※北海道はでっかいどう⑧
※北海道はでっかいどう⑨
※北海道はでっかいどう１３
※登場人物
・井口達也(バカ・北海道へ向けて配達中)
・大関(友人・トラック運ちゃん)
・咲(サービスエリアで出会った徘徊女)
・信永(友人・何でも屋)
・黒田(依頼物の受取人ａｔ北海道)
・依頼主(信永にブツの運びを依頼)
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ーーーーー本編ここからーーーーー
「何やってんだテメェ！」
不良たちは叫びながら咲に駆け寄った。
おそらく咲に蹴られていた車の持ち主であろう男が、咲の髪の毛を鷲掴みにして、咲を後ろに引きずり倒した。
至極当然の流れだった。
自分の車を意味もわからず、狂ったように蹴られたらそうするだろう。
俺と大関も駆け寄ったが、男たちが咲に追撃しなかったので咲を救出するのをためらった。
大関が男たちをかきわけて咲を立たせると、大関もまた男たちと同じ事を言った。
「何やってんだよお前…」
すると咲はニコリと笑った。
そして、油断した大関の手を振り払ってまた車に近づいて蹴り飛ばした。
ダメだ。
事情はわからないが、咲に変なスイッチが入ってしまっているのは確かだ。
俺も大関と一緒に咲を止めようと咲に駆け寄った。
二人で車から引き離し、大関が咲を羽交い締めにした。
羽交い締めにされた咲は、ふうと息をつき、少し落ち着きを取り戻したようだ。
この男も、少し落ち着きを取り戻しているようだ。
ついさっき咲の髪を鷲掴みにして転ばせた雰囲気はなかった。
どうやら穏便に済みそうだ。
男は「何考えてんだコラ。ただで済むと思うなよコラ」と言った。
落ち着いた口調だった。
しかし、咲がニヤけた顔をした瞬間、男は咲の口をふさぐように手で鷲掴みにした。
なんだこのキレ合戦は。
「まぁまぁ、落ち着いてくれよ」俺が言った。
「あ？落ち着けるわけねーだろ」男が言い返した。
その通りだ。
「弁償しろ」男が付け加えた。
その通りだ。
気まづい雰囲気。
すると大関が咲にかわって頭を下げた。
「わりぃ。なんとか見逃してくんねーか…」
俺たちがいなかったら完全にどこかに連れ去られてまわされている状況だ。
俺と大関にとって咲を救う義理はないが、大関の男気だろう。
なんとかこの絶望的な状況を打破しようとしていた。
「見逃せるわけねーだろ。てめーはすっこんでろ」
至極当然の答えが返ってきた。
咲は金を持っているのは確か。
さっさと金を出してこの場を収めるのが手っ取り早い。
しかし咲を見る限りその気はない。
はあ…面倒。
大関も諦めムードだ。
「この女、貸せ」男が言った。
どうぞどうぞ。
心の中で俺は即答したが、俺より先に、咲が返事をした。
「別にいいよ」
え？
咲はそう言って大関の手を振りほどき、男たちに近づいた。
～つづく～
井口達也
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