※北海道はでっかいどう⑧
※北海道はでっかいどう⑨

※登場人物

・井口達也(バカ・北海道へ向けて配達中)

・大関(友人・トラック運ちゃん)

・咲(サービスエリアで出会った徘徊女)

・信永(友人・何でも屋)

・黒田(依頼物の受取人ａｔ北海道)

・依頼主(信永にブツの運びを依頼)

※チキンの映画化を目指しております。

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---本編ここから---

咲の空気を読まない発言に一瞬不穏な空気が現場に漂う。

若者たちは眉間にシワをよせて咲を睨む。

しかし若者は若者。

咲の露出の多い格好のせいなのか、「はぁ？」と軽く凄む程度だった。

「お兄さんたち車好きなの？結構イジってんじゃん」大関が若者たちに声をかける。

どこまでも揉める気はないようだ。

相手の好きな物を持ち上げてこの場を丸く収める気だ。

案の定若者たちは大関に気を許し始めた。

目の前にはド派手なデコトラ、そして物分かりのいい大関。

話は改造車の話で盛り上がり、大関と若者たちはすっかり打ち解けたムードになった。

一波乱期待していた部分もあった俺だが、よく考えれば大事なブツを配達中の身だ。

トラブルは厳禁だった。

絶妙な相槌を打って若者たちを持ち上げてやった。

ヤンキーはヤンキーの話が好きだ。

話を聞くと、彼らは元暴走族というわけではなかったが、俺たちが元々東京の暴走族あがりだと知ると、さらに話は盛り上がった。

あれよあれよという間に、大関は彼らのヒーローのようになっていった。

今夜一緒に流しませんか、時間があるならこっちに泊まればいいし、なんて話が若者たちから出るまでになった。

たしかに大関は少々カリスマ性がある男だったが、俺はもうここから離れて休みたい気持ちになり始めていた。

すると、ガン！ガン！という音が鳴った。

ふと目を離した隙に、咲が若者たちの車に近づき、ドアを蹴っていたのだった。

あまりの急展開に状況が飲み込めなかった。

え？

何この状況。

俺のカンピュータは咲の行動の理由が全くわからなかった。

天使でも悪魔でもなく、ただの天然少女だと思い込んでいたが、結論が出た。

こいつはただの悪魔だ。

いや、爆弾だ。

咲がなぜ彼らの車を容赦なく蹴りまくっているのか。

そんなことを考えている暇はなかった。

若者たちと一緒に彼らの車に向かって走り出した。

～つづく～

井口達也

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