作品紹介 絵本『はりねずみのふぃりっぽ』第2版 | なかのたいとうの『童話的私生活』

作品紹介 絵本『はりねずみのふぃりっぽ』第2版

『はりねずみのふぃりっぽ』第2版

 

 よるです。
「あのう、ふくろうさん、ぼくのこころをしりませんか?」
「ほほほ、おかしなことをきくものです。こころなら、ほら、ぼっちゃん、そこ。そこにあるじゃないですか」
 そういってふくろうがゆびさしたのは、そう、ふぃりっぽのむねです。
 ふぃりっぽは、むねにてをあてました。
「ないんです。どこかへいってしまったようなんです」
 ふぃりっぽは、ためいきをつきました。

 そうか、ふくろうさんも、しらないんだ。


『はりねずみのふぃりっぽ』より

『はりねずみのふぃりっぽ』挿絵原画1
©2012 Taguchi Nanae All Right Reserved.

 

『はりねずみのふぃりっぽ』は2012年10月16日から18日の、わずか3日間で書かれたお話しです。

原稿用紙7枚しかない小品で、前作『くじらのましゅう』、後作の『ねずみのらんす』と同じ規模のお話しになります。

『くじらのましゅう』同様、『はりねずみのふぃりっぽ』も、もともとは絵本として書かれたものではありません。

あくまでも文字だけのお話しとして書かれたものです。

そのため、昨今の絵本などと比べると、お話しとしての独立性が高いのが特徴です。

『はりねずみのふぃりっぽ』は、2012年2月、たぐちななえさんの挿絵をつけた初版を制作しています。



 


今回制作した第2版の一番大きな変更点は、表紙を変えたことです。

題字と二人の名前の大きさと位置を変え、『くじらのましゅう』と同じ紙を使って、表紙を触ったときの、ざらっとした手触りを再現させました。

『はりねずみのふぃりっぽ』初版では光沢紙を使っていましたので、その表紙は、なんとも味気ない、つるつるだったのです。

ですから印刷原稿データとして見たとき、ほとんど何も手を加えていないことになります。

中の字の大きさをちょっとだけ小さくして、微妙にレイアウトを調整しただけです。

ただ、今回も『くじらのましゅう』の後に制作しましたので、『くじらのましゅう』第2版で犯してしまった失敗は回避されています。

といいますか『はりねずみのふぃりっぽ』第2版のデータをいじっていたときに、『くじらのましゅう』第2版のレイアウトがおかしいことに気づいたというわけです。

とはいえ、そうした『はりねずみのふぃりっぽ』第2版も、印刷した後に奥付にミスがあることに気づき、後日刷り直してページを差し替えています。

なかなかトラブルフリーとはいかないものです。


『はりねずみのふぃりっぽ』第2版製本完了
 Kinko'sでの製本完了 
『はりねずみのふぃりっぽ』第2版完成
 自宅で表紙を貼って完成 


『はりねずみのふぃりっぽ』第2版表紙
絵本『はりねずみのふぃりっぽ』
2012年2月29日 初版発行
2012年9月21日 第2版発行
著者・発行者 なかのたいとう
絵  たぐちななえ
印刷 杉本浩章
製本 Kinko's
制作部数30部
B5判縦書き22ページ[25字×10行]
2,100字/400字詰原稿用紙換算7枚
B5サイズ挿絵7枚
(C)2012 NAKANO TAITO & (C)2012 Taguchi Nanae

 

たぐちななえプロフィール写真大
1976年 神奈川県生まれ。
この絵本に携わったことをきっかけに、2012年より絵や様々な作品づくりの活動をするため動きはじめました。
「ポジティブよりアクティブに生きたい」を目標にし、日々試行錯誤しながら歩いています。


☆ブログはこちらになります☆
http://ameblo.jp/tagtag778/

 



