籍専門のインディーズブック出版レーベル 電書館 (http://denshokan.jp) に協賛しています。以下のタイトルが電書館より発売中です。
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