※登場人物
・井口達也(バカ・北海道へ向けて配達中)
・大関(友人・トラック運ちゃん)
・咲(サービスエリアで出会った徘徊女)
・信永(友人・何でも屋)
・黒田(依頼物の受取人ａｔ北海道)
・依頼主(信永にブツの運びを依頼)
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---本編ここから---
目が覚めたら咲はいなかった。
ハっと我にかえり、俺は自分のバッグを確認した。
バッグの中を開け、北海道の黒田に届けるアルミケースを確認すると、俺は鼻から長めに息を吐いた。
万が一が許されない任務を負っているのに、スケベ心で女を車に乗せた事を少し後悔した。
荷物があったからよかったものの…。
「なぁ大関、お前仕事これで終わりだろ？せめて青森まで行ってくんねーかなぁ」
「あ？ここまでただで乗せてやったんだから十分だろうよ」
「まいったなおい」
俺がトラックの灰皿からシケモクを一本掴んで火をつけると、居なくなったと思った咲が帰ってきた。
「あれ、咲、お前どっか行ったんじゃないの？」俺が咲に助手席から声をかけると、先は不思議そうな顔をした。
「え？トイレ行ってきたー」
最初からそういえばいいのにと大関に対して思ったが、とりあえずこの状況を打開するには咲の図々しさが必要だ。
「なぁ咲、大関がさ、俺達はここまでしか送れないんだってよ。お前どうする？」俺が言った。
「えー、無理！」先が大関に向かって言った。
「やーかーましいわっ」大関は軽くあしらった。
「大関くん、おーねーがーいー」咲も軽い。
「なぁ大関、お前すぐ東京戻るん？」
「いや、仙台あたりでラーメンでも食って行こうかなって感じだわ」
「お前さ、友達が困ってんだからもうちょっと送れよ。ラーメン食ってる場合じゃねーだろうが」
「はぁ？無理」
俺と大関の押し問答がしばらく続いていると、咲が財布から一万円札を数枚取り出し、大関に差し出した。
「仕事としてならいいでしょぉ。これで限界まで送ってちょ」
大関は一瞬固まったが、咲が満面の笑みで差し出すと、一枚だけ抜き取り、「ガソリン代だけでいいわ」と言って受け取った。
てめぇ大関コラ！友達の頼みは聞けなくて女の頼みは聞くのかよ！と突っ込みたくなったが、せっかく乗り気になった大関の機嫌を損ねるわけにはいかない。
言いたくなる気持ちをぐっとこらえて、とにかく限界まで送って貰う事にした。
大関が荷物を下ろしている間、俺と咲は堤防に腰掛けて時間を潰した。
「なぁ咲、なんでそうまでして俺達についてくるんだよ」
井口達也
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