絵本『はりねずみのふぃりっぽ』には、あとがきがありませんので、これを第2版のあとがきにかえ、少し思うところを述べさせていただきたいと思います。

ただし『はりねずみのふぃりっぽ』が、なぜ制作されるに至ったかに関しては、初版の作品紹介に載せてありますので、そちらをご覧いただければと考えています。





夜の森で心を探すハリネズミのふぃりっぽ。

心の灯火であり、心の友でもある、ホタルのじじと一緒に、ふぃりっぽは暗い森の中を彷徨い歩きます。

おそらく、ふぃりっぽを端から見ている方は皆、ふぃりっぽがおかしなことを言っていると思うはずです。

自分の心がないと思っているのは、心を探している当のふぃりっぽだけだからです。

ふぃりっぽがとるどの行動にも、どの行動にも、私たちは彼の心の存在を見てとれるはずです。

それも、とても純粋純真で、やさしい、やさしい心です。

じつは、こうしたことは、人の世界を見渡したとき、よく見かけるものと言えるのではないでしょうか。

私たちの多くが、何かを求めています。

愛を、幸せを、豊かさを。

あるいはそれは、お金だったりするのかもしれませんが、お金にしても、愛同様、形のあるものではありませんから、まあ、似たようなものです。

形のないものは、目には見えません。

見えると言う方もいらっしゃるでしょうが、その目で見ているものの多くは、幻影であり、幻想なのではないでしょうか。

形のないものを見ることができるのは、唯一心の目だけです。

心の目が養われていなければ、愛も、幸せも、豊かさも、見えないということです。

そして、その一方で、心の目が養われていたなら、愛や、幸せや、豊かさが、どこにあるのか、それは一目瞭然なはずです。

すべては灯台もと暗し。

愛も、幸せも、豊かさもも、すぐ近くに、足もとにあるということです。

心を見失ってしまったふぃりっぽは、すれっからしの皮肉屋ばかりの森の中を、じじと二人、歩いてまわります。

そして暗い森を抜けたとき、ふぃりっぽは、はじめて、心がそこに、自分の胸の中に、ちゃんとあったということを知るのです。

心は決してなくなりません。

それは、どんなときても、そこに、胸の中にあるものなのです。


『はりねずみのふぃりっぽ』も、『くじらのましゅう』、『ねずみのらんす』同様、平仮名だけで書かれています。

それは、平仮名だけしか読めない人も、対象としているためです。

何もそれは子どもばかりではありません。

外国人も、あるいは何らかの事情によって平仮名しか読めなくなってしまった大人も、老人も、皆対象にしています。

すべての人に文学を。

そういうことです。

内容的には特にこの『はりねずみのふぃりっぽ』は哲学的で奥が深いため、子どもではわからないことが多々あるはずです。

でも大人なら分かるはず。

あるいは大人になって読み返したとき、きっと分かるはずです。

そういった願いを込めて、ぼくはこの『はりねずみのふぃりっぽ』を書いています。




『はりねずみのふぃりっぽ』は7月に、ナレーターの我竜麻里子によって朗読されています。


なかのたいとう作『はりねずみのふぃりっぽ』
(朗読時間:約8分)
作:なかのたいとう 朗読:我竜麻里子
2012.07.28@東京笹塚 namGallery
(C)2012 NAKANO TAITO
 よるです。
「あのう、ふくろうさん、ぼくのこころをしりませんか?」
「ほほほ、おかしなことをきくものです。こころなら、ほら、ぼっちゃん、そこ。そこにあるじゃないですか」
 そういってふくろうがゆびさしたのは、そう、ふぃりっぽのむねです。
 ふぃりっぽは、むねにてをあてました。
「ないんです。どこかへいってしまったようなんです」



『はりねずみのふぃりっぽ』には朗読CD(AUDIO BOOK)もあります。

朗読『はりねずみのふぃりっぽ』
朗読『はりねずみのふぃりっぽ』
なかのたいとう 作 たぐちななえ 絵 我竜麻里子 朗読
2012年9月12日録音 7分56秒




名刺 はりねずみのふぃりっぽ
名刺の裏『はりねずみのふぃりっぽ』(デザインはナオゲリータ



絵本『はりねずみのふぃりっぽ』第2版は、9月21日(金)、22日(土)、23日(日)の3日間に渡って開催された THE TOKYO ART BOOK FAIR 2012に出展する作品のひとつとして制作されました。

絵本『はりねずみのふぃりっぽ』第2版をはじめ、THE TOKYO ART BOOK FAIR 2012に向けて制作した本は、価格を改定した上で、在庫があるうちは販売を継続しています。






 
なかのたいとう童話の森 出版局


現在、以下の本がAmazon Kindleストアで販売中です。

Kindle PaperWhite / Kindle fire / Kindle fire HD / iPhone, iPod touch & iPad版Kindleアプリ / Android版Kindleアプリで、ご覧いただけます

 
また、2012年9月に開催されたTHE TOKYO ART BOOK FAIR 2012に向けて制作した本は、価格を改定した上で、在庫があるうちは販売を継続しています。

下記のお問い合わせ先にご連絡いただければ、折り返しご連絡いたします。
なかのたいとう童話連絡先
Book:
¥1,200
深海の鼓動』×ナオゲリータ[B5判 12ページ]
灰色の虹』 ×菅谷さやか[B5判 38ページ]
雪だるまのアルフレッド』×和華[B5判 42ページ]
オイディプスとスフィンクス』×相田木目[B5判 52ページ]
くじらのましゅう』×鏡安希[B5判 22ページ カラー挿絵8枚]
はりねずみのふぃりっぽ』 ×たぐちななえ[B5判 22ページ カラー挿絵7枚]
ねずみのらんす』×かわつゆうき[B5判 22ページ カラー挿絵8枚]
¥2,400
フローラの不思議な本』×鈴木匠子[B5判 211ページ カラー挿絵15枚]
ZINE:
無料
side by side 』×実鈴×小野祐佳
(『夜空の星と一輪の花』の朗読CD付き(朗読:我竜麻里子))
[A5判 オールカラー34ページ]
※本をお買い上げ頂いた方には無料で差し上げます
※送料分の切手(¥200)をご送付願えれば郵送いたします
Audio Book:
¥600
朗読『くじらのましゅう』×我竜麻里子 [オーディオCD 7分23秒]
朗読『はりねずみのふぃりっぽ』×我竜麻里子 [オーディオCD 7分56秒]
朗読『ねずみのらんす』×我竜麻里子 [オーディオCD 6分09秒]
朗読『雪だるまのアルフレッド』×我竜麻里子 [オーディオCD 53分04秒]
朗読『灰色の虹』×我竜麻里子 [オーディオCD 50分弱]
送料一律 ¥500(ただし1回で送れる量を超えた場合は別途ご相談)

 

なかのたいとう童話の森は、童話作家なかのたいとうの個人出版レーベルです。自作の出版の他、絵本、童話、児童小説を電子書籍で自費出版したいという方たちのための窓口として2013年に設けられました。初期コストをかけずに出版することは可能ですので、自作の電子書籍化をお考えの方はぜひご相談ください。


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