作品紹介 絵本『くじらのましゅう』第2版
| ぼくはましゅう。 くじらだよ。 ぷかぷかういて、すいすいおよいで、ざっぶーんとなみをたてて、おっきくてひろーいうみのなかをいつもひとりでおよいでる。 ぼくはだれよりもおおきいんだよ。 だからちっともさみしくなんかないんだ。 ほんとだよ。 でもね、ほんとはね、よる、おほしさまをながめていると、ときどきこうおもうことがあるんだ。 ぼくのなかまはどこにいるんだろうって。 『くじらのましゅう』より |
「このかいがらを、かみにして、おてがみをかこうよ。ぺんは、これだよ」 そう、たこです。たこのすみで、じをかくのです。 「でも、ぼく、じをかけないの」 「まかせてよ。かわりにかいてあげる。さあ、ましゅう、なんてかく?」 「ありがとう、いるかさん!」 ましゅうは、めをかがやかせて、よろこびました。 ぼくね、ぼくね、あのね、はじめておてがみをかいたんだよ! ぼくとおともだちになってくださいって。 こんど、おあいしましょうって。 それでね、おてがみはね、いるかさんが、とどけてくれるんだって! 『くじらのましゅう』より |
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『くじらのましゅう』の第2版の制作意図は2点あります。
ひとつは、9月21日(金)、22日(土)、23日(日)開催された THE TOKYO ART BOOK FAIR 2012に出展する作品のラインナップに加えること。
もうひとつは、絵を描いてくれた鏡 安希さんが妊娠出産を契機に作家名をakiから本名の鏡 安希に変えたということがあります。
この『くじらのましゅう』は、ぼくの代表作であり、今のスタイルで本を作る契機になった作品です。
今のスタイルとは、すなわち、ぼくがまずお話しを書き、絵はその作品のイメージに沿った絵が描けそうな方に描いてもらうというものです。
ぼくの選択は作家を選ぶ時点で終わっていますので、原則的として、あれこれと絵に関して細かな指定をすることはありません。
好きなように、好きなところに絵を描いてもらっています。
もともと『くじらのましゅう』は第23回 新美南吉童話賞に応募するために書き下ろされた、絵のないお話しだけのお話しでした。
『くじらのましゅう』の原稿には起稿日と脱稿日が以下のように記されています。
起稿 平成二十三年八月三十日
脱稿 平成二十三年九月十五日
このレベルのお話しにしては相当時間をかけて作っていますが、そのほとんどが、どうやって終わらせるかに費やされています。
新美南吉童話賞には原稿用紙7枚という規定があり、その短さではひとつの物語の中に閉じた世界を封じ込めるのが非常に難しいのです。
それに、ぼくは『くじらのましゅう』を幼年向きに作りましたので、使用した文字はすべて平仮名です。
加えて、ぼくはこの『くじらのましゅう』を童話賞に応募するために書いてはいますが、その後すぐに公開するつもりでしたので、本にしたとき見やすく読みやすくなるよう、改行空行を適宜入れ、レイアウトも含めた形で原稿を書いています。
文字数の制限は、かなり厳しい要件だったのです。
最終的に取った決断は、他のぼくのお話し同様、物語の世界を閉じないというものでした。
ぼくの理想は、どこまでも広がる、永遠に終わることのない世界の、はてしない物語です。
ですから、ぼくのお話しは本を閉じた後も物語が続きます。
読んでくれた方々の心の中に、永遠に、ずっと。
そういった願いを込めてぼくはお話しを書いています。
でも、そのときはきます。 「ごきげんよう、くじらのぼっちゃん」 それは、かもめでした。 「ましゅうというなまえのくじらをさがしているのですが、ごぞんじありませんか?」 「ぼくです」 「それは、よかった。では、めっせーじを」 こんにちは、ましゅう。 ぼくは、えどわーど。きみとおなじ、くじらです。きみのことは、いるかさんからちょくせつききました。なんでも、てがみをなくしたから、わざわざあいにきたとか。こんどおまつりがあります。くじらたちのおまつりです。よかったらきみも、きてみませんか。 「うわあ! いくよ! ぼくぜったいいく! ねえ、かもめさん! おまつりだって!」 よかったね、ましゅう。 『くじらのましゅう』より |
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『くじらのましゅう』を書いたとき、幼年向きのお話しを書くのは、はじめてだったので、文字をどうしようかとあれこれ迷いました。
そして、いくつかの点を考慮して、漢字どころかカタカナの使用さえ控えることにしました。
じつは、ぼくのまわりにはカタカナが苦手な大人が何人かいます。
その多くは女性なのですが、彼女らの話しを聞くと子どものころからそうだったと言います。
ぼく自身そういうことはまったくないので若干半信半疑だったのですが、素直に彼女たちマイノリティの意見を取り入れることにしました。
するとそれは、結果的に平仮名が読めるすべての人に向けたお話しとなり、外国人を含む平仮名しか読めない人さえ対象として含むことになりました。
つまり日本語を理解するすべての人が対象になったということなのです。
そして今回、これまで何回か行ってきた朗読への取り組みを形にすべく、朗読CD(AUDIO BOOK)の制作も行いました。
目がみえない子どもたち、そして大人たちも、ぼくのお話しの対象読者です。
すべての人に文学を。
『くじらのましゅう』から広がる様々な取り組みには、そういったメッセージも込められています。
また『くじらのましゅう』は現在、韓国語、英語、スペイン語の翻訳を進めています。
タブレットとスマートフォン用の電子書籍として制作し、配信するためです。
ぼくは現在の電子書籍のあり方に疑問を持っています。
電子書籍だからこそできる、電子書籍のための電子書籍を。
それが、ぼくの電子書籍へ向けた思いです。
『くじらのましゅう』は7月に、声優のたまご 佐倉愛理によって朗読されています。
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現在、以下の本がAmazon Kindleストアで販売中です。
るどるふ Kindle版 | こうもりおばさん Kindle版 | ねずみのらんす Kindle版 |
はりねずみのふぃりっぽ kindle版 | くじらのましゅう Kindle版 | 雪だるまのアルフレッド Kindle版 |
灰色の虹 Kindle版 | つぶっち Kindle版 |
Kindle PaperWhite / Kindle fire / Kindle fire HD / iPhone, iPod touch & iPad版Kindleアプリ / Android版Kindleアプリで、ご覧いただけます
また、2012年9月に開催されたTHE TOKYO ART BOOK FAIR 2012に向けて制作した本は、価格を改定した上で、在庫があるうちは販売を継続しています。
下記のお問い合わせ先にご連絡いただければ、折り返しご連絡いたします。
Book: | ||||||||||||||||
¥1,200
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ZINE: | ||||||||||||||||
無料
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Audio Book: | ||||||||||||||||
¥600
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送料一律 ¥500(ただし1回で送れる量を超えた場合は別途ご相談)
なかのたいとう童話の森は、童話作家なかのたいとうの個人出版レーベルです。自作の出版の他、絵本、童話、児童小説を電子書籍で自費出版したいという方たちのための窓口として2013年に設けられました。初期コストをかけずに出版することは可能ですので、自作の電子書籍化をお考えの方はぜひご相談ください。
また、なかのたいとう童話の森は、電子書籍専門のインディーズブック出版レーベル 電書館 (http://denshokan.jp) に協賛しています。以下のタイトルが電書館より発売中です。
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